039 夜番の日記Ⅹー秘密の計画ー
――
私の願いは届きませんでした。
彼女の判決は有罪。極刑です。
私は全てを話しました。今後の私の計画を。全ては処刑日の前に秘密裏で行われるので、彼女の母親も私も彼女の処刑日にはグライフにいないこと。計画が失敗する可能性もあることも。
全てを話し終わると、彼女は琥珀色の瞳を潤ませながら、顔をしわくちゃにして笑いました。
「ありがとう……ありがとうストゥルーン。これで思い残すことは何もない。本当にありがとう。この感謝の気持ちを言葉になんて言い表せれない……あなたは私の一生の恩人よ。私の心も魂も全てあなたに捧げます」
彼女はそう言うと、敬意を表すために深々と跪きました。その瞬間、彼女の心が自分の手中に入ったような満たされた気持ちになりました。
この愛に命を懸けたいと思ったのは私です。もし、この計画がうまくいけば、彼女の望みは叶えられます。私の家族に迷惑をかけることもありません。失敗に終わったとしても、私が死ぬだけです。死ぬのは怖くありません。きっと向こうの世界で彼女が待っていてくれているでしょうから。
その後、私と彼女は無言のまま何度も何度も唇を重ね合い、舌を絡ませました。優しく彼女を扱いたいのに、自分の身体が火照り、彼女の全てを手に入れたくて堪らなくなります。しかし、私たちの間に立ちはだかる鉄格子がそれをゆるしてくれません。彼女も積極的に唇を重ねては、吐息交じりに舌を絡めてきます。
私たちは愛し合っています。私は自分の人生を彼女に捧げることに喜びを感じています。彼女も処刑日までの残りの人生を、私と過ごすことに喜びを感じているように見受けられます。
私は偽造した「死ねる薬」を彼女に手渡しました。薬を受け取った時の彼女の母親の様子も伝えました。私は、彼女が処刑日までにこの薬を飲んで自死することはないだろうと思いました。昨夜はそれぐらい強く彼女の愛を感じたのです。
処刑日は来週にも決定されるようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます