第2話 森の主
(‥‥あれは)
レイルとコニーは川の上流にある湖に来ていた。
そこにはレイルが夢で見た大きな矢じりのような形をした物体が水面にプカプカと浮いており、レイルとコニーが近づくことによって、それの外殻の一部がスライドするように開く。
その中には14~16歳くらいと思われる赤髪の少女が倒れている。
「おい!」
レイルが声をかけるも反応がない。
意識を失っているのか、開いた場所からは徐々に水が入り始めており、少女を担ぐようにして、急いでその場から助けだす。
(‥‥軽い)
風を操り、湖の岸辺へとフワリと降り立つと、少女が乗ってきたであろう乗り物はブクブクと空気を吐き出しながら沈んだことを確認し、安全な場所で手当をするため、すぐさまさっきまでキャンプをしていた場所へ向かう。
キャンプに向かう道中、少女から生暖かい液体がレイルの腕を伝った。
(青い血‥‥)
◯◯◯
少女は夢を見ていた。
「すまない、ミリアや」
「泣かないで、叔父様‥‥」
ミリアと呼ばれる少女に震える声で謝罪する老人。
「いたぞ!奴らだ!」
「っ‥‥!」
白い服を着た男たちが迫っていた。
その中に一人だけ黒い服に眼鏡をかけたオールバックの男がいた。
「あまり手間をかけさせないでくださいよ、フェイン博士」
オールバックの男が呟く。
「‥‥黙れ!裏切者が!」
フェイン博士と呼ばれた老人は吐き捨てるようにいう。
「あとはその‥‥‥‥‥」
オールバックの男が何かを言っているが、聞き取ることはできない。
少女は意識が遠のいていくのを感じた。
〇〇〇
「っ!」
「コニ!?」
夢から覚めた少女は飛び起きた。
その勢いでコニーも驚く。
(え? ‥‥なにこのキノコ!?)
少女が目の前のコニーに驚いていると。
「‥‥目が覚めたみたいだね」
一応僕も横にいましたよと言わんばかりにレイルは声をかけた。
「ここは原初の森、そこにいるのはマイコニドのコニーで、僕はレイル、レイル=レインゲート ‥‥君は?」
「え、あ、わ、私はミリア、ミリア=クリアフィールド‥‥です」
そう返す少女、ミリアにレイルは驚く。
「‥‥言葉が普通に通じる、君は‥‥ミリアさんは天上人でしょ?」
「て、天上人?」
「うん、空の遥か向こう、僕らでいう『ファフニール空域』を抜けた先には色んな島が空に浮いていて、そこに住んでいる人たちは髪は真紅のように赤いけど空のように青い血が流れていて、天上人って僕ら地上の人、地上人は呼んでる」
「‥‥私が怖くないんですか?」
「なぜ?」
「だって血が青いんですよ?」
「青いだけじゃないですか」
「髪も赤いし」
「王都にいくとおしゃれで髪を赤く染めてる人がいるよ?」
「矢じりみたいな形の乗り物で凄いスピードで着陸してませんでした?」
「あれは正直若干引いたけど、ああゆう類のはウチのギルドに遊びに来る奴がよくやるから割と慣れてる」
「え?」
「ん?」
少し間が空く。
「‥‥アハハッ! 何で慣れてるんですか」
不安でしょうがなかった。
ミリアは遠い昔、天上人と地上人で大きな戦争があったことを教わっており、地上人は禍々しい角が何本も生えていて、鋭い牙に、性格は残忍で恐ろしいと教わってきた。それが目の前にいる男は野蛮でもなければ、恐ろしい外見でもなく、普通に会話をすることが出来る人だったから。
「なんだよ?天上人の笑うツボがわからん」
レイルは困っていた。
「フフ、ミリアでいいです、呼び方は。ちなみに私が乗ってきた船はどうなったのですか?」
「この近くに川があるんだけどその上流に湖があって、そこに沈んでる」
「‥‥そうですか、その船の中に回収しておきたいものがあるのですがーー」
そうミリアがいいかけたところで、秒単位で周囲の空気がどんどん重苦しく変わっていくのを感じた。
(なに?体の動きが制限されるような、このプレッシャーは?)
レイルは焚き火の火を消した。
「ミリアの着陸で森がざわつく程度で終わると思ったんだけど、たぶん気づかれた」
レイルは小声でミリアに話しかける。
「何にです?」
「‥‥森の主」
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