第1章〜ダンジョン〜
第19話
「ユウマくんありがとう」
屋敷に帰ると出迎えに来てくれたメーデーさんにお礼を言われた。
プランダール伯爵暗殺とアリスの救出にメーデーさんの次女の結婚を防ぐと言う全てのミッションを俺達はクリアした。
ソウルイーターが逃げた後インハルドの屋敷に戻った俺達3人は1日疲れを癒し次の日にはメーデー家に戻っていた。
心配していたアリスの傷はコフィーの治癒により全快したようで一安心。
インハルドにもメーデー家の方に遊びに来ないかと誘ったのだが、プランダール伯爵が亡くなった今プランダール家の跡継ぎや利権やらで忙しいらしく来ることが出来ないらしい。
「いえ、ただクエストを終わらせてきただけですから」
「それでもありがとうと言う気持ちに変わりは有りません。報酬はこの後お支払いさせていただきますね」
俺とアリスは顔を見合せ親指を立てた。
「アリス様ご無事で何よりでございます」
「……心配かけてしまってすいませんでした」
アリスはここに居るみんなに謝った。
「気にしなくていいぞアリス。アリスはちゃんと戻って来てくれたし、インハルドって言う凄い人とも知り合いになる事が出来た。そりゃ最初はめちゃくちゃ不安だったけど今は良かったと思えるから……そう気にすんなよ」
「……ありがとうございます」
ポトッと水滴が垂れ始める空を見ると雨が降り始めたようだ。
「濡れると行けません。こちらへどうぞ」
震える身体をバレないよう押さえつけながらアリスの後ろを着いて行った。
「ではまた後ほどお声掛けさせていただきます」
「あ、はい。ありがとうございます」
紅茶を置いたルフナが部屋を後にしたのを確認すると俺は「ふぅー」と深く息を吐いた。
「何から話そうか迷うくらいにアリスが居ない間に色んなことがあったし」
椅子に腰かけ紅茶を片手に悠雅に言った。
「そんなにたくさんの事があったのですね。何も出来ずすいません」
「だからそんなに謝らなくても良いって。けど、ここは異世界だからモンスターも入れば人種も考えも価値観も倫理観もその他もろもろも含めて全部日本とは違って平和じゃないみたいだし自分の身は自分で守ってくれよな」
「はい…」
「けど、全てを1人で抱え込もうともしないでくれよな。助けたり助けられたり仲間ってのはそんなもんだろ」
「そうだと思います」
迷惑を掛けたことに対して酷く罪悪感を感じているのか酷く疲弊した様子のアリスになんて声掛けしたらいいのか分からず曖昧な言葉をかけてしまった。
どうしたら良かったのか。
報酬の話でもしたら元気が少しは戻ってこないだろうか。
「こんな話よりなあアリス!聞いたか報酬の話!飛びっきりいいものをくれるらしいぞ」
「そうなんですか!それはとっても良いことですね。ここを後にしても家問題には困らなそうですね」
「そうだな」
1時間ほどダラダラと過ごしているとノックが掛かった。
「失礼します。メーデー様からの伝達でございます。報酬の目処が立ったので部屋に来て欲しいとのこと。部屋へは案内しますので自分に着いてきてください」
ーーーーーー
俺たちがどんな報酬が来るのかとワクワクしていた、その頃プランダール家は酷く混乱をしていた。
何せ当主プランダール=p=プランダールが暗殺されたのだ。
連日押し寄せる取引先の商人や貴族や領地の住民の代表等数え切れないほどの人が絶え間なくインハルドの元に訪れたのだ。
インハルドは騎士団長の座をを副団長に任せプランダール家の当主に若干21際でなったのだ。
世間一般的には優秀と評されていた
プランダールの跡継ぎの仕事は余りにも多かった。
·····これをこなしていた父上にはやはり多少の尊敬は残ってしまうな。
三日三晩多少の休憩を取りながら寝ずに仕事を続け何とか今夜は睡眠に有りつける程に仕事は終わった。
スケジュール帳開くとこの後1人の面会があるようなので対話室に部屋を移し少し目を瞑った。
ぼくに秘書は居ない。
「是非とも私を!」と名乗り出た物は両手じゃ足りないが僕は全て断った。
他人に仕事を任せミスが起きた時に責任を取らされるのは秘書ではなく僕自身だ。
職場では違うかもしれないが表向きは僕のミスとして市民に伝わってしまう。
信用をしていない訳ではないが完璧に信用しきれない自分の器の小ささには断って来た人達には申し訳なくなってしまう。
対話室に来て数分が経った。
何者かの気配を感じ目を開けると目の前には白服の人型で仮面を被った数日前にも見た仮面が座っていた。
グッと声を堪える。
「いつぶりだ?いや、そんなことはどうでもいい話がしたくてきた愛しき兄弟」
「僕とお前は兄弟じゃない。話はなんだ白仮面」
「なんでそんな怒ってるのさ。そうか!兄弟の再会に歓喜を感じているのか」
「こっちは暇じゃない。早く要件を言ってくれ」
「分かった。率直に言おうダンジョンに行け」
白仮面は仮面越しでも神妙な顔をしているのが伝わってきた。
「なぜあんな危険な所に」
「付け足すとダンジョンを攻略しろ」
「だから何故。そもそも今現在の我々人間の力では無理だ。各国が集結しても行けるかどうか·····」
「集結して攻略出来ないのは手柄を我こそはと手に入れようとするから上手くいかないのだろ」
「··········」
それには黙るしかなかった。
実際ここ100年の間に何度か幾つかの国を纏めダンジョン攻略に向かったのだが結局ダンジョン内で戦ったのは人間同士だった。
「すぐに攻略しろとは言わないが·····そうだな3年がタイムリミット言ったところか」
「3年経つと何が起こる」
それは自分の力で解いてこそだ。では失礼
「おい待て」
すぐに立ち上がり閉まった扉を開け廊下を見渡すがそこは姿がもうなかった。
問を与えるだけ与えてヒントは何一つなしか。
·····ダンジョンか。
1層は今や観光地として賑わいを見せているらしいがそこを作るのに一体どれだけの屍の山が積まれてきたのだろうか。
2層以降はほとんど未開の場所であるダンジョンに挑み攻略ししかもそれを3年以内·····。
そもそも悪魔の言葉に惑わされるなんて·····しかし奴は言った。
未来視が有ると。
そしてダンジョンには魔王が住み着き奴は魔王が嫌いとも言った。
それが本当ならこの世界はどうなってしまうのだ。
ーーーーーー
「さあさあ、そこにかけたまえ」
ルフナに案内され来たのは今まで見てきた部屋の中でも一際豪華な部屋だった。
ルフナが扉を開け中に入ると待っていたメーデーさんはまるで孫が遊びに来たおじいちゃんのような表情で出迎えられた。
「ユウマくん。そしてアリスくんは冒険者だが家は持っているのかい?」
言われて思ったが俺は家を持っていない。
この世界に来てすぐにドワーフとエルフの方にお金を貰いそして直ぐにアリスに出会って冤罪で牢獄に·····。
思い出したくないことまで思い出してしまった。
で、その後は残りの金でモンスター討伐とホテルでちょっと暮らし今に至る。
アリスは分からないが旅をしていると言ってたし多分持って無さそう。
「いえ、お恥ずかしながら持ってなくて」
「ハハハそうだろう。なら家を報酬として貰うのはどうかな」
なんで笑った?と言いたいが家を貰えるとは!
この言葉にはアリスも目を輝かせている。
「本当に家を頂いてよろしいのですか?」
「ああもちろんだ」
家を貰えると言われても現実味はわかないが喜びは込み上げてくる。
「これは家の鍵だ。受け取ってくれ」
「·····ありがとうございます」
受け取った鍵は少し暖かみを感じれた。
死罪判決は嫌なので逃亡しながらダンジョン攻略して成り上がり! 師走 葉月 @Neru13
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