第3話 ギルド
石造りの大型建造物で屋根にこの国の国旗らしき旗が建てられこの街の中心と言えそうな建造物。
入り口付近には屈強な男の集団や飲んだくれが群がっておりどうにも入りづらい。
「さっ、いきますよ」
男たちに目もくれずにさっさと門を潜るアリス。これはやはり慣れなのか。
俺とアリスがやってきた建物は『ギルド』。
この街の冒険者が集う場所らしい。
冒険者はここで仕事の依頼を探したり、受けたりすることができる。
また横に併設されている酒場で飲み明かし足りするそうだ。
アリスみたいに宿で暮らしている冒険者は少なく、稼いだ金はその日のうちにみんな酒に消えるので大抵の冒険者は犬小屋やなどに寝泊まりしているらしい。
犬小屋ってのごすごい引っかかるがまあそれは本当の貧乏人だけだろう。
と、ここまで来る途中に聞いた話だが入って見て見なきゃ分からない。
「アリスいくぞ……あれどこだ」
アリスの姿が横にはもうなかった。
……もう入っているのだろうか。入口はアレだな。
仕方なく1人駆け足でで屈強な男たちの横を通り扉の前に着く。
「これが!俺の異世界生活の始まりだ!」
新しい世界の生活の大半を過ごすであろうギルドに期待を持ち行き良いよくドアを開ける。
「そうだ!もっと!もっとだ!もっと強く強く叩いてくれ!」
俺はドアをそっと閉めた。
……何かがおかしい。聞いてた話とだいぶ150度くらい違った気もしなくもない。
中にいたのは若い女と男。
女がムチを持ち男を叩き上げ男は歓喜を上げていた。
「何かの見間違えであってくれ!」
俺はそう叫びながらドアをもう一度開く。
「ぁあア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
「イヤァァ」
中の状況は変わらない。
が、今度は叫ばれた。
……てか誰得だよ。普通に男女逆だろ
「ユウマ!どうしたんですか!?……何をしているのですか!遅いから見に来たら……そこはトイレですよ?」
アリスが叫び声に駆け寄ってくる。
……え?
「そうかそうか。ここはトイレ……だとしてもおかしいだろ!入口だと持ってここを開けたらムチで叩かれてる人がいて」
「ムチ?そんな人いるはずないじゃないですか。もし居たとしたら変態です。そしてもしそれが冒険者ならモンスターよりそいつが討伐されるべきです。が、そんな変態は居るはずないので……さっ早く謝ってギルドに入りましょ」
何を馬鹿なことをといわんばかりに冷徹かつ正論を言ってくるアリス。
「い、いくらなんでもそれは言い過ぎだぞ。けどまあそんな人いるはず無いもんな。本当にすいませんでした!」
俺は鍛え抜かれた土下座を披露し足早にアリスの元に駆け寄った。
あの涙目の男の顔は一生忘れることができないだろう。
ハプニングこそあったものの何とかギルドに入った俺とアリスは受付カウンターに居た。
「あのすいません。冒険者になりたいんですけど」
「冒険者ですね。承りました。ではまずは5000バイツ頂戴致します」
巨乳で緑色髪をした美人な受付嬢は浮かれた俺に現実を突きつけた。
……所持金は2500バイツ。アリスに借りれば多分足りるだろう。だが冒険者になる初日に女の子、しかも年下から登録料を借りるのは男としてどうだろうか。
「ユウマお金は持ってますか?持っていないなら私が払いますよ」
俺はアリスの唇の前に人差し指を出した。
「冒険者になる勇敢な男が女の子にお金を借りる?そんな恥ずかしいことする訳ないだろ。この後冒険者になった祝杯を上げたい。酒やジュースなどを適当に見てくるんだ。こっちは登録しとくからな」
唇に指が触れたアリスは頬を赤らめ「わ、わかりました」と言い横に併設されている飲食店に向かった。
……さてひとつの問題は去った。このまま同じ作戦をこのお姉さんにも。
「お姉さん。俺は日本と言う自然豊かな島国からはるばる勇者として冒険者になるべくやってきたユウマと申します。いずれ魔王を倒し世界を危機から救う。そんな勇者候補に2500バイツ程投資してみては如何だろうか」
お姉ちゃんは小首を傾げると。
「日本という国の名前は聞いた事ありませんね。それと駆け出し冒険者が魔王討伐とかあまり口にしない方が良いかと。最近3層目のボスがこの街の近くに潜伏してるとかで下手したら目をつけられますよ」
「そ、そうですか。で投資の方はどうでしょうか?」
「ギルドからの貸付になりますね。1万バイツ月利5%からで貸付しておりますのでそちらをご利用ください」
……いきなりギルドから金を借りることになってしまったがまあ仕方ない。
「それでお願いします」
「承りました。それでは冒険者カードの発行と手数料を引いた5000バイツをお渡し致しますので少々お待ちください」
数分後冒険者カードと5000バイツを受け取りアリスの待つ席に着いた。
「早速冒険者カードに色々登録していきましょ」
自分の事のように興奮気味に机に前かがみになるアリス。横に置いてある飲み物が零れるんじゃないかとヒヤッとする。
「名前、年齢、性別……大まかなものは終わりましたね。後はここに人差し指をおいてください」
アリスの指示に従って丸い凹に人差し指を置く。
体に何かが駆け抜けて行くのを感じるとすぐに冒険者カードに文字が書き込まれていく。
「物理攻撃70魔法攻撃80魔法耐性150。初期スキル無し」
……これは直感的にダメなやつだ!
「ま、まぁレベルが上がればスキルは値を増えていくので気を落とさずに」
必死にフォローするアリス。
「ちなみに平均値は?」
「100」
……思ったよりも悪くはなかったが、アリスと比べたら天と地の差が出るのだろう。
「魔法耐性150これは結構いいんじゃないか?」
「数値自体はすごくいいと思いますよ。しかし……その魔法を放つ敵は極わずかで倒すより保護をしなくては行けなかったりしてあんまり」
……訂正する。ダメダメじゃねぇか!
深く溜息をつき。
「俺一人だったら大変だったかもしれないが、俺にはアリスが居てくれる。頼りにしてるぞアリス」
「任せてください!世界最高峰の魔法使いの力を存分に味合わせてあげましょう」
「期待してるぞ……それとこれはなんだ?」
「それと最後になんだけどこのスキルってのはなんだ?魔法使ったりパワーアップとかそんな類か?」
「イメージ的にはそんな感じで良いかと。スキルを習得するにはモンスター討伐とレベルアップが必須条件です。高レベルになるにつれて覚えれるスキルが強くなります」
「覚えれるスキルの数とかは決まってたりするのか?」
「特に決まってはないです。なので覚えれるだけ覚えた方が冒険で有利に立ち回れます」
「なら沢山覚えた方が得だな」
……ある程度今後やるべきことがわかった。
「1つ目レベル上げ。2つ目借金の返済。3つ目にパーティーメンバーの募集。これを目標にやってくか」
「いい心掛けです!ところで2つ目の借金ってのは……?」
「な、なんでもない。気にしないでくれ。日本でちょっと闇金に追われてからそれでついな」
「闇金!?そうですか。なんでもないならもう気にしませんが」
「大丈夫だ。そうしてくれ」
異世界転生して2日目にして俺は冒険者になった。
剣と魔法のファンタジー世界。
モンスターを討伐し魔王軍すらも壊滅させ世界に名を轟かせる予定だ。
初期ステータスはあんまりだったが俺にはアリスが居てくれる。
なんで俺みたいな新参者、しかも雑魚に世界最高峰の魔法使いが着いてくれてるのかは謎だが幸先がいい事には変わりない。
現世だったら今日も家と大学の往復していた。が俺は昨日で卒業した。
お母さん。お父さん。俺はこの世界で楽しくやって行くよ。
ほぼ未練の無い現世に別れを告げ俺の異世界ライフは始まった。
「よーし!アリス!転生記念&冒険者になった&パーティー組めたことを祝ってパーッとやるか」
「いいですね!すいませー」
意気揚揚と店員を呼ぶ声はアナウンスによってかき消された。
「緊急!緊急!冒険者各員は至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します!」
「なんだなんだ!?」
急に慌ただしくなるギルド内。次々に武装した冒険者が流れ込んでくる。
先程対応してくれた緑髪の受付嬢は「こちらです」と叫びながら人を纏めている。
「どうする?俺達も行った方がいいのかな」
「行きましょう。これはレベル上げのチャンスかもしれません」
アリスは即答した。
「だな。そうと決まればいくぞ」
「現在魔王ダンジョン守護者と思わしきモンスターが裏門近くに出現しております。ここは始まりの街。王都からの凄腕冒険者の支援届くまでの時間稼ぎで構いませんのでまずは生きてください」
受付嬢はそう言い放った。
……モンスターそれも飛びっきり強そうな魔王ダンジョン守護者とか言うプレート付き。
「任せとけよ嬢ちゃん」
「おう。俺達にかかれば屁でもないぜ」
武器を構え意気込む強面冒険者。
「皆さん。それでは緊急クエスト開始です!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」
裏門に集まると大体200メートル程離れた所に今回の標的と思われるモンスターが居た。
「見えているか。人間諸君」
誰もがその絶対的な存在感に気を取られ声を出せない。
「私の名前はテレサ。魔王軍ダンジョン3階層守護者にして魔王軍調理隊調理長」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます