第259話~EX級探索者達~

 部屋に入るとそこにはテレビで見たことしかない豪華な顔ぶれの探索者さん達が揃っていました。



『紹介するぜテルヒサ』



 マテオ・キングさんがそう言って1人ずつ紹介していきます。と言っても名前と特徴ぐらいは私も知っているのです。まず彼が紹介したのは……。



『こっちのガタイの大きな奴がクレオ・ガムズだ』



 EX級第4席。クレオ・ガムズ。土属性魔法の探索者。インド出身。マテオさんよりも大きな身体ですね。隣に立てば大人と子供に見えると思います。



『ヤー……』


『久しぶりだね。相変わらず元気そうだ』


『ヤーッ……!』



 ……これでコミュニケーションが取れているんでしょうか?



『英語、忘れた?』


『すまないヤー』



 喋れるなら最初から喋りましょうよ!?



『はいはい、次はわたくしの番よ。こうしてきちんと挨拶するのは初めてよね? アリシア・ファイツよ』



 EX級第3席。アリシア・ファイツ。水属性魔法の探索者です。ロシア系の美少女ですね。と言っても軍人のようにムキムキの筋肉。同じ探索者なのにどうしてあそこまで差が……。



『輝久だよ』


『うん。さすが元EX級第2席。半ば引退しても5席くらいにはくい込んできそうじゃない』


『成長はともかく衰えはしてないからね』


『なら次は私かな。沐宸ムーチェンだ』



 割って入るように来たのは今のEX級第2席、沐宸ムーチェンさんだ。今では世界人口1位となっている中国の人。風属性魔法の使い手。



『あなたの事はマテオさんからよく聞いている。噂通りの実力だね』


『はは、マテオ君てば大袈裟に伝えすぎなんじゃないかな?』


『所でずっと気になっていたのだが、そちらの女性は?』


『初芝琴香さん。私が連れてきた日本で最高の回復系探索者だよ。A級だが、S級とあまり遜色ない力を見せる』



 さて、私は英語がほとんど分からないので適当に思ったことを呟いていただけですが、どうやら私の話を振られたようです。



『素晴らしい。回復系と強化系の探索者はほとんどいない。S級回復系探索者は1人しかいない上に高齢。S級強化系探索者は彼女だけだった……』



 何故でしょう? 悲しげな雰囲気になってしまいました。



『ほらほら落ち込んだりしない。んじゃさっさと他の奴らも紹介していくぞ。テルヒサはお仕事が忙しいと言ってあんま関わろうとしないからな!』


『HAHAHA! 推し事が忙しいから仕方ないじゃないか!』



 何故でしょう? どこか噛み合っていない気がします。


 と、とにかくEX級探索者のクレオさん、アリシアさん、ムーチェンさんとの顔合わせが終了しました。ほかの人たちとも軽い挨拶を交わしていきます。



『そうだテルヒサ。ソラのことについて詳しく聞かせて欲しい』


『ソラくんの事をかい?』


『あぁ、アイツがただのS級迷宮で死ぬなんて有り得ねぇ。少なくともソラの奴が死ぬ相手なら日本の他のS級……メイだったか? あの女の方が先に死んでると思うんだがな、俺は』


『……君にはもう少しちゃんとした事情を説明しておいた方が無難だね。琴香君……良いよね?』



 空君の事をここまで評価して頂いていたとは以外ですね。そう私は思いました。だってEX級1席ですよ? なんて恐れ多い……。


 そして私は輝久さんを通訳として使いながら事情を説明していきます。空君が特級迷宮に飲まれたこと。人型のモンスターがいること。そして今回出現したS級上位迷宮が本当に危険であることを……。



『……詰まるところ、何が起こるか一切不明ってこったな。……はっ、簡単じゃねぇか。ここに集いしS級探索者達が勝てるかどうかで世界の命運が決まるってことだろ?』


『まぁ、今後何が起こるかは不明だけどこのメンツで勝てないようなら世界は終わりだね。それで、S級上位迷宮の状況は具体的にどうなんだい?』


『現れてから5日が経ってる。残り2日間の猶予が残されている訳だが……アメリカ大陸やら関係の深い株を中心に株価が物凄い勢いで下落していっている。……我が祖国の復興、手伝ってくれるか?』


『私は別に構わないと思うよ。君を無償で使える権利さえ頂ければ、私を含む関係者は全力で援助しようじゃないか。アメリカが無くなるなんて考えたくもない』



 うん、さっきからずっと思ってますが……私、完全に空気です!? 英語できませんから会話に参加もできませんし、知り合いもいないので特に何も話さないんですよ!


 助けてください空君! 私、このままじゃ影が薄いナレーターになってしまいそうです! 



『テルヒサ、攻略は2日後を予定している』


『時間ギリギリまで粘るんだね。時間配分は大丈夫かい?』


『S級上位迷宮の出現時間は国がコンマ1秒単位で特定してあるから問題ない。後は今も交渉している国や有力な探索者達が攻略までにどれだけ集まっとくれるかどうか……EX級も上位は集まったが、下位のEX級には欠席も出ている。国が出さなかったり、自らの意思で来ない奴らも多い』



 EX級の話が出てますね。雰囲気的には……不満、でしょうか?



『死ぬのが怖いんだろうね。もし来なくてここが破られたら終わりだと言うのにそれを理解しようとしない人も何故か存在する』



 はぁ、もう帰ってよろしいでしょうか? 私がここにいる意味、もう無くないですか? と思いましたが止めてみろって言われたんでした。


 そしてマテオさんと輝久さんの会話が終わります。その後も簡単な挨拶を何人かの人と交わしたりしつつ、最高級ホテルで長時間フライトの疲れを癒した次の日、S級上位迷宮が迷宮崩壊しました。

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