第251話~親子対面~

 ガノーさんに通されて、俺たちは進む。周りからの視線が痛いな。……くそ、まだ念の為に持っておいた女装セットを装備しておくべきだったか?


 つうか普通に俺とエフィーはともかく、ミルドさんまで通されるんだな。ドワーフってことには気づいてるんだろうか?


 あと獣人族同士で内戦を起こすなんてどう言うつもりだ? 俺たちの知らない情報を彼らは知っている……事態をきっちりと把握しなければな。


 そのためにも……ヴォルフやルプスちゃんの父上……長との話し合いはしっかり見届けなければ。



「ガノーさん」


『ガノーでいい』


『ガノー、やっぱ俺、女装していい?』


『……変な奴を招き入れたとなれば長の名誉に傷がつく。許可しよう』


「……さんきゅ」



 へ、変な奴とはなんだっ!? 確かに獣人からすればオスなのに毛がほとんど生えてない異端者に見えるが……。という訳で途中の物陰で義耳と義尻尾と付ける。



『……ふむ、やはり生まれる性別を間違えたのではないか?』


「余計なお世話だ」


「我もガノーの意見に賛成なのじゃが」


「黙れ」



 確かに獣人族は地球でいう欧米人のように彫りが深く、目の色も黒じゃないので漢の顔っぽいが、俺とて日本人に混ざれば多少の童顔で済む程度。女顔扱いされるのは心外だね!



『着いた。この先に長はいる』



 長と言えど他の家より多少豪華な程度の屋敷だった。2倍程度の。なんだろうか、サリオンさんといい、世界の長はあまり着飾らないタイプが多いのだろうか?



「……なんと言うか、気配がここまで伝わってくる」



 家の中からすごい圧を感じた。強者の発するオーラのような、そんな感じの空気が肌にチリつく。

 


『あー、小さい頃を思い出すっす。父様のこの雰囲気はガチで怒ってる時っすよ。でも、俺だって真剣なんすよ。……ちゃんと、ルプスの婚約なんて諦めさせてやるっす』


『『…………』』



 ヴォルフの言葉に、当の本人のルプスちゃんとなにか事情を知るガノーさんがまた違った表情を見せる。何を想っているのだろう?


 ヴォルフが慣れた手つきで扉を開けて俺たちを家の中へ招き入れる。なんと言うか和風に近いな。自然と近い……悪く言えば野性味に溢れた家だ。


 意識を割けば先程から何人かが家の中に潜んでいるのが分かった。俺たちを監視はしているが、敵意のようなものはない。



『ここっす……失礼します』



 短い時間であっという間に目的の部屋に辿り着き、ゴクリと唾を飲み込んだヴォルフが扉を開ける。奥に座っていた1人の黒狼族が見えた。



『お久しぶりっす、父様』


『……そうだな』


『……』


『ルプスの怪我も聞いている。だが、無事で良かった』


『そう』



 毛が生えていても彫りの深い顔……サリオンさんと同じく歴戦の猛者のような風格が見える。チラリと俺の方を見てきた。



『君が、うちのバカ息子の考えを改めさせた元凶のようだね。余計なことを』


『いきなりソラの兄貴を悪くいうとか何なんすか! ソラの兄貴は凄く良い人っす!』



 2人とルプスちゃんでの話し合いが始まると思っていたが、いきなり俺にヘイトが飛んできた。血の繋がった2人に向けるよりはマシ……なのかな?



『父様、それよりも聞きたいことがあるっす。あ、でもさっきの言葉は後で謝罪させるっすよ!』


『なんだ?』


『母様の真実、それに豚人族との内戦っす……内戦に関しちゃ俺たちが逃げたせい、なんすか?』


『……違う』



 はっきりとヴォルフの父親は言い切る。聞き間違いじゃない。絶対に『違う』とはっきり告げた。



『なら何故、獣人族同士で内戦が起こってるんすか!?』


『……豚人族はやりすぎた。だから粛清せねばならん』


『やりすぎたって……?』


『獣王様に定められた範囲から逸脱した奴隷の取り扱いなどが主だ。過去には右腕とまで評された我ら獣王様の配下としては、見過ごす訳にはいかない』



 なるほど、その獣王の方に当てはめれば、ヴォルフ達が襲われるようなことも本来は無かったのかもしれない。



『……あれ、つまりルプスとの結婚は取り消しって事っすか? ……それなら何のために母様は、死ななきゃいけなかったんすか!?』


『……母様』



 それはそうだ。だが、父親の顔を見てみるが本当に母親を殺したのだろうか?



『……幾つか、訂正しなければいけないことがある。まず、婚約の話は嘘だ』



 お、流れ変わったな。



『お前なら、ルプスを連れて逃げると思った。だから、嘘をついた』


『……は?』


『……内戦にお前たちを巻き込みたくなかった。ガノーの奴は、仲違いさせたままを嫌がったがな』



 あぁ、戦争に子供を送りたくないって気持ちは分かる。種族の長の息子なら、象徴として前線に立つこともあるだろう。


 ガノーさんが無理やり連れていこうとしたのも理解は出来る。やり方は強引だったが、強引にしないと付いてこないからな。



『……あぁいや、ルプスの婚約の件が無い事は分かったっす。でも母様は? その説明はないんすか?』


『…………母様を殺したのは、本当なの?』


『違うっ! ……豚人族に、攫われているんだ』


『『っ!?』』


「……内戦って言い訳が、長には必要って事か」



 豚人族が黒狼族の長の妻を攫った。一族ごと危険な目に合わせるには大義名分が必要。だから聖戦前の黒狼族の立場を利用したと……。


 ただ、自分の子供たちを関わらせるのは嫌だから嘘をついて逃げさせた。……途中で見つかって、豚人族に危害を加えられるのは予想外だったようだが。


 ウルガルスの街まで噂が出てなかったのは……人の口にとは立てられない。ただ内戦なんて情報、国としてもどこにも漏らしたくないはず。始まってからそこまで時間も経ってないし、その辺だろうか?



『あぁ。だが……勝てんよ、この戦には。かつては獣王様の右腕とまで呼ばれた我らだが、聖戦で猛者を大勢失ってからは精細を欠いている』


「なら何故この内戦を?」


『決まってるだろ、アイツを救うためだ。……このまま落ちぶれるなら一族の威信を賭け、豚人族の凶行を止めてアイツを救う。無理でも黒狼族の名は遺り、血は次代へと繋がる』


『……考えが纏まらねぇっす。俺は、父様をぶん殴って謝罪させれば解決すると、そう思ってたのに……。か、母様は種族を安寧を第1に考えてたっす。だから、内戦を起こすなんて──』


『アイツの居ないこの世界に価値は無い』



 ヴォルフの父親がはっきりとそう言いきった。ヴォルフ達が絶句する。俺自身は淡々と冷めきった思考をしているが、それもこれもヴォルフがいるお陰だ。


 彼が言動に感情を全て乗せてくれるお陰で、俺の言いたいことを全て代弁してくれている。だからこうして、傍観者として冷静に聞いていられるんだ。



「……俺が出る。いや、俺も出る」


『……何だと?』



 だから冷静に判断して……小さく、だけどハッキリと俺は呟いた。



『ヴォルフの面倒を見てくれたことは感謝する。だが、余所者にこれ以上かかわらせる訳には行かない』


「悪いな。こっちにも急がなきゃいけない事情があるんだわ。それを遂行するためには俺も出るのが手っ取り早い。それに……ヴォルフと約束したんだ。俺が助けられる範囲で手助けすると」


『そ、ソラの兄貴……』


『本気か?』


『実力でも証明しようか?』


『いや、ガノーから既に報告は受けている……。手助けしてくれるなら、非常に助かるが……大したお礼はできんぞ?』


「問題ない。命が軽いものであることはちょっと前に承知したが、だからといって簡単に散って良いものじゃないことは分かってる。……目的は、ヴォルフの母親を助けて豚人族の凶行を止めさせる。……で、良いんだな?」


『……理想は、それだ』


「なら決まりだ。母親を救って、豚人族の非人道的な行為を辞めさせる。溝のできた家族仲を修正してハッピーエンド迎えようぜ」


『……はは、手のひらを返すようで悪いが、君がいて良かったと思う』


「思うのがいくら何でも早すぎじゃ。じゃがまぁ、今の空の手助けを受けられる事は最高じゃぞ」


『君は……』


「エフィーじゃ。刮目せよ黒狼族の長よ、我の主は三獣士とも戦える器じゃ」


『ははは、さすがに大見栄が過ぎるが……期待しておこう』



 こうしてカチコミは予想外に、終始和やか? な雰囲気で1度終わりを告げた。



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内容が思いつかなくて詰まってました

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