第249話~ワンパン~

『見よこの輝きを! ワシの眼と手と経験と勘で選んだ最高のオリハルコンじゃ!』



 戻ってきた俺たちに最高の笑顔でオリハルコンを見せてくるミルドさんを無視して早々と洞窟の入口へと戻っていく。今は加工にどれだけ時間がかかるか分からないオリハルコンより黒狼族の方が優先に決まってる。



『うぉーい!? ワシの作る最高の武器はどうするんじゃ!?』


「ミルドよ、時間はどれぐらいかかるのじゃ?」


『設備さえ整えれば1週間で出来上がるかの! ……ちょ、おい! そんな無視しなくても良いじゃろうに!』



 いや、そんなの待ってる時間ないし、ます設備を用意する時間もないじゃん。



『ならばワシもお主らについて行こうぞ!』


「え?」



 という訳でドワーフのミルドが俺たちの旅に付いてくることになった。……やったねソラちゃん、仲間が増えたよ!



「ではミルドよ、黒狼族の集落へ案内するのじゃ!」



 エフィーの命令で方角を示したミルドを見た俺がサンドリザードへ指示を出す。サンドリザードは有無を言わず命令に従って進み出した。本当この子、言うこと聞くし可愛いわ。


 あ、食料もそろそろ探さないとね。今の時間は夕方っぽいし、動き出すにはちょうど良いはず。



『……改めて、すごく緊張してきたっす』


「……母親の件の真相はもちろん、父親の行いを許せるかどうかってこと?」


『そうっすね。……ルプスを豚人族の嫁に出すのを反対した母様が父様に殺された……今聞いても信じられないっすし、信じたくないっすよ』


『……私は、父様ならやってもおかしくないと思う。黒狼族の事を一番に考えてたもん。やることはやる』



 ヴォルフは半信半疑、ルプスちゃんは割と本気でやってると思ってるらしい。さて、全体像が見えないから解決の糸口は全く見えないが、家族の問題だし用心棒程度のつもりでいるか。



『ワシは事情を知らんから、これは戯言じゃと流してもらって構わん。……少なくともお主らがまともに育っておる時点でその両親もまた、多少まともであることは確定しておる。ヤバい親に育てられた子もまたヤバくなるのは道理。じゃから、何かしら事情があるんじゃろう……なんての。ただの想像じゃ、聞き流してくれて構わんからの』



 2人の、特にルプスの表情が強ばっていたのでミルドさんはおちゃらけた様子で誤魔化す。


 まぁ、2人からすれば母親がまともなだけで父親はゴミ、そのゴミと関わらないようにするだけでまともには育てる……みたいなことを言いたげな雰囲気だったしな。



「なんだあれ?」



 激しく舞った砂埃がこちらへと向かってくる。いや……あれは竜車か? へぇ、サンドリザードってあんなにスピード出せるんだな。それよりもそのすぐ後ろに……。



「見たことないモンスターだけど……あれは?」


『あぁ……ソラの兄貴ならいけると思うっす。でも見捨てるべきっすよ』


「いや、せめて色々と説明を求めるぞ」



 ヴォルフがいつになく冷酷に見えたので問いかける。モンスターは茶色の混じった色あせた緑色の巨体なモンスターだ。砂漠に緑を見るのが、まさか砂漠のモンスターが初めてだとは思わなかったよ。



『モンスターの方はデカい像のモンスターっすね。あれだけの質量を維持するのに食事はほぼ要らないんす。ただ……人をよく好んで襲うっす』



 なるほど、もしかしてあのモンスターはもしかして植物なのではないだろうか? いや、正確には身体にミトコンドリアとかが大量に生息しているとかの可能性が高いと思う。


 あの質量を維持するのには結構なエネルギーが必要なはずだが、砂漠の日光ならそれはカバー出来る。あれだけ動けるなら水の方もなんとかなるかもな。そこは想像でしかないが。


 人を襲うのも……習性としか思えない。俺は別に生物学者という訳では無い。多少考えはするが分からないなら思考から消した方が良いな。


 あれがどんな被害をもらたし、そして俺が殺せるかどうか……危険性さえ分かれば何も問題は無い。



「んで、助けないで良い理由は?」


『あの馬車、豚人族の奴っす。多分奴隷商人っぽそうっすし、助ける必要ないっすよ』


「なるほど……なら、助けないとな」


『っ!?』


「いや、だってルプスちゃんみたいな人もいるかもそれないじゃん。彼らに罪は無いよ」


『……兄様、ソラお兄様の言う通りよ。私のような被害者を出さないためにもソラお兄様、行ってくださる?』


「うん」



 という訳で俺が先に1人で突っ込んでいく。追いかけられている馬車とすれ違った所で拳に力を加える。



「そうだな……吹っ飛べ!」



 前に向かって高く跳躍をし、象のモンスターの顔面に思い切りパンチを叩き込んだ。衝撃で顔が凹み、そのまま圧縮されたように吹き飛んだ。そして先に掛かった粉塵が見事に無くなり、雲も僅かに揺らいだ気がした。


 ……えぇ、いや、吹っ飛べとか調子に乗って言ってみたけど、まさかそこまでとは思わなかった。多分A級の実力……エルフの森で戦って倒した時のドラゴンよりも少し強い程度の実力はあったはず。


 あの時は牙狼月剣を持って、さらに精霊魔法を使って勝ったが、今回は拳で一撃……。1度、マテオさんが金属で出来た団扇を使って本気で仰いでみた、なんて実験動画を見たことがある。


 本来なら風速を測る機械を使うはずだったが、壊すのは忍びないと断った彼が貸し切ったゴルフ場で空に向かって本気で仰ぎ、周りの雲が避けていったと言う結果の動画もあったな。


 今の俺は、EX級上位の実力はあるのかもしれない。……使徒にすら敵わないと思うがな。光輝龍レンドヴルムには、この拳は届くだろうか?


 そんな事を考えながら、俺の元に戻ってきた逃げていた馬車の方へ視線を向ける。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いや本当に更新が遅くて申し訳ないです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る