第244話~オリハルコンへの道中~

 オリハルコンとか言う金属を探すという目的を告げ、そこからドワーフのミルドはさらに語り出した。



『オリハルコンは金属の中でも最上級に位置する。ドワーフにとって生涯に1度は鍛造してみたい……いや、目にするだけでもしてみたい金属なんじゃ』



 そのオリハルコンを探し求めて何十年と旅を続けたそうだ。だがその道が楽でないことは想像する事も容易い。正体を隠し、そしてやっとこの洞窟に辿り着いたそうだ。



「って事は……この洞窟はオリハルコンが採れる場所なのか」


『あぁ。洞窟の奥にオリハルコンがある事は把握しておる。じゃが……ワシでは到底倒せん化け物が門番のようにその金属を守っておるのじゃ』


「つまり、その化け物を我達に倒して欲しい……お願いとはそういう事じゃな?」



 のじゃ口調が同時に喋ってるのを見るのなんか面白い。しかも違和感無くなってたけど片方幼女だし……。まぁ、サリオンさんとの会話で既に経験済みだけど。



『その通りです。ワシはオリハルコンを手に入れ、そして武器を創りたい……その夢を叶える手伝いをしてくれんじゃろうか?』


「ならば、我の方からも提案じゃ。オリハルコンで作る武器は短剣。双剣として扱える程度の大きさで。それと黒狼族への案内をしてくれるなら、我と愉快な仲間たちがその化け物を狩るのじゃ」



 愉快な仲間たちって俺やハズク、ヴォルフのことだよね!? と言うかヴォルフ達にそんな危険なことはさせないからやるのは実質俺ということに……。


 エフィーの要求はどう考えても俺が双剣を武器にするのに足りないもう一本の短剣を創るって意味だろうから、自分のために自分が頑張るのは当たり前なんだけどさ。



『交渉成立じゃ。精霊様を相手にお恥ずかしい限りです』


「気にするでない。我は眷属達に取り返しのつかん決断をした。本来なら無償で引き受けても構わんとすら思うほどじゃ。今は余裕がなく、このような形になってしまったがの」


『ワシは聖戦の時代を生きておりませんのじゃ。もちろん迫害のような扱いは受けましたが……精霊様が気に病む必要はありませぬよ』


「我としても、そう言って貰えると助かるのじゃ」



 どうやら関係も良好で契約を結べたようだ。そろそろヴォルフ達を呼び戻しても構わないだろう。



『なるほど。洞窟の奥にいるモンスターを倒すっすね。俺も行くっす!』


『バカモン! 子供が遊びで行く場所じゃないんじゃぞ!?』



 呼び戻して話を聞いたヴォルフの言葉にミルドが声を荒らげる。だが正論だ。危険だとわかっている場所に子供を連れていくなんて普通は言えない。



『兄様、私たちは待ちましょう』


『……でも、足手まといは悔しいっす』


『諦めることも重要よ。そんなんだからバカって言われるの』


『なんか最近ルプスがグッサグサ心に刺さる言葉を連発してくるっす!?』



 という訳でヴォルフとルプスの2人は留守番という事になった。心配なのでハズクを一緒に付けようと思ったが、2人の方から大丈夫だとの返事を貰ったのでその案は無しになる。



『この洞窟はまるで人工物じゃ』



 松明を手に洞窟の奥へと歩みを進めているとミルドさんが語り始める。歩いて1時間程度の距離を歩くらしいのでその暇つぶし兼情報提供をしたいのだろう。



『と言ってもワシらドワーフでもこんな建造物を作るのは至難の業じゃ。環境が酷いからの。それでいて人の手入れもせずここまで綺麗な洞窟は見たことないわい』



 話が進むにつれて洞窟の形状も段々と入り組んできた。天井が低くなっていたり、幅が狭くなっていたり、一部が突き出して油断するとぶつかったりしそうな……いかにも自然の洞窟を再現したかのような物もある。


 時々ある分かれ道もミルドさんは迷うことなく突き進む。全ての道がどうなっているのかを確かめたのだろう。ならここまでの行動はまるでRPGゲームのようだ。



『もうそろそろじゃ』



 そうミルドが告げると同時に洞窟の横幅が徐々に、だが急に10倍以上に広がりを見せる。



『こんな所に本当にオリハルコンが眠っておるのか? ワシ自身そう思っておったわい。じゃが、何となくある気がしての。外でモンスターを狩ったりして食料を調達しつつこの洞窟の探索を続けたんじゃ』



 確かにオリハルコンがこんな造られた場所にあるとは俺も普通は考えつかない。それでもミルドさんは己の勘を信じ続けた。その根性は尊敬に値するね。



『変なトラップが仕掛けておるかもしれん。それでも命懸けで探索し尽くして……ようやく見つけたんじゃ』



 次の瞬間目に飛び込んできたのは無数の水晶……のように天井、壁、地面から生える金属だった。これが……オリハルコンか。


 美しい。オリハルコンは艶やかで透明感のある翡翠色をしていた。だがビー玉のようにツルツルとしている訳じゃなく、削られたような跡が残る所からは鉱石みたいな断面も見えた。


 琴香さんや氷花さん、エルフのヘレスやララノアちゃんなんかにも見せたかったな。でも1番は……一香さんにだ。こんな美しい物から龍を斬り裂く(予定)の武器が生まれるんだから。



「って、少しくらい鑑賞させてほしいんだけど」



 そう感傷に浸っていると、こちらに近づいてくるモンスター? がいた。



『あ、アイツじゃ。ワシじゃあまるで歯が立たんかったわい』



 ミルドの言うモンスターの姿が視界に入る。……全身の筋肉が硬直し、鳥肌が立った。嫌な汗が全身から吹き出す。



「な、嘘、じゃろ……?」



 エフィーが驚愕の声を漏らす。その声で逆に俺の方は多少冷静さを取り戻した。外にいたようなモンスターと言うよりは、見た目としてはゴーレムが近い。


 身長は俺より高く2mほどありそうだ。人の身体を全体的に大きくした、完全なる上位互換。そんな呼び名相応しいだろう……色々と目を引く特徴さえなければ。



「仮面に、腕の本数に……いかにも造られたって感じだな」



 顔は何故か狐のお面をしており、腕は左右合わせて合計で八本ある。弁財天かなにかの神様でも模してるのかよ!?



「一応聞くけど……ドワーフが造った警備兵とかじゃないよね?」


『ワシらドワーフがあんな高性能な物を造れるとは思えん。じゃが過去の……聖戦の時代の負の遺産と言われれば納得するしかないのじゃ』



 ドワーフが造った物ならば弱点とかを知っている可能性を考えて尋ねたが、この調子じゃ無理そうだ。



「主……契約上書きをする覚悟をしておくのじゃ」


「っ!? ちっ、来い!」



 エフィーの言葉で一瞬目を離した隙を狙って八本腕のキツネ仮面ゴーレムが飛んでくる。そして、戦闘が始まった。



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異世界詐欺師のなんちゃって経営術が面白すぎて何も手につかない

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