カクヨムコン中間選考突破記念SS~テコ入れお風呂回なのじゃ!~

 どうも、初芝琴香です。現在私は空君の家に来ています! ついさっき友達以上恋人未満の関係になった私ですが、今は空君の手料理を食べ終わりお風呂に入る予定です。


 手料理は大変美味でしたね。エフィーちゃんが来るまでも一人暮らしのようでしたが、あそこまで腕が上がるのはもう才能としか言いようがありません。


 こちらとしては精一杯体を洗って夜、空君が襲ってきても良いようにしなくては! 来なければこちらから攻めるのもアリですね。


 と思っていると、脱衣所の扉が開きました。まさか空君が『俺も一緒に入っていいかな?』なんて展開を期待した私でしたが、そこに立っていたのは白銀色の髪をした幼い少女です。



「琴香よ、我も一緒に入らせてもらうぞ! 水道代やらの節約と言うやつじゃ!」


「その手がありました! 空君も一緒に入りま──」


「ダメに決まっておるであろう!?」



 エフィーちゃんの言葉に活路を見いだした私でしたが、エフィーちゃん自身に止められてしまいます。残念です……。


 渋々服を脱いでいきます。汚れた上着とズボンを脱いで、肌着状態になりました。エフィーちゃんの方は一瞬で脱ぎ終わっていました。


 なんという早業でしょう。と思いましたが服自体が魔力で出来ているそうなので、洗濯も要らないそうです。便利!


 慌てて私も下着に手をかけます。もちろん今日のブラはスポーツブラです。だって迷宮攻略するんですから当然ですね。


 残念なのは空君に色気がないと思われてしまう可能性ですが、私の合う下着で色気があるブラってあんまり無いんですよね……。



「な、なんという大きさ、怪物じゃ!」



 エフィーちゃんが私の胸をガン見しながら引いています。失礼ですねっ!? 私だって好きでこうなったんじゃないんですよっ?


 そのまま浴室に突入します。お外は少し肌寒くなってきましたが、溜まっていたお湯の湯気のお陰で大丈夫でした。


 シャワーを出して、一通り体にお湯をかけます。はぁぁ~、ベタついた汗が流されていくのって気持ちいいですよねっ!


 そして風呂椅子に座ったエフィーちゃんの頭を洗っていきます。サラサラと綺麗な髪をしていますね。これが天然だなんてズルいですよ!



「エフィーちゃん、痒いところありせんか?」


「ないのじゃ」



 シャンプーとトリートメントを終わらせて、髪に付いた泡を落とします。洗い落としがあるといけませんから念入りにしないとですね!


 次に体を洗います。ボディーソープをスポンジに付けて軽く揉み、背中をゴシゴシと優しく丁寧に磨きました。


 良い香りですね。空君みたいな一人暮らしの若い男の人はあんまり拘ったりする人は居ないと思ってましたけど……エフィーちゃんがいたから慌てて買い揃えたとかでしょうか?



「そう言えば、エフィーちゃんはいつも1人でお風呂に入ってるんですか?」



 当たり前のように洗っていて気づきませんでしたが、1人なら私が洗わなくても別に良いのでは? と疑問ができたのでなんとなく尋ねました。



「そうじゃな。最初の日だけは主と一緒に入ったが、後はいつも1人じゃ」


「……そうですか~」



 ちょっと思うところがあったのは事実ですが、断じて嫉妬ではありません。それよりもエフィーちゃんのお肌も綺麗ですね。


 プルプルでふっくらモフモフしてます。産まれたばかりの赤ちゃんのように綺麗なお肌ですね。羨ましいです……。


 大きくなったらとっても美人さんになるでしょうね。今でも子役の子供たちはもちろん、女優さんよりもよっぽど華がありますし。


 体を洗い終えたエフィーちゃんを湯船に入れます。溺れたりしないですね? と思いましたが杞憂でした。同じように頭を洗っていると、エフィーちゃんから視線を感じます。



「どうしました?」


「……そこの揺れている2つの塊、早くもげて欲しいのじゃ」


「サラッと酷いこと言いますねっ!?」



 そんな会話がありましたが、私はエフィーちゃんに背中を洗ってもらいました。力はちょっと弱く感じますが、一生懸命にしていてとても可愛らしかったです。



「はふぅ~、迷宮攻略後のお風呂って気持ちいいですねぇ」


「……」


「あのエフィーちゃん、そんなに胸を見られるの恥ずかしいんですけど」



 湯船に浸かる私の胸を、エフィーちゃんは鬼の形相で睨みつけてきます。なんでそんなに胸を敵視してるんでしょう?



「胸をお湯に浮かせるなど、我への当てつけかのっ!? 斧で切断してやるのじゃ!」


「痛いし嫌ですよ~。と言うかされても《回復》で元に戻せると思うので」


「ぐぬぬぬっ!」



 エフィーちゃんが歯ぎしりをして私の胸を鷲掴みにし、バチャバチャとお湯をはね上げながら上下左右に動かしてきます。



「ぐっ……くぅ、なんという柔らかさ! なんというハリ! なんという大きさ! やはり斧で削ぎ落とすしか……!」


「もうちょっと優しく触ってくださいエフィーちゃん。大きいのが良いのは分かりますけど、もっと大事なのは形ですから」


「それも良いからこうしておるんじゃぁぁぁ!!!」



 エフィーちゃんはシクシク涙を流しながら、私の胸が痛くなるまで触られました。これが空君なら良かったのに……。



「はぁ、はぁ……」


「満足しました? エフィーちゃんなら絶対に綺麗になります。心配ご無用ですよ」



 私の胸への嫉妬からか、胸を揉み疲れたせいかは分からないですが荒い息を上げるエフィーちゃんにそう声をかけます。


 別に情けをかけているつもりではありませんよ? 私の予測から来るほぼ確定的な事実です。体を洗った時にある程度は把握しましたし。



「そうして出来上がるのがただの劣化品じゃ意味が無かろう」


「小ぶりな大きさが好きな人もいますから」


「……主はどちらが好きなんじゃろうか?」


「やっぱり空君基準になるんですね。しかしそれは重要な話です。空君は低身長巨乳を受け入れられるのでしょうか?」


「スレンダーな貧乳も考慮して欲しいのじゃ」


「サラッと自分はスレンダーって確定してるんですね……」



 私としてもエフィーちゃんはスレンダーかつ平均的なサイズの成長を遂げると予想していますが、エフィーちゃん自身も私と同じような予想をしていたことには驚きです。



「そう言えば琴香には我の真の姿を見せたことか無かったの。一瞬だけじゃが見せてやるのじゃ!」


「え? ちょ、急に光って……ほわぁ~……!」



 エフィーちゃんがザバッと湯船から立ち上がり、そのまま光に飲まれます。急な出来事に戸惑っていると、目の前には白銀の髪にシミひとつない純白のお肌を晒す美少女が立っていました。



「ふっふっふっ、見よ! この完璧なプロポーションを!」


「む、胸以外は完全に負けてます……!」


「そうじゃろうそうじゃろう〜! ……胸が負けたら意味ないんじゃ!」



 エフィーちゃんがドヤ顔から一転、最後には頬を膨らませて癇癪を再び起こしました。あぁ、どんな見た目でも中身はエフィーちゃんですねぇ……。


 それよりも、精霊ってこんな事も出来るんですねっ! と興奮気味に観察していると、私自身も体を弄れるのではっ!? と思いましたが無理だと教わります。残念です……。




「と言うか空君、そこまで気にしますかね? 好きになった人の体を好きになるって言いそうな気がします。私がそうですし」


「例えそうだとしても、潜在的な趣味嗜好は変わらんじゃろうから心配なんじゃ」


「……エフィーちゃんって空君のこと、好きなんですよね?」


「当たり前じゃろ?」


「じゃあ……結婚したい、とか思ってるんです?」



 私は頭に浮かんだふとした疑問を問いかけました。エフィーちゃんって見た目は子供ですが、年齢としては年上ですからね。


 そう言った願望を持っているならライバルです! なんせ空君に好かれようと必死な様子ですし……それは私も同じですが。



「……いや、残念じゃが出来ないのじゃ。例え我がどれだけ空を愛そうとも、我と主は結ばれんよ。せいぜい親友、兄妹あたりの関係が妥当かの」



 所がエフィーちゃんは苦笑して、淡々と抑揚のない声でそんな答えを告げてきました。てっきり先程までのように明るく『我が主と結婚するから琴香は愛人がせいぜいなのじゃ』ぐらい言ってくると考えていましたよ……。



「えっと……なんでそうなるのかは分かりませんがじゃあ私が貰っても良いで──」


「駄目じゃ。我が認めん限り空は渡さんぞ!」



 代わりに私にも権利は無かったようです。思ったより拒絶反応が強いですね。



「えぇ? それってどういう基準なんです?」


「空のことを我と同じくらい愛し、慈しみ、支え合い、共に歩める……そんな人じゃなきゃ我は認めん! 例え主が好いていようとじゃ!」


「ま、まるで姑の発言ですね。……では僭越せんえつながら私がどれだけ空君を愛しているかを聞いてもらいましょう。まず──」



 怪しげな笑みを浮かべた私は、私のことを不思議そうに見つめてくるエフィーちゃんに私がどれだけ空君を想っているかを口に出していきます。



「──な所ですね。後は──」



 29個目の好きな所を言い終わりました。最初は余裕顔だったエフィーちゃんも、段々と顔が険しくなって言ってますね。まだまだ行きますよぉ!



「も、もう良いのじゃ。……ご、合格、なのじゃ……」


「本当ですかっ? ありがとうございますエフィーちゃん!」



 100個を超えたあたりでエフィーちゃんが折れました。多少顔が赤いのは聞いてるこっちが恥ずかしくなってきたからでしょうか?



「こ、ここまで主の事について語られては否定できんではないか。……ここまで想ってくれる女を持つとは、主は幸せものじゃの」


「重たいですが大丈夫でしょうか?」


「自覚あったんじゃな!?」


「自分の性格ぐらい判断できますよ。たとえ嫌われようとも、それを抑えられないくらい、一重に好きなんですよ、空君のこと」



 あの日の出来事を思い出しながら呟きます。自然と優しげな声が漏れました。



「……好きな所はあげてもらったがの、何故そこまで空が好きなのじゃ? 主がしたことと言ったら傘を貸したことと我を通じて生き返られたことぐらいで……十分じゃな!?」


「あはは、まぁそれもありますけど……昔、助けてもらったんですよ、色々と。彼は覚えていなくても、私だけが知っている空君の良い所……一応自慢なんですよ? ……それも含めてただひたすらに、愛しています」



 思ったより自然と本心が口から出てきましたね。エフィーちゃんはそれを聞いてしばらく黙っていました。その瞳は何を想っているのでしょうか?



「…………お主は……はは、全く。仕方がないのう! 琴香よ、我はお主が空の妻と生きることを許してやるのじゃ!」


「おぉ! 契約精霊お墨付きですか! でも、空君自身が私を選んでくれるまではまだまだ時間が掛かりそうですねぇ……」


「主は主じゃからな! 仕方あるまい!」


「ふふっ、そろそろ上がりましょう。空君を待たせすぎても悪いですし」



 話が弾みすぎて長風呂になってしまいました。シャワーで体を流してから上がります。


 バスタオルでエフィーちゃんの体を拭いていると、また視線が胸に飛んできました。そんなに凝視されると幼い女の子の見た目とはいえ複雑な気持ちなんですが……。


 自分も同じようにしている間、エフィーちゃんが服を着ています。お風呂に入るまでは魔力で出来たファンタジー衣装を着ていましたけど、普通に本物の女児用の服も用意してあるんですね。


 私の方は着るものが無いので空君の服を借りています。明日帰る時には着れるように洗濯機で回していますよ。


 下着は付けていません。洗ってますから当然です。まぁ実は探索者組合には女性向けに下着も売っているので買ってありますが、黙っておいて少しの間、空君に意識してもらいましょう! 戸惑う姿が目に浮かびますねっ!


 ドライヤーでエフィーちゃんの長い髪の水気をタオルでしっかり吸い取ってから丁寧に乾かします。私も乾かして空君に上がった事を伝えます。



「あ、主人……琴香の見た目を信用するでないぞ……」



 エフィーちゃんが空君にそんな事を告げていました。それって一体、身体か考えかどっちの事を指しているんでしょうか?


 幸い、空君はキョトンとしていましたが……ぁ、その首を傾げる仕草も可愛いですね。


 寝る場所は布団が2つ用意されてありました。1つはエフィーちゃんが、もう1つの方で私と空君ですね! ……もちろん冗談ですよ? 半分だけ。


 ちなみにいつもエフィーちゃんは空君と一緒に寝ているらしい。ずるいと思うべきか、意識されてないようで安心するべきか……。


 もう1つあった布団は、いつもはたまに遊びに来る友達が使う用らしいです。私が泊まっている状況を見られても平気ですか? と尋ねました。


 空君はさすがにありえないと笑っていましたが何故でしょう……明日、誰かがこの家を訪れるような気がするんですが……。


 私の予感は結構あたると自負していますが、その結果は明日のお楽しみです。私は楽観的な思考をしながら、空君がお風呂から上がってくるのを待ちました。



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 時系列を考えて1章に挿入することも考えましたが、当時では判明していない事実もあったのでここに置いときます。

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