第202話~日本のS級探索者達~

「日本のS級探索者が、全員東京にですかっ!?」



 思わず声を上げる。最近増える高等級のゲートに対しての安全、そして国民の安心を守るS級が今、東京に集結しているだと?


 元からいる本部長。勝手に付いてきたと思っていた烈火さん、そしてエルフ達の保護を求めるために来た俺。既に半分が揃っていることが異常なのにその倍だと? ……何がある? 水面下で一体何が……!?



「気になるようだね。付いてきたら話すよ。まぁ、付いてくる以外、君に選択肢は与えないけどね」


「……行きます。今からですか?」


「決断が早くて助かるよ。あぁ、既に揃っているから待たせないようにしないと」



 行かない理由はない。大本さんの火急の事態はおそらく今からある会議が関係している。さっきの来客がVIPだとかじゃなかったようだな。知っておかねば……今度は日本で何が起きているのかを。



「篠崎さん、本部長の正体についてはどうか内密にお願いします」


「分かってますよ、大本さん。誰も信じない」



 平塚さんの後ろを着いて歩いている途中、大本さんがそんなお願いをしてきた。別に暴露する趣味もないし特に問題は無い。



「そうですか。では次に……他のS級の方たちもヤバ──個性派の集まりですのでご注意を」


「っ!?」


「ご注意を」


「…………はい」



 大本さんからの忠告に俺は泣きそうな顔をした。だってあんなテンションの人達が集まる会議とか地獄じゃん……。



「やぁ諸君、待たせたねっ!」



 扉を勢いよく開けた平塚さんのそんな挨拶から真の地獄は始まった。



「だぁかぁらっ! 俺はロリコンじゃなくてシスコンなのっ! 本当に理解してます? 世界中の幼女達よりも妹の氷花が1番! 妹こそ史上! これ常識っ!」



 そう言って叫ぶのは皆さんご存知我らがS級シスコンの綾辻烈火さんだ。日本史上5人目のS級探索者にして、最年少で探索者となった過去を持つ。


 俺が入るまでは4人いるS級探索者の中では22歳なので最年少だった。愛知県名古屋市の蒼龍組合のマスターでもあるな。



「まだ咲き誇る前の幼きつぼみを愛でる趣味については似通っております。さぁ、烈火君も俺と同じようにロリの道を進もうではありませんか!」



 天然パーマのような髪型でそう熱弁するのは四国、中国、九州地方を主に任される熊本県熊本市の朱雀すざく組合のマスター。S級タンク系探索者の帯刀傑たてわきすぐるさんだ。


 2mを超えそうな長身と力士のようなガタイは見る人を恐怖させるが、子供好きでよく養護施設などにも顔を出しており、主に大人からの人気を集めているとと聞いていたが……まさかロリコンだったとは予想外だよ。



「はぁ……犯罪者予備軍達は黙っててくれます~? これだから男は性欲に溺れた豚のように気持ち悪い。女の子同士こそやはり至宝~。わたくしのように百合を理解できない貴方達の頭が可哀想です。1度脳を洗浄してみては~?」



 酷い暴言? を吐くのは深緑色の髪をしたお淑やかさを感じさせる風貌から、嫌悪感剥き出しのオーラを漂わせるS級の紅一点。


 東北、北海道地方を主に任される宮城県仙台市の玄武げんぶ組合のマスター。S級パワー系探索者、吉田芽衣よしだめいさんだ。


 女性の憧れとして輝き、CMにもよく出ており女優顔負けのプロポーションは人目をよく引く。その正体は女性が好きな百合だった。


 ……あー、あー、あー、あぁぁぁっ!!! S級探索者の3人がお互いの性癖でバトってるよ! S級は変人しかいないのっ? こんなの見てたら一香さんが1番マシだよっ! ……多分っ!



「全員1度座りたまえ。今日は新入りもいるからね」



 その言葉にピタリと言葉を止めて自らの席に座り直す3人。その視線が一斉に俺に向けられる。烈火さん以外の2人からの視線は値踏み……そんな言葉が相応しい。


 烈火さんに関しては喜びというか……うん、まるで『同族が増えた! これで口喧嘩に勝てるぞっ!』みたいな視線だ。俺はあんな混沌とした会話に混ざるの絶対に嫌だからねっ!



「新入りってことは新しいS級発現者が現れたのか?」


「へぇ、中々可愛らしい顔つきね~。でも男かぁ、残念っ……」


「空君さっきぶり! 君はやっぱり上がってくると思っていたよ!」


「烈火君、彼は知り合いかい?」


「諸星組合のF級探索者。でもここに連れてきたことを見るに、S級に再発現したんでしょ?」


「FからSにですって!? ……羨望と嫉妬の対象ね、可哀想に~」


「こらこら君たち、自己紹介ぐらいさせてあげなさい」



 やべぇ、烈火さんと帯刀たてわきさんと吉田さんが好き勝手に喋り出すせいで今だけは主役っぽい俺が空気だ。元から喋るのは好きじゃないのに、ヤバいやつらの集まりじゃそれが際立ってしまう。



「篠崎空、19歳です。S級に再発現したので諸星組合から参りました。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします篠崎君。所で質問なんですが……俺、篠崎君からは同じ匂いがします」


「え?」


「あなたロリコンですよね?」


「違います」


「でもあなたから2人以上の幼女の匂いがするんですが」



 帯刀傑たてわきすぐるさんの印象はそれはもうキモイを通り越して純粋な恐怖だった。なんでエフィーとララノアちゃんの匂いが分かるんだよっ!?



「帯刀さん待ってください。空君は既に俺と同じシスコン同盟に入っていますので、引き抜きは御遠慮ください!」



 入った覚えが全く無い。そう言えば烈火さんも匂いで俺が妹持ちであることを見抜いていた過去があったな。S級怖い……。平塚さん、止めてください。



「おいおい君たち、彼は既に俺のオタ活同盟に入ってるんだよ」



 悪化させやがったこいつ! ……あぁ、俺はずっと信じていた。S級探索者ってのは一香さんが特殊なだけだと。でも違った、一香さんは常識人枠だったのだ。


 もう俺の中にS級探索者への敬意は消え失せかけていた。しょうがないじゃないか、こんな光景を見せられたらさ……。



「3人とも、それは今する話かしら~? 平塚さん、さっさと話してくれないかしら、私たちを呼んだ訳を……」



 あぁ、男しかいないこの状況では吉田さんが天使に見えるよ。大本さんもさすがに他のS級探索者がいる中じゃ上手く動けないようだ。俺と同じ人がいて良かった!



「この話も非常に重要ですが、今はそれ以上の話を聞くべきでしたね。すみません」


「右に同じです。申し訳ない篠崎君、ロリコン同盟の話はまた後にしてくれ」



 重要じゃねぇし二度としたくないですが、黙ってくれてありがとうございますっ! ……なんで俺がお礼してんだよ!?



「うん、じゃあ話すね。S級迷宮のゲートが開いた」



 平塚さんがあっさりと、シャレにならない言葉を発した。



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 S級探索者達のキャラは空以外の皆さんの予想通りの結果になりましたね。

 カクヨムコン中間選考結果も発表されました。こちらも予想通り、無事に通過致しました。

 という訳で次回更新は宣伝していた通りに記念SSを投稿します。え、本編の更新はないのかって? ……あまり書き溜めないんでご勘弁を。

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