第200話~私が空君とクリスマスデートできるか読者は不安よな 琴香、動きます~

 空君が大本さんに連れられてどこかへと行ってしまいました。恐らく再鑑定を受けてS級認定されてるんでしょうね。


 居ないのは寂しいですが、まぁ車内で嫌かと言うほど喋ったので構いませんか。それよりもエフィーちゃんの方が翔馬さんと一緒に居て空君と喋れていないはずですが……。



「エフィーちゃん、はい、堅揚げポ〇ト。でもあんまり食べ過ぎるとまた空に怒られるからほどほどにね」


「分かっておるのじゃ! 頂きますなのじゃ!」


「ねぇ、狭い」


「先にこのソファーに座ったのは俺だ。嫌ならそこで立ってろ綾辻」


「ちっ……」


『お姉ちゃん、あれなぁに?』


『あたしも分からないわ。でも楽しそうねっ』


『箱の中に変な人が詰め込まれて何かやってるな。魔法の感じはしないけど……こっちに来てから色々ありすぎてツッコミが追いつかないぜ』


『黙って順応するのが儂の経験則じゃな』


『ララノア、もう少し優しく撫でるの。あともうちょっと右なの。そう、そこなの』



 翔馬さんにお菓子を貰って餌付けされているエフィーちゃんは大丈夫そうですね。最上さんと氷花ちゃんも問題なさそう? ですし、エルフのみんなも戸惑いながらも問題は起こさなそうですし……。


 あと出ていく前にララノアちゃんに預けられたハズク……ちゃん? は撫で回されていますね。あの姿ならしょうがないですが、精霊として威張っていた最初の威厳が皆無です……。


 出ていった大地さんと諸星社長の2人は事情聴取か何かでしょうか? やはりエルフですからね。ここしばらくは何があってもエルフだから、で理由がつきそうな出来事ばかりが身の回りに起こりそうです。



「やぁ氷花! 愛しのお兄ちゃんが会いに来たよ!」


「帰れクソ兄貴」


「昨日みたいにお兄ちゃ──」


「消えて」


「ちょっと集まりがあって遅くなるから待っててね!」



 綾辻烈火さんが現れて去っていきました。やはり生粋のS級はキャラが濃いですね。空君に元からあんなテンションで来られると、さすがの私も好きになれたか不安になります。


 それよりS級探索者の烈火さんの集まりとはなんでしょうか? 蒼龍組合の本部は確か名古屋のはずです。


 あぁ、新しくS級に認定された空君との顔合わせでしょうか? 同じS級同士、探索者組合の方がそういった席を用意してもおかしくありませんし。


 空君がS級になったと正式に公表されれば、今までのように出歩けることも少なくなりそうですね。白虎組合が無くなって三大組合になってからは、迷宮崩壊こそ起きてませんがいつもギリギリだと聞いてます。


 私や空君の所属する諸星組合を含めた新しい四大組合と呼ばれるのも時間の問題……もう1ヶ月も切った今年のクリスマスは、ちゃんとデートできるでしょうか?


 ……まず空君が誘ってくれるかどうかですね。最悪でも周りの人を脅して空君の予定を空けさせて、当日に押しかければ行けますからデート自体は問題ありません。


 しかしやはり、空君から誘われてこそ本物のデートという物です! 1度目は私から傘のお礼を使って、2度目は私の再鑑定に時間を取られて食事だけしたおまけのようなもの。


 よし、色々ことが片付いたらアプローチをかけてみましょう。そのためにも……ひとまず障害になりそうな女の子達には釘を刺しておきませんと。


 私はクリスマスデートに向けて行動を開始しました。



*****



 S級探索者となった俺はそのまま大本さんに連れられていく。すっごく忙しいな、S級が出たんだから当然なのかもしれんが……。



「S級となった篠崎さんにはこれから本部長と面会して貰います」


「はい?」


「幸いにして先客がいらっしゃるので、ここらで高ぶる気持ちは落ち着かせて下さい」



 大本さんの強引な行動に疑問を抱きつつも、俺はS級に……一香さんと同じになった喜びを噛み締める。エフィーと出会う前ならここで満足していただろう。


 だが、俺にはS級を超えるほどの力を手に入れなければいけない理由がある。ここで立ち止まっている訳には行かない。



 て言うか先客? しかも本部長か直々に……大本さんが急いでいた火急の事態って今この先の部屋にいる人物の事なのかもな……。


 そう考えていると、何人のSP? のような黒服を着た人達が出てきて誰かを外へ連れ出す。先客の要件が終わったようだな。身長が高く首あたりまで見えたけど、生憎後ろ姿だけで顔は見れなかった……。



「それではどうぞ篠崎さん。先に告げておきますが、もし本部長に幻想を抱いているなら注意してください。ぶち壊されますので」



 先客と同じ空間に遅れて入り込んだだけで何故か疲れた顔をした大本を哀れに思っていると、そんな意味不明な事を告げられる。理解できないながらも、促されるように本部長の部屋の扉を開けた。


 ここにいるのか……俺が探索者に憧れた原点の人が。そうだ、本部長の逸話と言うか軽く話をしよう。本部長は10年前、日本で初めて出来たゲートに巻き込まれてそのまま迷宮を攻略した人物だ。


 その後は世界各国で開かれるゲートに対処出来ない国々に赴き、迷宮を攻略。徐々に世界各国で出来上がっていた探索者組合。その日本の本部長に就任。


 その年の探索者の順位を決める世界探索者ランキングでは見事2位に輝きながらも、翌年にS級探索者が日本に他に2人現れたことで探索者を引退し、こうして本部長の仕事に専念。


 特殊な能力は無いものの、圧倒的な強さから万能系とまで称される実力の持ち主。それこそが日本探索者組合本部の本部長にして、元EX級第2席、平塚輝久ひらづかてるひささ──。



「アァァァァァっ!?!?!? 『ドキっ♡胸きゅんシスターズ☆~あなたのハートにラブリーショット♡~』の特番終わってるじゃねぇがァァァァ!!! クソがっ! 余計な訪問しやがってあのロリコンゴリラめ! アスカきゅんのNewソング聞けてねぇ! これのために俺がどんだけ仕事の調整したと思ってる死ねやゴミカス!!! 今週の深夜アニメも溜まってるし新刊の漫画とラノベは積みっぱなし! 何が日本の最終兵器だ! 本部長とかEX級とかS級とかどうでも良いから早く仕事辞めてぇぇぇぇぇ!!! あぁすっきりした! さっさと帰ってししゃもとビールで1杯しながらYouTube見てぇぇぇ!!! ……あぇ? ……ようこそいらっしゃい、初めまして、探索者組合本部長の平塚輝久です」



 俺はそっと扉を閉じた。どうやら部屋を間違えたらしい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 祝! 200話達成っっっ!!!

 200話に相応しくヒロイン成分マシマシ、展開のインパクトもマシマシ、キャラとサブタイトルの濃さもマシマシにしました!!!

 誰か祝ってぇぇぇ!!!

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