第199話~S級への再発現~
東京には行くのは諸星社長。今回特級迷宮に攻略した探索者の中から残ることを希望した4名を除く5名。翔馬とエフィー。エルフ達から代表してクルゴンさん、ヘレスとララノア、アムラスの4人だ。
他にも車の運転手や秘書の方はいるが除いている。飛行機が速いんだけど、さすがに公共交通機関は使えないよね。向こうでの寝泊まりは探索者組合本部が用意してくれるらしいので、ヘレス達も心配しなくて良し。
むしろ、置いてきたエルフ達の方が不安だ。1番の知り合いになる探索者4名……牧野さん、柏崎さん、その他2人こと馬渕さんと岸辺さんがいるのでマシだろうか……。
あ、もちろんと言うべきか烈火さんもついてきている。妹にあんなことがあったんだ。今度は何がなんでも守るんだ、と言う意志を感じた。
大本さんは先に東京へと出発したようだった。何やら急ぎの用事があったようだが……。そして、皆に事前に説明をしておいたお陰で大した騒ぎになることもなく、車内にハズクは乗り込めた。
ちなみに車に乗って東京に向かう前、廊下でハズクとエフィーの顔合わせは済んでいる。確かこんな会話だった。
***
『初めましてなの、精霊王エフィタルシュタイン様』
「うむ。ハズクと言う新しい仲間に祝杯を上げたいところじゃが自粛せねばな。主と契約は果たしたのかの?」
『産まれたら勝手にしてあったの』
そうだったの!? 確かに契約してないのに契約者とか言われてたから違和感あったけど、それはてっきり本当に刷り込みでもされてたんだと思ってたのに。
「ふむ……ともかく、主の契約精霊はこれで3人になったのじゃ。我を主精霊として副精霊が2人……まぁまぁ良い戦力アップに繋がるじゃろう」
「確か琴香さんと契約した時に《回復》が使えるようになったけど、ハズクと契約してるなら風属性の精霊魔法を使えるってこと?」
『多分そうなの。でも生まれたばかりだから力弱いの。比例して強くなるはずなの』
へぇ、俺はスピード系、回復系だけじゃなくついには魔法系にまで足を伸ばしたのか。あとはエフィーとの契約上書きを強化系と無理やり捉えるなら、残りはパワー系とタンク系だな。
「契約上書きで上がった力量も確認しないとな」
「また【縮地】のような新しい力は得ておるぞ。主、どんどん人間離れしていくの」
「契約者にかける言葉がそれか? 契約精霊の言葉じゃねぇよ。それより新しい力か……今度は一体どんなヤツだよ」
「聞いて驚け! ──じゃ!」
***
なんて事もあったな。現在俺たちは何組かに別れて車に乗っている。大型なのでエルフ達4人と俺と琴香さんで1組のペアだ。
車に驚きながら大したスピードではないとすぐに落ち着きを取り戻したエルフ達に苦笑いして、高速道路に揺られて二時間ほど経過した時、事は起こった。
『お姉ちゃん……トイレ』
「すみません、近くにパーキングエリアかサービスエリアあります?」
ララノアちゃんが空気を変える一言を呟く。確かさっき確認した時は誰も返事をしなくてスルーしたから次にあるのは……良かった、2キロ先らしい。
「ララノアちゃん、2キロ先にあるらしいのでもう少し我慢して下さいね」
『うんっ……』
そんなハプニングがありつつも、7時間ほど(途中サービスエリアでの休憩あり)を掛けて大阪から東京へ移動。エルフ達4人はフードを被っての移動だったので、人目に晒されることは無い。
そして全員は探索者組合本部の地下駐車場から関係者用の通路を通って控え室での待機を命じられる。諸星社長と栄咲大地さんだけはどこかに呼ばれた。
あ、烈火さんは確か特級迷宮に突っ込んで怪我を負った事の始末書を書かされるとかで連れていかれた。まぁ日本に4人しかいないS級探索者を亡くす可能性があったし当然か。
「翔馬は2人が連れていかれたこと、何があるか知ってる?」
「いや、僕も何も知らされてない。エフィーちゃんが一緒に居たからかな?」
「我のせいなのかの!?」
同じ車に乗っていた2人から声が上がる。幼女とは言え俺たちに話さない内容を喋ったりはしないよな。
「篠崎さん」
「大本さん、こんにちは」
「突然で申し訳ないので再鑑定の準備が出来ました。急ぎこちらに」
そう言われて大本さんに俺は連れられていく。エルフ達4人と最上のおっさんと氷花さん、琴香さんとエフィーに翔馬だけを残していくのはちょっと不安な気がするが……まぁ大丈夫だろ。
「今から篠崎さんには再鑑定を受けてもらいます。その後もしS級と判定された場合、お時間を頂きますのでご考慮下さい」
「それは構いませんが……何故そんなに急いでるんです?」
「色々と火急の事態が起こっていましてね」
そう告げる大本さんの表情は優れない。エルフ達が現れた以外にも何やら大事が起きているようだな。まぁ、関係あればいずれ知るだろう。
案内されたのは大阪や京都と同じような部屋だ。再鑑定するだけだし別に地域差なんてないか。俺は係の人に案内されて巨大な魔力鑑定の魔道具の前に立つ。
ここに来るまでもそうだったが誰もいない。普通、琴香さんの時のように待ち時間が発生するはずだが……混乱や混雑を避けるために、もしかして貸切にしてくれたのかな?
そんな事を考えていると大本さんの合図が出たので魔道具に触れる。この全身を測る感覚はあまり好きにはなれないな。
「……どうです?」
測定結果を見た大本さんに声を掛ける。口元を開き、それでも動揺した様子はあまり感じとれない。
「篠崎さん、おめでとうございます。S級発現者に再発現しています」
しかし口角の上がった口からは若干トーンの高い声が漏れ出ていた。大本さんの言葉を聞き、俺は小さくガッツポーズをとる。
こうして俺は日本で6人目の、現在も存在、在住している中では5人目のS級探索者となった。
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