第82話~それ、デートか?~
「ごめんごめん空、ちょっと遅れちゃったよ」
「いやいや、こっちの方こそすごく待たせちゃってごめんな翔馬」
謝りの言葉を言いながら翔馬が公園まで来た。俺たちの方から会場の方に出向くと伝えたのだが、大丈夫だと言われたので俺たちは公園にいるのだ。
「あれ? エフィーちゃんはどうしたんです?」
琴香さんがそんなことを尋ねる。確かにあのいつもやかましいエフィーの姿が見えないな。あれはいないといないで結構寂しく感じる……。
「あはは、疲れて寝ちゃったみたいだよ」
そう言いながら翔馬は反対を向く。背中を見ると、おんぶされた状態で健やかな笑みを浮かべながらすやすやと眠るエフィーの姿が目に入る。
「ふわぁ、寝顔も可愛いですね〜! ほっぺたプニプニしたいですっ!」
琴香さんは嬉しそうに言いながら、さっきまでの重たい空気なんてどうでも良いような満面の笑みを浮かべていた。一番良い解決方法はこれだった……?
「ありがとう翔馬。本当に色々迷惑をかけて申し訳ないよ」
「これぐらいで気にするなよ。それよりも改めて2人とも、試験合格おめでとう」
「ありがとう」
「ありがとうございますっ」
ゆっくりとエフィーを受け取ると、翔馬からお祝いの言葉も受け取る。俺、受け取ってばかりだな……。俺はこれまでのお礼もしたいので、またご飯を作ることを約束した。
「そうだ、ご飯といえばエフィー、お腹すいてないのかな?」
ふと気になったことを呟くと、ビクンと翔馬が体を震わせた。
「どうした翔馬?」
「え? いや、その……」
「ん? 言ってみ? どうせお菓子食べ過ぎたとかだろ?」
「せ、正解……」
やっぱりか。お菓子ばっか食べてないで、ちゃんとしたご飯も食べて欲しいんだけどな……。
「あ、父さんからだ……ごめん2人とも、ちょっと呼んでるみたいだからもう帰らないと」
「そうか。そっちも頑張れよ」
翔馬のスマホに諸星成彦(もろぼしなりひこ)社長から連絡が来たらしく、ここらで解散ということになった。
「うん、それじゃあ!」
「またな!」
「さようなら、翔馬さん」
こうして翔馬と別れ、俺たち2人は無事帰路についた。帰り道は試験についてや、デートのプランについて2人で話し合った。
なに、デートは俺がリードするもの? はっはっはっ、馬鹿だなぁ。俺が琴香さんをリードなんて出来るわけないじゃないか! 2人で話し合った方が賢明だよっ!
そして、そんなこんなで3日が過ぎた。
***
ふぅ、今日は待ちに待ったデートだ! 天気は快晴! 雨とか降らなくて一安心だぜ! 現在時間は10時前!
「主人よ、待ち合わせ時間は10時のはずじゃが、なぜ9時からいたのじゃ?」
胸ポケットに入ったエフィーが首を傾げながら尋ねてくる。
「無論、待ち合わせとはそういうものだとネットに書いてあったからな! それよりエフィーがそんなことを聞くなんておかしいぞ? 変なものつまみ食いして腹でも壊したのか?」
「我を犬か何かと勘違いしてはおらぬか!? それはそうと、今のは確認みたいなものじゃな。これでただ待ち合わせ時間を間違えたみたいな奇跡なら面白かったと思うぞ?」
「せっかくのデートを初っ端からギャグにするなよ……」
「琴香のやつがいる時点でギャグにしかならんと思うのじゃ」
「それもそうか」
多分琴香さんのことだから、余裕も持って2時間ぐらい早めに出るはずだ。そして家の出る方向を間違える。その後気づいて急いで戻り、電車の乗る方面を間違えていそう。
「酷くないですかぁっ!?」
「お、琴香さん。おはようございます」
なんて考えていたら時間通りに琴香さんが現れた。絶対30分ぐらい遅刻してくると思ってたのに。と言うかデートの一言目が今のとか……とりあえず挨拶しておいた。
「いえ、こっちこそおはようございま──じゃなくて! さっきの発言はどういうことですかっ? 私の存在はギャグ漫画のキャラだと言いたいんですかっ?」
琴香さんが俺の作った流れに流されたが、途中で気づいて先程の発言について追及してくる。くそっ! 「いいえ違います」と完全に否定できない!
「エフィー、助けてくれ」
俺が困った時にはいつもお前が助けてくれたよなっ? 今回も頼むぜ相棒!
「残念ながら詰みじゃ」
「なん……だと!?」
「ギャグ漫画のキャラはそっちじゃ無いですか?」
なんでコントをデートの開幕から繰り広げた。
「さて、挨拶も済んだことですし、そろそろ行きましょうか。探索者組合の京都支部に」
「はい!」
こうして俺たちはデートに出かけた。……これ、デートか?
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