9人の王〜F級探索者の俺、異世界の迷宮攻略中に仲間に裏切られ死にかけるがボス部屋に眠っていた元精霊王を名乗る銀髪幼女と契約し、元仲間へ復讐を果たしつつ契約した精霊たちの力を借りて最弱から最強へと至る〜

第24話～圧倒的テンプレ～

「ねぇねぇ君、どこから来たの？」

「俺たちと遊ばない？」

「可愛いねぇ、中学生？」

「私大人ですよ！？」

「あはは、そんなに強がらなくても良いって。俺たち優しいから」

　…………なんだこの展開は？　あれか？　もしかしてこの人たち、初芝さんをナンパしてるのか？

　……うわぁ、まじでこんな人いるんだな。せめてプールや海でしてろよ。僕の分のトレー置いてあるんだから1人じゃないって分かるはずだろ……。

　と言うか初芝さん、中学生に間違えられてるんだけど……。じゃこいつらただのロリコンじゃねぇか！？　助け舟ださないと……。

「すみません、僕の連れに何か御用ですか？」

「あ？　んだよ、連れって男かよ。しっしっ、男は引っ込んでろよ」

　は？　まじかよこの人たち。普通彼氏持ちって勘違いして去っていく流れだろ！？　え、どうしよう……？

「あ、あの！　私たち急いでるので！」

　そう言って初芝さんが立ち上がり、僕の後ろに隠れるように移動してくる。

「えぇ、そんなナヨナヨした男より俺の方がイケてるでしょ？　何？　その男彼氏？」

　男の1人が金髪に染めた髪をいじりながら尋ねてくる。

「えと……はいそうです！」

「いえいえ、違いますよ」

　……被った。しかも意見が真逆に……。やってしまった、つい……。

「え笑、どっち笑？」

　男が面白がりながら追撃してくる。やばい！　さっきのは僕のミスだ！　だから僕が挽回しなくては……！

「……彼女じゃない。婚約者だ」

「ふぇ？」

　…………あれ？　もしかして僕はとんでもないことを口走ってしまったのでは……？

「あんた、中学生と婚約してるのか……！？」

　そう言った男の方がドン引きしていた。自分だって声かけたくせに！！！

「まぁとにかくさぁ、俺らその子に用があるわけよ。消えてくれる？」

「あはは、初芝さんが嫌がってんだから無理に決まってんじゃん」

「てめぇ！　ぶっ殺されてぇのか！」

　あれ？　なんか怒らせるようなこと言ったか？　いや煽るように言ったんだけどね。てかそろそろ店員来てくれないかな？

　チラリと店員の方を見ると、遠くから見守っているだけだった。おいっ！？　……いや、警察には電話してるかも。でも警察沙汰は嫌だなぁ……。あっ、そうだ……。

「ねぇ、これ見てみ」

「あ？」

　僕はスプーンを三本の指で持つ。そして力を少し加えると、グニャリとスプーンは曲がった。テコの原理だっ！！！

「で、僕の婚約者になんか用？」

「いえなんでもありません失礼しましたー」

　男たちは去っていった。……よしっ、これが一番手っ取り早い方法だろう。僕はそっと、曲げたスプーンを元に戻しておいた。

「初芝さん、大丈夫ですか？」

「……すっごく怖かったです」

　初芝さんが僕の背中に縋るように呟く。え、何この展開？

「でも、初芝さんの方が僕より強いんですから、いざとなればあんな奴らすぐにでも」

「いえ、篠崎さんが居なければ無理でした。いくら強くても……怖いものは怖いんですよ……？」

「……すみません、無神経でしたね」

　そうだよな。いくら強くなっても怖いものは怖いよな。僕も小学校の頃、ホラー映画とか見たら夜トイレ行けなくなってたもん。居ないと分かってても……。

「いえ……そうです！　それよりも気分転換に映画に行きましょう。当然、私の奢りですよっ？」

　初芝さんが暗くなった雰囲気を戻すために、普段通りのテンションでそう言ってくる。……いや、天然かもしれんが。

「あはは、はい行きましょう」

　僕たちはそう言い、映画館へと移動する。

「篠崎さんは何が見たいですか？」

「初芝さんが決めてください」

「ダメです。これは私から、篠崎さんへのお礼なんですから」

　そう言えばそうだった……。僕は初芝さんの方をチラ見して、その視線がどこに向かっているかを確かめる。その視線の先には、純愛学園ドラマの作品があった。ふむ、あれだな……。

「では、あのラブコメの奴で」

「あ、はいそうですか……」

　あれ？　初芝さんの反応がおかしい……？　僕はテクテクと歩く初芝さんの視線を再びちゃんと確かめる。

　そこにあったのを見た時、僕は固まった。何故なら初芝さんが見ていたのはラブコメ作品の横の、ゴリッゴリのファンタジー作品だったからだ。

　魔王に攫われたお姫様を救う勇者の物語……。初芝さん、すみません。まさかそっちだとは思いませんよ……。

「篠崎さん、行きましょう！」

　初芝さん、元気だなぁ。