第25話三角チョ〇パイ~

 ふむ、普通だな……。


 僕は自分が選んだ映画を初芝さんの隣で一緒に見ていた。映画の感想は今言った通りだ。


 転校生に恋する主人公の女子高生。しかしその転校生は実は重い病気を患っていた。だが色々あって付き合うこととなる。そして物語は終盤に進んでいく。


 転校生が治療のためにアメリカに行くとのことだ。しかしその成功率は低いらしく、主人公と転校生は別れることとなる。


 そして醸し出されるめちゃくちゃ良い雰囲気。絶対この後こいつらめちゃくちゃ長いキスとかするよ。


 そこでふと初芝の方を見ると、顔を手で覆い指の隙間からこっそりと見ていた。何この子小学生?


 あ、目が合った。僕は慌てて目を逸らす。僕のために映画を奢ってもらってるのに、山場のシーンで目を離すなんてさすがにやっちゃだめだろう。


 …………うん、すごい初芝さんが見てくるんだけど? どう言うこと? そんな疑問を抱きながら、映画は終了した。


 結末はこうだ。転校生がアメリカに発ち2年が過ぎた頃、リハビリを果たした転校生と主人公が再会して終了。


 てっきり亡くなるもんと思ってたからこの展開は予想外だったな。ただ、それよりも初芝さんからの視線が怖いんだけど。助けてエフィー!



「主人よ、あのムードじゃぞ? 何故キスをせんかったのじゃ?」



 いや普通しないでしょ!? お礼で映画見せてもらってるのになんてことを!?



「篠崎さん、面白かったですね! 私もう泣きそうでした!」


「そうですね。まさか転校生の病気の原因が、昔幼い頃主人公の命を助けたせいだった展開は衝撃でした」


「あとあと、主人公と転校生の父親同士が昔からの知り合いだった事も驚きですっ! もしかしたら私たちもそんな事……なんて、あるわけないですよね」


「あはは、もしそうなら運命ですね。でも、仮にそうならすごいと思いますよ」



 映画の話は案外盛り上がり、僕たちは目的地である駅に着いてもしばらくの間、初芝さんと話し込んでいた。



「それでは篠崎さん、またどこか別の迷宮で会えると良いですね!」


「はい。初芝さんともまたご縁があれば」



 初芝さんはそれを聞き、笑顔を浮かべて手を振りながら駅へと向かう。…………ん? なんか忘れてるような…………傘ぁぁぁぁぁ!!!!!


 いや今日の出来事全て、何の意味も無くなるとこだったよ! 僕は急いで初芝さんを追いかけた。



「あれ、どうしたんですか篠崎さん?」


「あの、傘、忘れてました……」


「傘……あぁ! そう言えばそうでしたねぇ。すっかり忘れてました〜」



 初芝さんが両手をポンと叩き、下げていたバッグの中から傘を取り出す。



「すみません、僕も忘れてしまっていて……本当に良かったです」


「あはは〜、私こそすみません……」



 そう言う初芝さんの表情は若干曇り気味だった。やはり別れたのに迷惑を余計にかけたのが行けなかったのだろう。



「それじゃあ、また今度会えると信じて!」


「はい。初芝さんも気をつけて帰ってくださいね」



 今度こそ僕は初芝さんと別れ、自宅へと帰ろうとして、ちょっとした寄り道をすることにした。



「主人よ、どこにいくつもりじゃ?」


「ちょっとそこまでね」



 エフィーにそう言って僕は昼過ぎにも寄ったマッ〇に着き、そこで三角チョ〇パイを三つ購入する。



「あ、主人、これはもしや……?」


「ん? ちゃんとエフィーのリクエスト通りだろ? あの場じゃ買えなかったからな。二つはエフィーの分だぞ。あ、食べるのは家に着いてからだぞ」



 それを聞き、エフィーが口元を綻ばせ、最高の笑顔を浮かべて僕に擦り寄ってくる。なんか小動物みたいだな……。


 まぁ、別にパイも冷えるほど家も遠いわけでは無いし大丈夫だろ。それにエフィー、地味に猫舌だしちょうど良いかもな。


 僕たちはそう考えながら、無事自宅へと辿り着いた。



サクッ!


「むふぅ……うまいのじゃ!」



 エフィーが頬にチョコを付け、笑いながら叫んだ。

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