第153話

 ルーはリビングのソファーに二人を案内した。そこに腰掛けながら、ショウがニヤニヤした顔をケータに向けた。


「ケータ、随分ご立派なハーレム築いてんな!」


 はあ?コイツいきなり何言ってんのよ!ハ…ハーレムなんて、そんな卑猥な…


 こんなのケータだって、絶対反応に困るハズ。あんニャロ、ケータ困らせて楽しもーってか!ホント相変わらず嫌なヤツ…


「羨ましいか?」


 と思ったのに…アレ?ケータの反応がなんか普通。特に気にした様子もなく、冷静な感じでショウに応えた。


「お前、なんて言うか…強くなったな」


 ケータの反応に、ショウも少し驚いた顔をしてる。うーん何だろ、肝が据わったというか何というか…


「そうか?全く勝てる気がしないから、そんな自覚は無かったな」


 あん?ケータの返事が少し引っかかった。何だか急に失礼なコト言われた気がする。気のせいかしら?


「…だな、俺も全く勝てる気がしない。そういう意味なら羨ましくないかもしれん」


「だろ?」


 勝てるとか勝てないとか、コレ一体誰の話?何だか非常ひじょーにムカムカしてきたんだけど?


 私はケータの肩をポンと叩いた。


「一体誰のことを」

「言ってるのかしら?」


 見るとアリスも同じようにショウの肩を叩いてる。


「さ…さあ、誰のことだろ?」


 ケータもショウも身体を強張らせたまま、私たちに振り向きもしない。お互い見合ったまま答えた声は何故か異様に震えていた。


   ~~~


「で、こんな朝から何の用だよ?」


 ケータがやっと、二人に訪問の目的を確認した。


「あ、そうでした」


 アリスが思い出したように「パン」と両手を叩く。


「一緒に辺境を制圧しに参りましょう」


 アリスがまるで「ピクニックに行きましょう」くらいのノリで軽く言った。


「え…今、制圧って言った?」


 ちょっと聞き間違えたのかもしれない。だって余りにも態度と台詞が合ってない。


「はい」


 アリスはニッコリ笑って肯定した。やっぱり聞き間違いではなかったらしい…


「それは、私たちだけで…という意味ですか?」


 ルーが急にそんな事を言い出した。いや、さすがにそれは無いでしょ…


「ルーさんは何か察していらっしゃるようですね」


 アリスが驚いたような表情をルーに向けた。


「ええ、そうです。女王より、最大戦力による一点突破、少数精鋭での電撃作戦の指示が出ました」


「自分で上申しといて、よく言う」


 ショウがボソッと呟く。どうやら発案者はアリス本人らしい。


 てか、ちょっと待って!


「え、何で私たちだけで?」


「時間…ね」


 突っ掛かるようにアリスに詰め寄ったら、サトコが分かったような顔で呟いた。


「ルーが言ってたじゃない、きっと敵の総戦力だって。女王も同じ結論に至ったのね」


「そのとおりです」


 アリスが私たちの顔をクルリと見回した。


「無駄に時間を与えて兵力を増強されては意味がありません。転移の門には辺境は登録されていませんし、となると…」


「カリュー…」


 ルーが即座に答えた。そうか、カリューだ。瞬間移動を除けば、おそらくファーラスで最速の移動手段のハズ。それで一気に攻め込もうって訳だ。


 私は判断に困ってケータを見た。気付くと、サトコとルーもケータを見ていた。


「分かった、行こう」


 ケータは少し考えたあと、アリスとショウの方に顔を向けて力強く頷いた。


「元々そのために呼ばれたんだ。これをサッサと片付けたら、晴れて自由の身だ!」


「そうね」


 私も大きく頷くと、サトコとルーに目線を向けた。


「きっちりちゃんと終わらせて、お邪魔虫の排除に専念しなくちゃ!」


「それはコッチのセリフよ(です)!」


 サトコとルーが揃って私に突っ掛かってきた。来るなら来い!全部返り討ちにしてやるんだから!


「当主殿から伝言がある」


 ショウが呆れたように私たちを見ながら、ゆっくり口を開いた。


「ご馳走を用意しておくから、晩ご飯までに帰って来いだとよ」


 私たち4人はお互い顔を見合わせてキョトンとすると、揃えたように「ハハッ」と笑った。


 ファナさんらしい激励だ。ご期待に応えて、時間厳守でいきますか!

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