第151話
「またしてもお前かよ、眼鏡のおんなぁあ!」
バラスは怨みがましくサトコを睨みつけた。それから懐から1枚の赤いプレートを取り出す。
「どうせこのままじゃ、俺はお終いだ。だったら全部まとめて道連れにしてやる!」
バラスは「ヒャハハ」と高笑いすると、愛刀を自分の首に当てた。
「先にあの世で待ってるぜ」
「見るな!」
アインザームが咄嗟にハルカとサトコを抱き寄せた。同時に結界内が真っ赤な鮮血に染まっていく。
そのとき、バラスの元から一条の赤い光が天に伸びていき、天空に魔法陣を描き出した。
「あの術式はっっ」
シルフが空を見上げながら、大きな声を出した。
「
天空の魔法陣は最初のひとつを中心に、まるで螺旋を描くように次々と増殖していく。この場所を中心として、眼前に広がる戦場からシシーオの領地全域にまで広がっていった。
「
「巨大爆炎弾を無数に降らす、広域破壊魔法よ!」
サトコのオウム返しに、シルフが即座に答えた。
「え、アレ全部!?」
サトコが空を見上げて絶句する。
そのとき最初の魔法陣を皮切りに、巨大爆炎弾が螺旋状に形成され始めた。
何処にも逃げ場がない…
全員の共通認識として、絶望感が支配する。
その瞬間、
ハルカのなかで、何かの種が勢いよく弾けた……に違いない、きっと!
「シルフ!」
「はいよっ!」
ハルカの掛け声とともに、シルフが一条の光と化してかき消えた。
同時にハルカの感覚世界に、フ◯ーダムやジャ◯ティスのようなコンソールが浮かび上がる。
ハルカがその画面に映し出される赤い点を螺旋状になぞっていくと「ピンピン」とロックオン表示が増えていく。
「間に合えーー!!」
ハルカが声を張り上げた。
その直後、上空の爆炎弾が爆竹のように螺旋状に爆発していった。捕縛結界に覆われた爆炎弾は、地上に降下することなく、全てその場で結界と相討ちする結果になった。
~~~
事の一部始終をただ見上げていることしか出来なかったアインザームとハイラインが、我に返ってハルカを見た。
「今の…ハニーがやったのか?」
アインザームが驚いた声を出した。
「あ、いやー…まあ、その…」
ハルカは目線を逸らして、あからさまに慌てた。顔を横に向けて口笛を奏でるが明らかに鳴ってない。
「まるで、大戦の英雄だな」
ハイラインがボソリと呟いた。それから白装束姿のハルカをマジマジと見つめる。
「そうか、お前たちは…」
そこでハイラインが「フッ」と笑った。
「なんだ、ハイライン?何か知ってるのか?」
「何でもない。お前もたまには過去の資料に目を通してみるんだな」
「バカを言うな。俺にそんな時間があるハズがないだろう。ハニーたちとの時間がなくなってしまう」
「そうだったな」
アインザームの予想通りの答えに、ハイラインは表情を変えることなく頷いた。
「さあ、お前たちはもう行け。じきにここも騒がしくなる。あまり目立ちたくはないのだろう?」
「あ、うん」
ハイラインの言葉にハルカは頷いた。なんか色々バレた気がするけど、気のせいだと思いたい。
「ハニーたち、また逢えるか?」
「会いたくはないわね」
そんなハルカの応えに、アインザームは不思議と納得がいった。
「そうだな。今度は俺から逢いにいってやろう。楽しみにしていろ!」
「いやだから会いたくないっていってるでしょ!」
ハルカの拒絶をアインザームは笑顔で嬉しそうに受け止めるのだった。
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