第十一章 妹⁉︎
第130話
数日後、ショウから王宮に内緒で王都の観光をしないかとチャットで誘いがあった。ちょっと胡散臭い感じもするけど、そこまでショウを疑いたくない。それにやっぱり、王都には興味がある。
「どうする?」
ボクは同じようにスマホを見ていたハルカとサトコに確認してみた。
「私はやっぱり、一度は行ってみたい気がする」
ハルカが少し控えめな言い方をしてくるが、興味アリアリな瞳の輝きが全く隠せていない。
「ケータくんの心配も分かるけど、たぶん純粋なお誘いだと思うよ」
サトコがボクの心の内を理解した上で返事してくれた。その言葉が欲しかった!
「そうだな」
ボクは力強く頷いた。
「よし、じゃあ行くか」
そのときルーが少し躊躇いがちにボクの顔を見た。
「あの、私はどうしましょうか?」
「え、ルー来ないのか?」
思わず慌てた声が出た。
「あ、ごめん。ルーの都合も聞かないで、勝手に行く計算に数えてた…」
「いえ、行きます!絶対行きます!」
ルーが身を乗り出すように声を張り上げた。
「そうか、良かった」
そこでボクが代表で、ショウのチャットに返信を送ることにした。
『分かった、行く』
飾り気のない返事。男のチャットなんて、こんなもんだ。するとすぐに「ピコン」と返信がきた。
『OK、着いたら連絡くれ』
簡単に言ってくれる。
以前購入した地図帳によると、「王都」は「オイーヌ・ネッコ領」と「オウマ領」の南側、三点を三角で結んだ頂点のあたりに位置している。
ここから王都までは、瞬間移動のないボクらには本来何日もかかる距離だ。だけどボクらには力強い味方がいる。完全にカリューありきの会話であった。
それから出かける準備を始める。とはいえ、必要な物は全てスマホの中にある。ルーの小荷物をハルカが預かる程度で、大した時間もかからず完了した。
それでは、初王都へ向かうとしますか!
~~~
ボクたちの空の旅は、だいたい1時間ほどのモノだった。その間に一度『城壁の東側にある、8番ゲートについたら連絡してくれ』と、ショウからチャットが入った。
どうやら空の上でも通信に支障はないようだ。
指示のあった8番ゲートは、軍用門であった。王宮の騎士たちが警備として配置されている。変に警戒されても嫌なので少し遠巻きの位置で『着いたぞ』とメッセージを入れた。
それから少し待ったころ、城壁の通用口から2人組が出てくるのが分かった。その2人組に気付いた騎士たちが、慌てたように整列しながら敬礼をする。
多分ボクらの待ち人はあのふたりだ。騎士たちは、きっと何も知らされていなかったのだろう。少し気の毒に思えた。
「よお、待ってたぜ」
「皆さん、ようこそおいでくださいました」
ショウとアリスがボクらを出迎えてくれた。しかしアリスは、いつもこんなに出歩いて大丈夫なんだろうか?仮にも一国の王女が自由すぎやしないか?
まあ、どーでもいいか。ボクらが気にすることじゃないな。
そしてボクらは「コイツら何者だ?」的な視線を受けながら通用口を抜けた。
「わあ!」
ハルカが両手を広げて感嘆の声をもらした。空から見てて予想はしていたが、その場に立つとさらに実感する。シシーオ領も大きかったが、絢爛豪華という点では霞んでしまう。
石造りの街が大きく広がり、人々の喧騒が響き渡っている。ここは軍用門であるため、おそらく街の中心からは外れているだろうが、それでも活気付いている。騎士目当ての飲食店や飲み屋などが所狭しと並んでいた。
しかしそれよりもボクらの目を奪ったのは、目の前に真っ直ぐ伸びる一本の街道だった。おそらく軍用路なのだろう。王宮まで一直線に伸びているこの風景は、まさに壮観だった。
途中から小高い丘を登るような坂道になり、その先に「某ランド」のお城を彷彿とさせるような王宮の姿がそこにあった。
「どうだ?」
ショウがボクの横に立ち、こちらに顔を向ける。
「すげーな」
ボクは感嘆の溜め息まじりに、やっとこさひと言を絞り出した。
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