第107話
「アハッ。アハハハハ」
突然笑いだしたサトコに、私とルーは「ギョッ」となった。
「あの女…ポッと出のくせにウザいわね」
サトコはトーンの低い声でボソッと呟きながら自分のスマホを操作した。瞬時にカリューがこの場に出現する。
こ、これはまさか…、私は生唾をゴクリと飲んだ。
「いい、カリュー？アナタに命じるわ。ケータくんを護りなさい。あの女が良からぬコトを仕掛けたら燃やしてしまっても構わないから…」
サトコの瞳から、一切の光が消え失せてしまっている。もう間違いない、闇サトコが再臨なされた…
「本当に良いのだな？」
カリューがサトコに念を押す。
「ええ、構わないわ。あんな害虫、いない方が世界のためよ」
「サ…サトコ、それはダメよ！」
「そうです、いくらなんでもやり過ぎです！」
私とルーが慌ててサトコに詰め寄る。
「あんな女、この世に百害あって一利なしよ！」
まるで深淵のような瞳を向けられて、私とルーの心臓が縮み上がった。
「アナタたちも、赦せるが訳ないでしょう？」
サトコは私とルーの頬に手を伸ばして、そっと触れた。サトコが触れているのは確かに頬なのに、まるで心臓を鷲掴みにされてるように苦しくなる。
「だ…だけど、燃やすのはダメ…」
私はやっとの思いで声を絞り出した。
「もういいわ」
サトコは私たちから手を離すと、カリューを睨みつけた。
「カリュー、いつまでそうしてるの？早く行きなさい！」
「了解した」
サトコに叱責され、カリューは器用に口でドアノブを回すと外に飛び出した。
「カリュー、やめてっ！」
私は玄関から飛び出すと、カリューの背中に必死に叫んだ。カリューは一度コチラに振り向きゆっくり頷くと、そのまま飛び去って行った。
分かってくれてるんだ。私は肩の力が抜けて、思わず「アハ」と笑みが零れた。
カリューは大丈夫。だったら私のやるコトは一つ、サトコを鎮めることだけだ。
それから急いで玄関に入ると、目の前に映った光景に呆気にとられてしまった。
まるで風に包まれるように、サトコが空中に横たわっていた。
「サトコさんには、ちょっと眠ってもらいました」
私の視線を受けて、ルーが可愛く「テヘッ」と笑った。私は右手で目を覆うと天を仰いだ。
私の二人の
～～～
サトコをベッドで寝かすと、彼女が目を覚ますまで待つことにした。もうすぐ夕飯時なので、ルーが準備を始める。
私はソファで、不貞腐れて寝そべっていた。女の子がはしたないとか言われそうだけど、別にいいや。
そのまま目を閉じて思い返す。
ケータの告白を受けてから、一週間も経ってない。
確かにベルさんは魅力的な女性だけど、それでもこんなに急な心変わりなんて、やっぱりどうしても信じられない。
この家で暮らし始めて１ヶ月も経ってないけど、濃厚な時間を過ごしたと思う。日本で積み重ねた時間もそうだ。見た目の魅力なんかに、簡単に負けるような薄っぺらなモノじゃなかったハズだ！
私は、ケータと、自分のやってきた
そこでパッと目を見開いた。頭の上に、ルーの立ち姿があった。
「いつもの感じに戻りましたね。私も、私たちの時間がそんな薄っぺらなモノだったなんて、信じてませんよ」
「…アンタ、ホントに怖いね」
私は寝そべったままルーを見上げて「クスッ」と笑った。この子、本当に読み取る力が凄い。ファナさんが一目置いてるのも分かる。
このまま私たちの膠着状態が続けば、数年後にはファナさんの鶴の一声で、ケータとルーが夫婦になる未来が容易に想像出来る。
それに比べればベルさんなんて、オッパイがデカいだけのただの美人だ。こんなトコで負けてるようじゃ、その上の
私は、ガバッと上体を起こした。
「サトコが起きたら、乗り込むわよ！」
「当然です。あの
ルーの瞳がメラメラと燃え上がっていた。
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