第44話 番外編 2
「ああ、そうでした!」
アリスは「パン」と手を叩いた。
「以前から打診のあった『キレーナレイク』の魔物の件です」
「……どういう意味、ですか?」
ファナは目を細めた。
「討伐のお手伝いをさせてください」
アリスが事も無げに言った。
「…失礼ですが、いくら『
「6家の者にはいずれ話そうと思っていましたが、ショウは『聖騎士』なのです」
「せ、聖騎士…?まさか……」
ファナは絶句した。
「はい…、禁忌を犯しました…」
「い、いえ、責めてはおりません。必要な状況だと理解しております」
顔を伏せるアリスにファナは慌てて取り繕った。
「ただ…」
「何か、ありましたか?」
ファナが言いにくそうにしているので、アリスが促した。
「つい昨日のことで報告はまだなのですが、討伐が完了したのです」
「ほ、本当ですか?」
「以前は全く歯が立たなかったと聞いていたが?」
ショウが訝しそうな目を向けた。
「もちろんそうでしたが、援軍の期待も望めなかったので、何度も試行錯誤して、傾向と対策を練り、このほどやっと念願が叶ったのです」
「そ、そうなのですね」
アリスがあからさまにションボリした。
「あ、あの、マズかったでしょうか?」
ファナは困惑した。
「あ、いえ!リース領のことを考えれば、大変喜ばしいことです!……なのですけど…」
「けど?」
「ショウは転生時は剣の素人でしたので、この二日間、私が稽古をつけていました。ですが既に追いつかれてしまい、私では教えることがなくなってしまったのです」
「たった二日で、姫さまに?」
「はい!」
不思議とアリスは自慢げで嬉しそうだった。
「だから俺が、実戦を経験したいと頼んだんだ」
「ここの魔物は追撃してこないと聞いていたので、万が一のときでも逃げ切れると思って…」
アリスの残念そうな顔にファナは苦笑いした。
「それは、申し訳ないことをしてしまいましたね」
「あ、いえ!決してそういう訳では…」
アリスがあたふたした。
「当主殿、あまりアリスをイジメないでくれ」
ショウがアリスの横に立ち、アリスの頭をポンと叩いた。それに伴い、アリスの顔が耳まで真っ赤になった。
おやおや。ファナはニヤニヤしながらふたりを眺めていた。
「俺から一つ聞きたいことがあるんだが、構わないか?」
「ああ、私で分かることなら」
ファナは頷いた。
「火竜のことについてだ」
「火竜…?」
「ああ、行方とか噂とか何でもいい。情報があったら教えてほしい」
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