第3話

 ボクはスマホの画面を確認した。カメラマークのアイコンがひとつ表示されている。


「それがあなた方の『スキル』になります。転生者の皆さまに与えられた特殊な能力でございます」


 ボクたちは互いのスマホを見せ合う。


 春日翔のアイコンは青地に白い剣と盾、アイコンの下部に黄色い星が3個並んでいた。


 春香のアイコンは青地に白いワンピースのようなドレス、同じように星が3個並んでいた。


 真中聡子のアイコンは赤地にトランプみたいな赤いハートマークのカードが3枚、重なっているような表示になっていた。


 ボクのアイコンは灰地に黒いカメラ、右下に上矢印と下矢印が並んでいた。


 春日翔と春香のアイコンの星は、スペース的にこれ以上並ばない。三ツ星が最高と仮定するなら、結構な当たりの可能性もありそうだ。


 ボクと真中聡子のアイコンは、なんだか微妙な気がする。特にボクのなんて、コレただのカメラモードじゃなかろうか。


「それではこれから、あなた方のスキルの確認をさせていただきます」


 女性の声を合図に、茶色の制服に身を包んだ3人の老人男性が部屋に入ってきた。


「まずはそちらの男性から」


 女性に指名された春日翔は、一度ボクたちの方に顔を向けてから、無言で指示に従った。


 老人たちは春日翔のスマホの覗き込むと「おお!」と騒めいた。


「アイコンのタップをお願いします」


「分かりました」


 春日翔は女性の指示に素直に従う。すると春日翔のスマホから眩い光が溢れ出し部屋中を包み込む。


 光が収まると、春日翔は白銀に輝く剣と盾を装着していた。


「間違いない。聖騎士さまの降臨じゃ」


 老人たちは拝むように春日翔の姿を見つめていた。


「お名前を教えていただけますか?」


 女性は春日翔に名前を尋ねた。それで初めて気が付いた。ボクたちの誰も、まだ名前すら聞かれていなかったことに…


「…春日翔です」


「それではショウ。そこの入り口の横で待っていてください」


 春日翔は言われるままに従った。


「それでは次は、そこのあなた」


 女性は春香を指し示した。


「恵太…」


 春香は不安そうにボクを見る。


「大丈夫。今は従うしかないよ」


 ボクは春香の頭を撫でながら頷いた。


「分かった」


 春香は女性の元に進んでいった。


 春香のスマホを確認した老人たちは、ザワザワと騒めく。やはり三ツ星はかなりのレアモノのようだ。


「お願いします」


 女性にアイコンのタップを促され、春香はその指示に従う。すると春日翔の時と同じように眩い光が溢れ出した。


 光が収まると、春香は襟元と袖口、スカートの裾に金糸の刺繍が施された真っ白なローブ姿に変身していた。


「本当に純白の聖女さまじゃ。生きているうちにお目にかかれるとは…」


 老人たちの興奮から察するに、かなりのレアモノなのだろう。


「お名前を教えてください」


「新島春香です」


「それではハルカ、あちらでお待ちください」


 春香も女性の指示に従う。


「それでは、次は…」


 女性がボクたちの顔を交互に見てくる。


 もうレアモノは出尽くした。残り物のボクたちのスキルがどう評価されるのか、正直不安で一杯であった。

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