結婚という夢

桃口 優/再起を目指す作家

一話 「結婚という夢」

 今日はあなたの誕生日。

 朝の六時。

 静けさと朝の光りが部屋を満たしている。 

 それに似合わず、部屋は折り紙で華やかに飾り付けされていて、色とりどりのバルーンも浮かんでいる。

 それらは、昨日あなたが寝た後で用意したサプライズだ。

 私は静かに身なりを整える。

 私はいつもあなたより早くに起きるようにしている。

 あなたが起きたときに退屈しないようにするためだ。

 あなたの寝顔を見ながら、あなたとのことを思い出した。

 数年前に、あなたと恋をして、結婚をした。

 お互いにすぐに情熱的に惹かれあった。

 私は小さな頃から結婚することに憧れていた。早く結婚したいと思っていた。

 私にとって結婚とは、好きな人とこれから先もずっと一緒にいられることを意味していた。それは単純に幸せなことだと思っていた。

 つまり、結婚することは私の子どもの頃からの夢だった。

 でも実際に結婚してみると、自分の考えの幼さを思い知らされた。

 私は結婚に甘い夢を見ていたのだ。

 愛し合う二人がいれば、それだけで幸せになれると思っていた。

 実際私は幸せだった。でもそれは夢に夢見ていただけだった。

 私は自分のことばかりで、相手のことを考えていなかったのだ。言葉のまま好きだとしか考えていなかったのだ。もちろん、愛する気持ちに偽りはない。

 ただ、私は相手を理解し思いやる努力をしていなかったのだ。その部分が欠落していたのだ。

 今まで違う生活をしてきた二人が一緒に暮らすわけだから、問題が出てきて当たり前だ。でも、私はそれに目を向けることはしなかった。

 好きだから、愛してるから大丈夫と軽く考えていた。

 問題がうまく解決していたのは、全てあなたが我慢したり、変わってくれていたからなのに気づけなかった。

 結婚における幸せは一人でなるものではなく、二人で作り上げていくものだったのだ。そのためには相手を思う心が必要だ。

 たくさんたくさんあなたと話し合いをしてやっとそのことに気づいた。

 気づくまでかなりの時間がかかった。

 辛抱強く待ってくれていたあなたには感謝の言葉でいっぱいだ。

 私は結婚という言葉だけの甘い夢からさめた。

 それまであなたに無理をさせ、たくさん傷つけた。

 それでもあなたは私のことを見捨てず、ずっとそばにいてくれた。

 そのことから、この人は何があっても手放してはいけない人だとわかることもできた。

 そして、私はまた夢を見る。

 私の今の夢は、あなたが私といることで幸せだと思ってくれることだ。

 これからは、あなたを何よりも一番に考えるようにする。

 あなたのことを本当の意味で大切にする。

 あなたのことをいっぱい考え、あなたが幸せだと思えるように行動する。

 もちろん、あなたともよく話し合う。

 そして、一時の幸せではなく、ずっと幸せにする。

 誰かを幸せにすることは難しいと思う。だって、人は自分を幸せにすることでさえなかなかできないのだから。結婚という二人で作り上げていく幸せもまだ見つかってもいない。

 それでも、私は生涯あなたを幸せにすると誓う。

 たとえ自分の大切なものを捨てなければいけなくても、私は迷わない。他の人にどう思われようと、あなたを守り支える。

 この夢だけは、何があっても誰がきても譲ることはもうできない。

 だって、私は前よりもずっとあなたを愛しているのだから。


 もうすぐあなたが起きる時間だ。 

 どんな反応するかなあ?

 とにかくたくさんお祝いしようと心が弾むのだった。

 

 

 

 

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