トールとタイムスリップ? 10年前のスックラ
ベットで仰向けになり天井を見つめるトール。
「タイムスリップか。ない話ではないとは聞いていたが……」
彼が覚えているのは、スコティ学園の地下路での戦い。
新たに友となった男 エドワードの正体はテロリストだった。
彼の最後の攻撃。 自爆に巻き込まれた……そこまでは覚えているのだが目を覚ますと……
「よりによって10年前のスックラに戻ってくるなんてな」
タイムスリップ
膨大な魔力に衝撃が加わる事によって起きる現象とは言われている。
魔法の極意とされる時間干渉系。
魔力によって時間そのものを塗り替える。
ならば、時間を超越して過去に戻ることも可能のはず……世の研究者たちは、そう主張する者が多い。
しかし、その一方で時間を巻き戻す魔法の再現実験や検証実験に苦心を重ねている。
「しかし、この頃の俺は確か……」とトールは思い出していく。
父親の死。重症を負った魔王。 それにより、停滞した魔王軍の侵攻。
「スックラ軍の剣術指南役に就任するまで1年間の武者修行の旅。ソリット流剣術をより対魔族に合わせるため、冒険者になったわけだ」
今、トールが存在している時間軸。
SSSランクの冒険者として実績を残し、スックラに登城して3日ほど……
記憶との齟齬があって、他者から奇妙な行動に見られることでも誤魔化せる。
「う~ん、あの時代に戻るための手段か。現行では――――ない」
この後、スックラという国がどうなって行くのかトールは知っている。
現在の女王 レナ・デ・スックラ(先代)は好戦派だ。
もちろん、それはレナ女王が好戦的人物というわけではなく、ちゃんとした理由があるのだ。
亜人連合との戦いに勝利した魔王軍は、次にスックラを狙い進軍してくる。
すると、スックラに接触する隣国たちは魔王軍への防波堤として膨大な金額をスックラに支援をする事になる。 特に2つの大国……マディソンとシユウ国は膨大な軍事支援がすでに始まっている。
「……いや、俺は知っているはずだ。レナ女王が戦場で倒れた後に権力を得た王弟が何をしたのか? 無血開城の悲劇を――――」
あれは地獄だった。 魔族の隷属国家となったスックラは――――
「よし」とトールはベットかた飛び降りた。
もしも、未来に戻る事を最優先させるなら、スックラを出て冒険者に戻る事が正しい。
世界中に存在しているダンジョンと化している古代遺跡には、近代科学を遥かに凌駕した遺物が残っている。
まだ未発見なやつが、それはもう……ごろごろと……
それを発掘して研究者に渡せば、この世界の技術力を大幅に向上させる事もあり得ない話ではない。
「だが、それは――――俺は、もう二度と見捨てない」
彼は覚悟を決める。 この世界を――――歴史を塗り変えさせる事を――――
「そのために、まず俺がすべきことは――――この国に精鋭を作る事だ」
トールは着替えて部屋を出る。 目指すは鍛錬場。
現在は深夜にも関わらず、そこには野太い声の男たちがいた。
遅番を終え、夜勤を入れ替わったばかりの兵士たちが暇な時間に鍛錬を行っている。
彼等の前に姿を現したトールは――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます