爆風。 目覚めた場所は
起爆スイッチを手にしたエドは確信していた
(絶対に間に合わない必勝の距離。もらったぞ、トール・ソリット!)
だが、彼は知らない。
トールが持つ魔剣シルグ……時空をねじ曲げて斬るという効果。
極めれば斬るという動きを省略して、その剣を握るだけで斬撃は飛ばせるということを――――
次の瞬間には鮮血。
切断されたエドの腕。もう爆破のための起爆装置は使えない。
しかし、それでもエドは勝利の確信を緩めない。
(かかったな! わざわざ起爆装置を見せたのは右腕を誘うため。つまり――――)
「起爆装置は2つある!」
エドは左腕に隠していた起爆装置を握った。
「――――っ!」とトールは焦りを見せる。
間合いを切り裂く魔剣シルグ。
他者から見れば、万能と思われる魔剣であるが、実際に使えば制限の多さに驚くだろう。
トール・ソリットの技量をもってこそ魔剣シルグは使いこなせる。
ゆえに――――意表を突かれ、万全ではなく、不意打ちを受けると魔剣シルグの能力は発揮されない。
(間に合わない!) とトールは理解する。 その後の動きが速かった。
前衛を放棄したとは言え、前線に待機していたグリア。 即座に彼女の近くまで移動すると、襟を掴み後方へ投げ飛ばした。
後方にはレナ。 彼女はトールの考えを理解していた。
すでに結界を展開。 投げ飛ばされたグリアを保護。 そして――――爆破を直前に飛び込んでくるトールを――――
「だが、トール……やはり、祖国の発展にとって最大の障害は君だった。ここで君を始末できるのは私の人生で最高の――――」
エドは最後まで声に出せない。
赤き視界が染まり、
外界から伝わる感覚が、
神経が遮断されていく感覚。
そして、自分の存在が消えていく最中に芽生えた感情は誇りと達成感だった。
爆破。
その衝撃は、レナの結界に向かって飛び込んでいるトールの背中に追いつき――――
彼の肉体を爆破による暴力へ飲み込んでいった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(体の感覚がある? 痛みは――――)
「???」とトールは体を起こした。
「体に痛みも疲労もない? それに朝になっている?」
キョロキョロと周囲を見渡すも、ここがどこだかわからない。
少なくとも地下路ではない。それどころか、スコティ学園の中とは思えない場所だ。
(……なんだ? 気温も湿度も違う。まるで別の国? 爆破に飲み込まれて気を失っている間に国外に連れ出されたのか? ――――それにしては)
奇妙だった。
周囲に人の気配もない。 それに捕縛されている様子もない。
(しかし――――なんだ? 昔、来たことある様な…… 懐かしいような……)
奇妙な感覚に囚われる。 思い出そうとしても思い出せないもどかしさ。
(何か精神汚染系の攻撃を受けているのか? いや、そんな様子はない)
トールは情報を集めるために移動を開始する。
すると、人の気配。 武装した2人組が近づいてくる。
こちらへの敵意は――――ない。
声をかけても問題はない。そう判断したトールは、兵士たちに近づくと――――
「これは、トール先生。今日は訓練の日でしたか」
「先生? 訓練? えっと……」と困惑。
「それではまた」と去っていく兵士。
その背後を見ながらトールは気づいた。 ――――いや、正確には今まで気づかないふりをしていた。
「馬鹿な……あの装備はスックラ正規兵のもの。だとしたら――――」
トールは視線を空に向ける。 そこには、現在には残っていない建築物。
「スックラ本城。それじゃ、ここは10年前のスックラ……いやいや、そんなバカな」
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