エド対トール その意外な結末は

 『魔剣 アップシュタント』


 それは間合いを無視した斬撃を放つ。


 しかし、本来の持ち主であるシルグの死。魂を持って、その効果は上書きされた。

 

 斬撃を放つのではなく空間そのものを切り裂き、狙った対象の防御も防具も無視する。


 では……そんな魔剣シルグの後継剣と呼ぶ『グラオザーム』とは?


 トールは知らない。かつて、魔王と化したマクマとの戦い。


 魔王化した人間を打ち倒した魔剣の力は、各国々が注目した。

 

 高い知性を有した人間ほど信じたがらないものなのだ。


 魔王を倒したのがトールという個人の力だと言う事は――――


 だから、こう考える。 きっと、トールが有した魔剣にヒミツがあるのだ!


 我々が知覚できない未知の神秘の力があるに違いない。


「探せ! 魔王を滅ぼす力を」という合言葉のように科学者たちの間に走り抜けて行ったのは当然の事。


 さまざまな再現実験が行われ、人工的な魔剣が競うように開発された。


 ならば『人工的魔剣 グラオザーム』――――


 それをエドが手にしてた経緯は単純。 テロ対象の研究所を襲った時に手に入れた物の1つ。


 そして、その効果は――――


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


 エドが放つ1振り。


 しかし、トールの目には斬撃が4つに見えた。


(同時!? 全て同時に襲い掛かってくる――――頭を狙った振り下ろし。右肩狙いの袈裟斬り、左肩狙いの袈裟斬り。そして喉の狙った刺突!?)


『人工的魔剣 グラオザーム』の効果。 


 持ち主が想定した複数の斬撃が同時に存在して敵対象を襲う。

 

 簡単に言えば、


 次元と空間を捻じ曲げて四撃の同時攻撃が可能となるのだ。


 そんな魔技とも言える技を向けられたトールは――――あっさりと回避した。


「え? 避けた? そんなバカな」とエドは魔剣とトールを確認するように何度も見比べた。


「どう……どうやって避けたのですか、トールさん?」


 エドは顔が引き攣るのを抑えながら聞く。しかし――――


「どうやって? ――――いや、普通に」


 まるで当たり前のように思っていて、それを改めて聞かれた事自体を動揺しているように見える。


「ならば、もう一度――――魔剣 グラオザーム」


 4種の斬撃が空間を捻じ曲げて顕現していく。しかし、トールはそれを、


「なっ! 弾いて防御!? どうやって?」


 トールが防御した方法は単純だった。 


 向かってくる斬撃。


 いくら同時に放たれても、トールの体に到達するまで時間がある。


 エドが1振りで4撃を放つ速度に対して――――トールはエドの4倍の速度で動いて、攻撃を弾いたのだ。


「やはり、規格外……もっと早く貴方を排除する方法を優先するべきでした」


「……エド、もう止めよう。 まだお前は誰かを殺めたわけじゃない。だから、まだ戻れる」


「――――」と無言になるエド。 


 説得。


 トールは可能性を信じてエドの返答を待つ。 だが、その答えは――――


「ダメです。もう引き返せません。単純な技量で貴方に勝てなくても――――方法がある」


 エドが浮かべたのは邪悪な笑み。 そして、その手には爆弾のスイッチ。


 少し前に地下路を爆破したアレと全く同種の物。それに気づいたトールは


「やめろ!」とエドへ飛び掛かっていく。 


 しかし、次の瞬間――――しかしは白い閃光に包まれた。








 

 




 


 

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