第7話
カケル君が帰ったあとはお客さんがしばらく来なかったので、今日は少し早めに閉店することにして、夕飯を食べるためにも現実世界に戻った。
機械を外してリビングに行くと、母さんがテレビを観ながらお茶を飲んでいた。
もう20時は過ぎているので、母さんは夕飯を食べ終わって少し休憩しているのだろう。
「あら、今日は終わるの早かったのねー」
「まあね」
「ご飯にする?今日はねー、オムライス作ったの」
「お、いいね。楽しみや」
「歩の分があるとは一言も言ってないわよ?」
「何でや?!」
「いつもご飯が用意されるのが当たり前だと思わないで!」
「ぐっ!何も言い返せん!」
「ふふっ。うそー、あるわよ」
「あざす!」
「支度するから少し待っててね」
「ほーい」
母さんはさっそく卵をといてフライパンで焼き上げ、作ってあったチキンライスに卵をかぶせた。
「はい。どうぞー」
「ありがとー。いただきます」
「召し上がれー」
どれどれ、今日のオムライスの出来はいかがかな。
「ん、うまい」
「ありがとー」
いやー、仕事したあとの夕飯はうまいですなー。
「最近何か楽しそうね」
「ん?」
そうか?あんま変わんないような。
「少し明るくなった気がするー」
「そうかな?」
「んー、なんとなくねー」
「へー」
けど、そうかもなー。
最近はあっちの世界で占いと言うよりも相談を聞くようになって、お礼を言われるのが多くなったからかもしれない。
やっぱり「ありがとう」と言われるのは嬉しい。
それに前の会社ではお礼どころが嫌われてたしな。その反動かもしれん。
食事が終わったので、自分の部屋に戻ってベットに横たわった。
何となく会社時代のことを思い出した。
僕の勤めていた会社はゴリゴリの営業会社だった。
入社した理由はそこしか内定がもらえなかったからだ。
最初の3ヶ月は少しやる気があったが、営業成績は悪くなる一方だった。
なので上司からは「やる気ないなら辞めろ」と言われ、同期からは「給料泥棒じゃん」と笑われた。
そんな感じで3年間は働いていたが、営業成績は上がらずに周りからはお荷物扱いされて、精神的にキツくて辞めてしまった。
そもそも僕が営業なんて無理だろ。
だって、まともに人と目を合わせて話せないし、空気読めないし、気が遣えること言えないし。
まあ、何やっても続かない僕にしては頑張ったほうか。
「そんなことどうでもいいか、寝よ」
−仮想空間「星空」−
カケル君がきてから1ヶ月くらい経った日のこと。
「またフラれました!!」
と、カケル君がなぜか大声かつ満面の笑みで言ってきた。
ついに精神がやられてしまったか。
どんまい。
「そうでしたか、結果はダメでしたがこれで吹っ切れたのではないでしょうか?」
「いやいや!まだです!」
いやいや!こっちがいやいやだよ!
「申し上げ難いのですが、もう無理ではないでしょうか?」
「まだ諦められません!まだ話には続きがあるんです!」
「と言いますと?」
「実は現実世界で一緒に遊ぶことになったんです!」
え?うそ?
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