第5話
−仮想空間「星空」−
「なんかスッキリしました!!」
いや、僕はほとんど喋ってないけどね。
どうやら女子高生は一方的に愚痴をはいたら悩みを解決したようだ。
「最後に手相を見せてもらってもよろしいでしょうか?」
一応、占い師なので占いをしとこう。
「あ、はい!」
「ふむふむ」
「どうですか?」
正直、わからん!
「彼氏さんとは上手くいくでしょう」
「本当ですか!?やったー!」
よくわからんがこれでいいだろ。
「ありがとうございました!」
「いえいえ、また何かあればいらして下さい」
女子高生はお代を払った後、お辞儀して帰っていった。
先程の女子高生がいなくなるとまたいつもの静寂が戻った。
「こんなのでお金をもらって良いのか」
占いも市販の本を少し読んだ程度の知識なので、いつかクレームがくるのではないだろうかとヒヤヒヤしている。
近くにあったペットボトルのお茶を飲みながらそんなことを考えていた。
「けどすごいよなー。本当に飲んだ気分になるな」
ここは仮想世界の中なのだが、特殊な機械で五感が共有されている。ただし、仮想世界で何か飲食をしたり叩かれたりしても感覚はあるが、特に現実世界で影響があるわけではない。
カランコロン。
「あのー」
今度は少しぽっちゃり体型の学生らしき男の子が入ってきた。
「いらっしゃいませ。どうぞおかけください」
「あ、ありがとうございます」
男の子は俯きながらお礼を言って席に座った。
「私、アユムと申します。本日は何かお困りのことでもございますか?」
「はい、最近好きな人ができまして」
また恋愛相談かよ!
「告白の練習をできればと思ってます」
ここを何だと思ってんだよ!
「お話してくださりありがとうございます。ただ、こちらは占いがメインになりますので、私では力不足になってしまう可能性がございます」
「あ、それは知ってます」
うぜえええええ。
「では、なぜこちらでそのご相談をされたのですか?」
「ここの学校でもまた友達ができてなくて」
「なるほど。ちなみにお客様は高校生でしょうか?」
いつから高校は恋愛もする場所になったんだ。
あ。昔からか。
「はい」
「承知致しました。そうしましたら、今回は特別に告白練習にお付き合いしましょう」
まあ、これも何かの縁だろう。
「あ、ありがとうございます!」
先程までとうってかわって明るい声で笑顔になってくれた。
やっぱ、子供のこういう顔みれると嬉しいな。
「ちなみに、その意中の人はどんな人なのですか?」
これは完全に僕の興味である。
「あ、写真あります」
カバンの中からスマホを取り出してその女の子の写真を見せてくれた。
「あ」
その画面に映っていたのは、先ほど彼氏について相談しに来てくれた女子高生だった。
どんまい。
「え?どうしたんですか?」
こんな偶然もあるんだな。
「あ、いえ」
まあ、たしかまだ高校自体が1つかなかったんだよな。
「とりあえず、フラれた時の練習もしましょうか」
「なんでですか!?」
何故なら君の好きな人にはもう彼氏がいるからだよ。とは言えず。
「・・・」
「何で沈黙なんですか!?体型の問題ですか!ブタって言いたいんですか?!」
「い、いえ!そういう訳ではございません!」
そんなこと言ってねえよ!
「お綺麗な方だったのでもしかしたら彼氏さんがいるかもしれませんよ?」
「なーんだ。それなら大丈夫ですよ」
どこがだよ!
その後、結局30分くらい告白の練習をしたが、おそらく失敗するだろう。
どんまい。
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