第3話

ここ数年で少子化問題は改善されつつも、働く人の人数は未だ不足している状態だ。そのため、国は働き手を増やすためにも、ひきこもりなどの社会に馴染めない人を社会復帰させる政策を大々的に掲げている。


「何これ?」

「いやいや、僕が知りたいんだけど」

母さんに渡した封筒の中身を今日の昼食後に確認したのだが、正直よくわかっていない。

内容を要約すると「ひきこもりの人たちを仮想世界で支援を行い、現実世界で自立してもらう」という感じだった。

「あー!もしかして!」

どうやら母さんが思い出したらしい。

「で、何これ?」

「ほら、歩って今無職で全然外にも出てないじゃない?」

「まあ、間違ってはいないけど」

すげえ、いうやん。

「でね、この間、歩の通帳を見たのよ」

「おい!」

「そしたら、もう残高が全然ないから、そろそろ働いた方がいいのかなーと思ったのよ」

「まあ、反論はできんが」

そう。自分は無欲な方だから貯金は結構あったのだが、この3年間、バイトもせずに家にひきこもってたから、もう底をつきそうになっていた。

「そしたらね。ちょうど、職場で同じ境遇のお母さんから教えてもらったんだけど、政府主導のひきこもり支援があってね、その支援制度が抽選だったから試しに応募してみたの!」

「なんで相談なしに応募したのさ?!」

「だって、相談したら止めるでしょ?それに歩は強制しないと動かない人間なんだからこれくらいしないと、ね?」

さすが僕の母親だ。僕のことをよくわかってらっしゃる。

「そしたら、偶然当たったと?」

「そう!まあ、詳しいことはわからないんだけど、専用の機械を使って自宅でできるらしいからやってみたらどうかしら?」

詳しいことはわかっとけよ!

「いやいや、そんな簡単に言われても。それに費用結構かかるんじゃない?」

「実はね!まだこの制度は実験段階だから、費用は国が持ってくれるの!」

「そうなんだ」

「ね!とりあえず、正式な申し込み期限まではまだあるから少しだから考えてみて!」

「まあ、とりあえず考えてみるよ」

「よろしく!じゃあ、母さん寝るねー。おやすみー」

「おやすみー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る