第2話 

ひきこもりの人数は緩やかではあるが毎年増えている。

原因は、リストラ、いじめ、成績の低下、失恋などさまざまだ。


自分の部屋に戻ると、スマートフォンでゲーム内の日課を1時間かけてすることがルーティンになっている。

「今日もドロップしなかった」

特に面白いわけではないが、何もすることがないので惰性で続けている。

このルーティンが終わると特にすることがなくなるので、録画したバラエティ番組を観たり、漫画を読んだりして1日を終えることがほとんどだ。


14時になったので、本日2回目の食事をするためにリビングへ向かった。

「あー、そうだった」

先ほど届いた僕宛の封筒は中身を見ないでリビングのテーブルに置いたままだった。

「先にカップラーメン作るか」

差出人は公的機関からだった。おそらく税金とかの支払い関係だろう。

なので、すぐに開封しようとは思わなかった。


18時30分。母さんが仕事から帰ってきた。

「ただいまー」

母さんはスーパーの買い物袋をリビングに置いてから洗面所に手を洗いに行った。

「おかえりー」

リビングに戻ってきた母さんはさっそく夕飯の準備に入った。

「ねえねえ、母さん」

「なにー?」

「なんか政府からこんなのが届いてたんだが知ってる?」

買ってきた野菜をきりながら、特にこっちを見ずに会話を続けた。

「んー?ご飯の後ででいいー?」

「おけー」

聞きたくてしょうがないのだが、やはり今の自分は家族の中の立ち位置が下なので、とりあえず従うことにした。


食事を終えたあと、テーブルを綺麗にして、母さんと一緒にお茶を飲みながら社会問題を扱っているバラエティ番組を観ていた。今週は「ブラック企業」をテーマにした内容だった。

「ブラックだ、ホワイトだ、最近は厳しいのねー」

「母さんの若い時だって厳しかったでしょ?」

「ん?」

「だから、母さんの若い時だって厳しかったでしょ?」

「ん?」

「ん?だから!母さんのわか」

「今も若いわよ??」

いやいやいや。

と、声には出せないのが現状だ。

「まあ、そうねー。母さんの若い時も結構厳しかったわねー」

若くないって認めるんかい!

「ただ、今の歩は色が無いんだから関係ないわよね」

「それ、無職いじり?!」

「ふふ」

母さんはニコニコと笑っている。

「こわ!」


僕は、3年前に勤めていた会社で同僚と上手くコミュニケーションがとれず、人間関係が悪くなって辞めてしまった。

ただ、親にそのことを告げたら「ゆっくり休めば良い」とだけ言われたのが、僕にとって救いだった。


番組もそろそろ終わりに近づいてきた。

「そういえば、帰ってきた時に何か言ってなかったけ?」

ようやく切り出してくれた。

「そうそう、なんか国からこんなのがきてたんだけど」

そう言って、テーブルの端に置いてた封筒を母さんに渡した。

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