第1話
数十年以上前に大きく問題視されていたのは、大人のひきこもりだった。
つまり、なんらかの事情で働くことができずに家から出ないまま、30代、40代になってしまった人たちのことだ。
しかし、時は進み、今は子供の数も少しずつ増えて、年齢に関係なくひきこもりが問題になっている。
「眠い」
朝10時に起きて誰もいないリビングでこの言葉を発するのも3年目になる。
ご飯が入っている茶碗にはラップがされており、その上には「今日のお昼代です」と母さんからのメモと一緒に千円札が置いてあった。
「そろそろ転職活動しないとなー」
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。母さんが通販で買った物が届いたのだろうか。
母さんはネットを使って生活用品を買うのだが、時間指定を特にしないので、平日ずっと家にいる僕が受け取ることが多い。
「宅配便でーす」
外に出てみると厚着をした宅配業者がトラックのエンジン音をBGMに待っていた。
「こちらにサインをお願い致しまーす」
「あ、ペンないです」
ペンやハンコを取り出すのがめんどくさいので、いつも宅配が来ても持ってこない。
「あ、こちらでお願いしまーす」
宅配業者がペンを貸してくれた。
「あざす」
特に心のこもってないお礼を言ってサインをした。
「ありがとうございましたー」
終始お互いに目を合わせることなく流れ作業が終わった。
「あっ」
宅配物を受け取ったあと家の中に戻ったのだが、ポストの中を確認するのを忘れたことに気づいた。
まあ、いいか。と思ったが、以前から父さんに宅配便を受け取ったらポストを確認するようにとしつこく言われていたのを思い出した。
もちろん無視してもかまわないのだが、仕事もしておらずただ家にいるだけの僕はその指示に従わないと肩身が狭くなってしまうのだ。
「はあ」
ため息とともにポストを確認した。
「なんだこれ?」
ポストの中には春野歩宛の封筒があった。
つまり、僕宛の封筒ということだ
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