第40話 ロリ巨乳と膝枕

 パチパチパチッ


 静かな馬族の村に突如現れた豪邸。

 そのリビングでは、白く豪華な暖炉の中で薪が静かに燃えていた。


 暖炉の前に、男女のシルエットが映し出される。


 なんだろ、この匂い……。

 いい匂いだ……。

 懐かしい匂いがする。


 女の膝の上には、男の頭が乗っていた。

 仄かに香る柑橘系のいい匂いが、その男の鼻をくすぐる。


 そして男は目覚める・・

 そう……俺だ!


 先ほど、マリリンによる顔面パンチでノックダウンした俺は、何故か今……暖炉の前で女性に膝枕されていた。


 俺が目を開くと、そこには大きくて、柔らかそうな白い風船が二つ並んでいる。

 顔にのしかかる風船は柔らかく、まるで大きなマシュマロのようだった……。


「マシュマロ? いや、ヒヨリン? なんでヒヨリンが……?」


 温泉に浸かり、お肌が更にツヤツヤになった超絶ロリ美少女ヒヨリン。

 その顔がパイオツ越しに俺の目に映った。


 柔らかくも豊満な胸が俺の顔に覆い被さっている。


 ぷにょぷにょ……。

 

 顔を少し動かす度に、太ももとパイオツの柔らかさがダイレクトに頬に伝わっていく。


 うは……やわらけぇ。

 は! ここが天国か? 

 ってかヒヨリン超可愛い……。

 目、大きいなぁ……。

 なにこれ? 夢?


 突然過ぎて夢と現実の区別がつかない俺。


「ん、目が覚めた。シン……よく寝た。どこか痛くないか?」


 ヒヨリンは心配そうに、俺に問いかける。


 そういえば、なんで俺はヒヨリンに?

 ん!? まさか……。

 これは膝枕か!

 まじかよ俺!

 寝てる場合じゃねぇ!


 やっと現実に気がついた。


「うん、お蔭で大分いいみたいだ……ありがとうヒヨリン。」


 あぁ……最高だよ。

 今死んでも後悔はないかもしれん。


「ん、ならどく。早くご飯作って……。」


 そういうとヒヨリンは立ち上がり、シンは頭を地面に打ち、天国から地獄へ急降下した。



 しまったぁぁ!

 俺何いっちゃってんの!?

 馬鹿なの?

 何正直に話してんのさ! 俺!


 激しい後悔に駆られながらも、ヒヨリンが退いた事で頭が床に落ちる。


 ゴンっ!

 

「いて! ん? ところでなんで俺はヒヨリンに膝枕されてるんだ?」


 俺はよく思い出せないが、なんだかとても大事な事を忘れている気がした。

 ヒヨリンの膝枕という強烈なインパクトが、マリリンのヌードという絶対消したくない記憶に上書きされてしまったのだった。


「ん! そうだ! 飯を作ってたんだ! やべ、鍋こげてるかも!!」


 俺は料理の最中で、鍋に火を入れていたことを思い出し、キッチンに急いで戻る!

 そして厨房に入ると、そこにはエプロンを着た女性が料理を作っていた。


 残念。

 裸エプロンではない。


 マリリン?

 なんでマリリンが……。


 マリリンはせっかく俺が自分達の為に料理を作ってくれたのに、このまま焦がしたりかするのが勿体無く思った。

 そして、それは自分のせいであることもわかっている。

 だからこそ、俺の代わりに料理を仕上げていた。


 ちなみにヒヨリンは料理が全くできないため、俺を早く癒すという名目で膝枕をしてサボっていただけだった。

 マリリンは厨房に入ってきた俺と目が合うと、何事も無かったかのように自然な口調で告げる。


「あなたは休んでて、下準備してくれたおかげでもうすぐできるわ。」


 ん? 

 どう言う事だ?

 なんか許してくれてるっぽいぞ。

 ほんと、女はわからんな……。


 俺はとりあえず飯の心配がない事を悟り、マリリンに言われるがままリビングのテーブルに座ることにした。


 もしも俺が、ここでさっきのシャッターチャンスを思い出していたら、再度二人の間に亀裂が走っていたかもしれない。

 だが、幸いな事に俺にその記憶は失われていた。

 ヒヨリンが何かしたのかもしれない。


 マリリンも俺が無事な事に、内心かなりホッとしていた。

 そして次々と出来上がった料理をテーブルに運んでいく。

 それを見たヒヨリンも運ぶのを手伝いはじめた。


「ん、シンは座ってて。」


 ヒヨリンにそう言われ俺は、黙ってその姿を眺めていることにする。


 えぇなぁ……。

 こんな綺麗な女性達に食事を作ってもらえるなんて……。

 それを黙って眺める。

 こんな至福の光景がほかにあるだろうか……。


 実際には、その料理のほとんどを作ったのはシンであり、そもそもヒヨリンは運んでいるだけである。

 だがしかし、そんなことは俺には関係なかった。

 目の前に映る光景がたまらなく幸せ。

 そう、ブライアンの存在を忘れるくらいには……。


「できたわよ! 私が言うのもなんだけど、温かいうちに召し上がれ。まぁほとんどシンが作ったのを完成させただけだけどね。」


 マリリンはそう言い訳しながら言うと、俺は大きな声で「いただきます!」と言って食べ始めた。


「うまい! うまいよ!! 最高だ!」


 俺は久しぶりに食べるチキンやスープパスタに舌鼓を打つ。


「うまいニャ! なかなかイけるニャ!」


 いつのまにかアズは、椅子に二足歩行で立ちながら食事をしていた。


「おま! どこにいたんだよ。ちゃっかり飯の時だけ現れやがって……。」


「にゃあはやることがあって忙しいニャ、それより今は飯ニャ……。」


 アズはそれだけ言うと、ひたすら食事に夢中である。


 まさに【ねこまっしぐら】だ。


 ふと、俺は気づく。


「あれ? そういえばブライアンは?」


 いつもなら真っ先に「ウマ! ウマ!」と言いながら飯を貪るブライアンがいない。


 すると、ヒヨリンが答えた。


「ん、なんか顔面に馬の足跡つけて泣いて帰ってきた。多分今は上。」


「そ、そうか……。まぁ当たり前だな。気にしても仕方ない。どうせ腹減ったら降りてくるだろ。」


 そういうと、ブライアンの事は気にせずに食事を楽しむ。


 美味しくも幸せな食事を終えた俺は、一人で露天風呂に浸かりながら今後について妄想をして楽しんでいた。


「極楽やぁ~今だけはこの世界に来た事に感謝だな……。ふふふ、後3日だ! 後3日ある! その間に覗きイベントを完遂してやる! ふはは!」


 俺は露天風呂で一人高笑いをしている。

 そしてふと何かを思い出しそうになった。


「なんか忘れてる気がする……なんだっけ? 何か大切な事を……だめだ! 思い出せん! まぁ忘れるって事は大したことじゃないんだろう。いやぁお風呂最高! そしてこの残り湯には……ぐふふ。」


 俺は気持ち悪い笑みを浮かべている。

 あえて触れるのはよそう。そこに触れたらジャンルが変わりそうだ。


 お風呂で今日使った精神力を大分回復させた俺は、風呂から上がると体がポカポカしており、強烈な睡魔に襲われると、部屋に戻って直ぐに眠ってしまうのだった。

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