第23話 嫌な予感
「よし！じゃあ外に出るぞ！」
ゴゴゴ……。
広場の地面がエレベーターのように上がっていく。
「え？ 何？ 何したの？」
「おお……なんかわからねぇけど、すげぇな相棒。」
「……。」
「やめるニャ！！」
ヒヨリンは驚いてしゃがむと、どさくさに紛れてアズを抱きしめた。
アズは苦しそうだ。
「心配しなくていいよ、地面を地上に上げてるだけだから。」
「ほんとなんでもありね……。」
しばらくすると、上から光が見え始めた。
「もうすぐ出口だ。大丈夫だと思うけど森には危険な生き物が多いから注意してくれ。」
全員が地上に出ると、森の木々の隙間から朝日の光が漏れ、幻想的な景観が広がる。
「きれい……。」
ヒヨリンは、木々の青々した美しさに目を奪われながら呟いた。
その腕には、抱きかかえられたアズがいる。
「苦しいニャ……。」
アズの悲痛な声は誰にも届かなかった……。
「そうね、だけど今はそれどころじゃないわ。早く村を見つけないと。」
マリリンも森の美しさに目を奪われるも、今はそれどころではないと自分を戒める。
「まぁ焦っても仕方ないさ、とりあえず見てくるからここにいてくれ。ブライアン、すぐ戻るけど何かあったら頼んだぞ。」
「お？ 相棒どっかいくのか？ まぁ俺っちに任せておけバーロー？ お？ 何を任せるんだ？」
困惑しているブライアンを気にせずに、俺は空高くジャンプした。
村まで距離がありそうだったので、昨日よりも高い。
「えっと……昨日鬼族が歩いていたのはあそこだから、逆方向っと……。」
森の外に広がくステップ地帯。
かなり遠くの方まで見える。
うーん……地上が小さすぎてよくわからないな。
流石に小さな村を探すのは無理かな？
鬼族の進行していた場所と逆方向に目を凝らすも、はっきりとしたものは見えない。
だが、遠くから空に舞う煙を発見した。
「あれは……燃えているのか？ まさか！ 結構遠いぞ！ 急いで知らせなきゃ！」
俺は、急いで地上に落下する。
ドン！
「キャ！！」
「驚かせてすまない。ちょっと急いで確認したいことができた。かなり遠くの方だったけど、鬼族の進行方向と逆の方で、火が上がってるみたいなんだ。違うとは思うけど、一応早く確認した方がいいかもしれない！」
「え？ 嘘！ なんで？ どうして？ そんな……早すぎるわ！？」
マリリンは激しく動揺した。
「マリリン落ち着いて。ね？ まだ時間は経ってないからきっと違うよ？」
ヒヨリンは逆に冷静にマリリンを宥める。
「悪い！ 俺の言い方が悪かった。動揺させるつもりはなかったんだ。流石に昨日の今日で鬼族が報復に来るとは考えられないし、違う村かもしれない。だけど、違う村でも襲われているなら直ぐに助けに行かなきゃ。」
シンはマリリンを落ち着かせるように言った。
「とりあえず、急ぐ必要がある。ブライアン！ 直ぐに馬化してくれ。」
「おうよ！相棒！」
ブライアンはその場で馬化した。
今度はさっきまで冷静だったヒヨリンが動揺する。
「怖い……怖いよ。マリリーン……。」
「ヒヨリン、大丈夫よ。私がいるわ！ で？ シン、本当にこれに乗るの？」
マリリンが冷静を取り戻……してはないが、これ以上ヒヨリンを怖がらせないように気丈に振舞いながら詰め寄ってくる。
「ああ、悪い。本当は馬車でも用意したかったんだが時間がない。ブライアンはでかいから、３人くらいは乗れるはずだ。気持ちは痛いほどわかるが我慢してくれ。一刻を争うんだ。」
「……わかったわ。じゃあ急ぎましょう。」
そういうと３人はブライアンの背に乗った。
俺を先頭にマリリン、ヒヨリンの順で乗るが、マリリンとヒヨリンは手綱がないため、前の人にしがみつくしかない。
「みんな、恐ろしい程早いから振り落とされないように強く前の人に掴まってくれ！ 風に煽られるから顔もできるだけ伏せるんだぞ。」
一応、予め二人に警告をしておく。
「じゃあ行くぜ相棒！ マドンナちゃん！ 待ってろバーロー！」
そういうと、ブライアン猛スピードで森を駆け抜け始めるのだった。
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