第22話 鎮まれ! 息子よ!

「あなた……聞いていた通りいい人みたいね。安心したわ。」


 お? なんか感じ良くなったぞ?

 あ、そうか。

 さっきまでは警戒していたのか。


「ありがとう。いい人なんて言われたのは初めてだよ。それより俺からも一つ聞きたいんだけど、あそこでアズを抱いて寝てる子も、今回攫われていた子で間違いないかな?」


 俺は、さっきから気になっていたロリっ娘について聞いてみた。

 この美女も捨てがたいが、俺的にはロリっ娘の方がストライクである。


「そうよ。ヒヨリンっていって、私の妹みたいな子よ。血は繋がっていないけど家族だわ。」


 ヒヨリンね……。

 この世界では名前にリンをつけるのが流行ってるのか?

 ふむ、どうりで似てない訳だ。

 でも何で2人だけが攫われたんだ?


「まだ私達の事話してなかったわね、聞いてくれるかしら? できるなら手伝ってほしい事があるの。」


 マリリンは、村の事や攫われるまでに何があったかを詳細に話していった。


「なるほど。話してくれてありがとう。もちろん喜んで協力するよ。一緒に村の人を助けよう。それと、馬族は優しい種族みたいだから、きっと受け入れてくれると思う。まぁ、スズカさんにお願いしてみるさ。」


 話を聞いた俺は、優しくマリリンに語り掛け、助けることを申し出た。


 すると……。


「ありが……とう。あれ? ごめんね、なんか安心したら涙が……。」


 マリリンは、ヒヨリンが寝ている事もあり、張り詰めていた気持ちが緩み、涙がこぼれ始めた。


 あれ? 泣いてる……。

 こんな時どうしたら……?

 教えてくれ! ときメモ先生!


 とりあえず俺は、マリリンのそばに行くと優しく抱きしめた。


 だ、大丈夫だ!

 これであっているはずだ!


「辛かったね……もう大丈夫だよ。これからは俺達も力になる、もう一人で背負い込む事はないんだ。みんなで力を合わせればきっとうまくいくさ。」


 と、なんとなくそれっぽい事を言った俺であるが、内心は違う。


 めっちゃええ匂いやぁ……。

 なんか柔らかいし……。

 この世界で初めて安らぎを得たわ……。


が、本音だった。


「う、う、あぁーん!」


 そんな下心に気付かないマリリンは、俺から優しい言葉をかけられた事で完全にタガが外れてしまい、

大声で泣き崩れてしまう。


 やり過ぎたか?

 この状況はまずい。

 そこのロリっ娘に勘違いされてもおかしくねぇ!


 泣き止まないマリリンを抱きしめながら、俺は焦り始めた。

 泣き止むまで、泣かせてあげた方がきっといいに違いないが、この状態はまずかった。


 何がまずいって、マリリンの抱きしめる力がどんどん強くなり、お胸様の柔らかい感触が俺のリビドーを刺激しているのだ。

 今まで大人しかった息子が言う事を聞かずに暴走し始める。


 まさに、かっぱえびせん状態。


 そんな中、ふと誰かの視線を感じた。

 振り向くといつの間にかヒヨリンが目覚めており、じーーっと見つめている。


 終わった……。

 俺の顔から血の気が引いていく。


「あの……えっと。これは違うんです。」

 

 俺は動揺を隠せないまま、ヒヨリンに必死で謝罪と弁明した。

 だが意外なことに、ヒヨリンは人差し指を自分の口に当てて、シーーのポーズをとるとまた横になる。

 

 ヒヨリンは、マリリンが自分達の事を話し始めている声を聞いた時から、目が覚めていた。

 しかし、自分が起きると説明の邪魔になりそうだったので、寝たふりをし続けていたのである。


 そして自分がいると、マリリンは気を張って強がってしまうことを知っていた、今くらいは感情のままに泣かせてあげることが大事だと思ったのだ。


 一方俺は、色んな意味で縮み上がっていたのだが、特に責められる事もなく、見て見ぬふりをしてくれた事に安堵した。


 セーフ!!

 

 しばらくして、マリリンは落ち着きを取り戻すと、俺を優しく押しのける。


「ごめんなさい、情けないところを見せてしまったわね。ありがとう、お蔭で落ち着いたわ。でもああいうことをされると、勘違いするから今後は気を付けた方がいいわよ。」


「いや、ごめん。でも落ち着いてよかった。勘違いされるかもだけど、辛くなったら寄りかかっていいから。人は一人では生きられない。辛かったら助けるし、うれしかったら一緒に喜ぶ。それが人間ってやつだと思うよ、俺は。」


 ふ、決まった。


「不思議ね。あなたとは会ったばかりなのに、何だか昔から知っているような気がしてくるわ。でもそういうとこだぞ。ヒヨリンに色目使ったら許さないからね。」


 マリリンは笑顔で忠告するが、これは照れ隠しでもあった。


「わかった、努力はするよ。それより、今日は疲れただろ。ここは安全だから朝までゆっくり休むといい。朝になったらマリリン達の村に行こう。」


 そういうと俺は、創造魔法で広場に小屋を創造し、中にベッドと布団も用意した。


「ええ!? 今なにしたの? これがあなたの力なの?」


 マリリンはいきなり現れた小屋に驚く。


「これは俺の力の一つだよ。ちゃんと女性と男性で部屋を分けてあるから好きな方で休むといいよ。内側に鍵もあるから安心して。」


 俺はスケベだが紳士であった。

 スケベ紳士である。


「あなた……。一体何者なの? そういえばどうやって鬼族の軍勢から私達を救ったのかしら?」


 マリリンは自分達の事は話したけど、俺の事については何も知らないことに気付く。


「うーん、何者ねぇ? 俺も知りたいくらいだよ。まぁ、大事な物を探すために旅をしてる、旅人みたいなものかな?」


  俺、めっちゃかわいい嫁を探して旅してます。


とは口が裂けても言えない。


「そう、大事な物を探してるのね……。早く見つかるといいわね。」


 そういうとマリリンは寝ているヒヨリンを抱きかかえて、小屋の中に入ろうとする。

 ……が、入る前に俺に振り向き、憑き物が取れたような晴れやかな笑みを浮かべた。


「今日は本当にありがとう、おやすみなさい。」


 それだけ言うと、部屋の中に入っていく。

 その笑顔は初めて見せた素の笑顔であり、俺はこれにドキッとした。


 ツンツンしている美人がする笑顔のパワーやべぇ。   

 これがリアルツンデレか。

 ツンデレ万歳!


 マリリン達が部屋に入った事で自分の寝る部屋が決まった俺は、ブライアンを起こして自分達も寝ようとする。


 しかし地中に埋まっているブライアンは、いびきをかいていて全く起きる気配がない。


「おい! ブライアン起きろ! 寝るぞ! って寝てるか? まぁいいや、起きろ。」


 何度叫んでもブライアンは起きなかった。


「こんなに気持ちよさそうに寝てるし、無理に起こすこともないか。お疲れ、ブライアン」


 俺はブライアンを起こすのを諦めて、一人で部屋に入りベットに潜る。


 あー、疲れた。

 でもやばいな、めっちゃ可愛い子達やん。

 興奮して眠れないぞ


「こうしてやる……こうしてやる!!」


 俺は久しぶりに悶々とした気持ちになり、中々眠れない自分をゴッドハンドで慰めながら眠りにつくのだった……。


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