第14話 覚醒
辺りが急に草原になって驚いている俺は、空に浮かぶある物に気づく。
【365】
【364:23:59】
「ん? なんだありゃ……。あれ? 数字が減っていってる! 制限時間か? 今度はなんだよ!?つか出口無くなっちまった……。」
出口が消えたことに俺は焦る。
「焦らなくていいニャ、ここは初回限定のチュートリアルエリアだニャ。制限時間は365日ニャ」
ファッツ?
「チュートリアルって?」
「まず浮かんでる数字はチュートリアルの時間ニャ。あのタイマーが0になると、にゃあ達が入った大樹の穴の前に転送されるニャ。」
なぜか状況を詳しく知っているアズは、淡々と説明していく。
「よかった、出れるのか。」
「次にここではシンの力が解放されているニャ、身体能力も強化されて、精霊の力も使えるニャ。ここは広いから自由に力をぶっ放せるニャ。ここで必殺技とか編み出すニャ。」
ほぇ〜、なんか面白そう!
「つまり、ここは精神と時の部屋っつうわけか! ここから出る時には金髪のつんつん頭になってるわけだな!」
「ちょっと何言ってるかわからないニャ。ただ、注意が必要ニャ、力を使うには精神力を使うニャ。精神力無くなると死ぬニャ。」
「え? なんだって!?」
「精神力は目では見れないニャ。だからここで実際に使ってみて、自分の限界や精神力が切れるとどうなるか確認するニャ。」
「切れるとどうなるかって、死ぬんだろ? やだよ!」
「そうニャ、普通は死ぬニャ。だけど、ここはチュートリアル世界ニャ。ここでは死なないニャ、回復するまで動けなくなるだけニャ。」
それを聞いて俺は、ほっと胸を一撫でする。
「よかったぁ……。チュートリアル作った神様に感謝だぜ! それならここで、自分の能力と限界を把握しなくちゃだな。つか1年ってなげぇなおい!」
「そうにゃ、とにかく気長にやってみるニャ。」
さっそく俺は、草原を勢いよく駆け出す。
「うお! はえぇぇ! って、ぶ!!」
そして盛大にコケる。
「いててて、思いのほか早すぎてコントロールが難しいな……よしもういっちょ!」
再度、俺は駆け出した。
「イヤッホー! さいっこう! ビュンビュン行けるぜ! あら、よっと!」
今度は高くジャンプしたり、バク宙して自分の体を楽しむ。
「うわ! たっけぇ! つかこえぇぇ!」
なんとか無事に着地をするとまたそれを繰り返す。
俺が遊び始めてから1時間……。
「んー、大分慣れてきたぞ。いい感じだ! 腕力も確かめたいところだけど、まぁ殴るだけなら別にいっか。」
「大分馴染んできたみたいニャ、次に創造の力を試すニャ。」
「お、創造ね。創造ならもうお手のもんよ。見てな!すっげぇの出してやる。」
俺は両手を前に突き出し、叫んだ!
「いでよ! 聖剣エクスカリバー!!」
俺の両手の先に光が集まり、そして収束する。
だが現れたのは、ただの木刀だった……。
「木刀……? いやそんなはずはない! 俺がイメージしたのはもっとかっちょいいやつだ!」
俺は創造で現れた聖剣(仮)を思いっきり振り抜いてみる。
ブン!!
パキッ……。
「振っただけで折れただと……。」
「相性が悪いと、近くに素材がないと作れないニャ。相性がいいものは素材がなくても作れるニャ。シンの場合はバスケットボールなら作れると思うニャ。」
「バスケットボールを作るって……まぁいいや。どれ、ほいっと。」
ポンッ
俺の手の平にバスケットボールが現れる。
「ほら、簡単にできたニャ。」
「まじかよ、自然に出てきたわ。そういえばこれも精神力使うんだよね? なんも感じないんだけど。」
「シンは精神力が高いから、そのくらいじゃ全く減った内に入らないニャ。多分ニャけどバスケットボールなら全く減らないニャ。でも素材から作る場合はそれなりに消費するニャ。とりあえず、ここにある木と土と草で色々作ってみるニャ。」
アズにそう言われた俺は、とりあえず椅子・テーブル・ハンモック等を作り始めた。
今度は普通にイメージ通り作れた。
合計50回くらい創造の能力を試してみる。
すると……
「あれ? なんか目の奥が痛い……。偏頭痛みたいな感じだ。これが精神力が減る感じか?」
「そうニャ、まだまだいけるとは思うけど無理することはないニャ。それに精神力は時間経過で回復していくニャ、少し待てば戻るニャ。」
「そっか、まぁとりあえず今の自分の限界を確認することとするよ。」
「やる気満々だニャ! なら次は重力の力を試してみるニャ。使い方は対象をイメージして、空間を重くしたり、軽くしたりするニャ。」
「こんな感じかな? うお! 重!!」
俺は手に乗せたバスケットボールを重くするイメージをした。
「うまいニャ。今度は自分にも使ってみるニャ。」
俺は自分が月の上に立っている想像をして、ジャンプする。
ドピューー!!
「うおぉぉ! とまらねぇぇぇ! やべぇぇー!」
俺はロケットの様に上空にカッとんで行く。
身の危険を感じた俺は、今度は自分が重くなるイメージをした。
「ギャーー!! 死ぬ! 死ぬ!!」
どうやら重くし過ぎたようだ。
まだうまくコントロールができず、上空3000メートルから地上へ落下していく。
その様子は、まるで某野菜人が丸いカプセルにのって地球に落下する様であった。
「俺は鳥! 俺は鳥! とりぃぃぃ!」
俺は、必死に鳥がふわふわ飛んでいるイメージをすると、降下速度がゆっくりになっていく。
「ふう……死ぬかと思った。あれ? 死なないんだっけ?」
俺は、ふわっと地面に着地する。
「いや、凄いわこれ。とにかくここでは死なないらしいから、慣れるまでやるしかないな。」
バタ!
その時俺は、急な脱力感に襲われ、真正面にぶっ倒れた。
「あれ? なんか力が……入らない。」
「まだ精神力が回復してないのに、いきなり無理な力を使うからニャ……。」
「いや……アズがやれって言ったんじゃないか。」
「それが精神力の限界ニャ、ここで限界を何度か経験しておけば、もうちょっと精神力の上限も上がるから沢山倒れるといいニャ。」
「いや、そうすると時間無くなるんじゃ……。ここには精神力を回復させる飯等ないし……。」
「あるニャ。にゃあは出すことができるニャ、ここではニャアの力は制限なしニャ。なんか飲むニャ?」
マジかよ……。
なんだよ、そのチート……。
俺にもくれ。
「なんだ……それ……でも助かる。元気はつらつ……オロナインC……プロポリス入りな。」
「わかったニャ。飲むニャ。」
アズの前に、俺のイメージそのものの瓶が現れた。
そして、俺の口にそれをねじ込む。
「おぼっ!」
ごくごくごく
「プファー! 生き返った! あれ? あ……動く?まじか? 回復しすぎだろ!!」
「これで猛特訓できるニャ!!」
「ちょっと休ませてくれよ……。」
「時間は有限ニャ! さっさと立つニャ!」
こうして鬼教官による能力訓練が始まるのだった。
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