エピローグ 築き上げた温かいもの

 あの晩、俺たちの願いが通じたのか、可奈子さんは妊娠した。


 そして、俺が高校を卒業する春に元気な赤ちゃんを産んでくれた。


 可愛い女の子だ。


 名前は春奈はるなだ。


 可奈子さんに似て、将来はきっと美人さんになるだろう。


 今から、父親として心配だけど……


「可奈子さん、春奈の様子はどうかな?」


 仕事がひと段落した俺は、様子を伺う。


「ええ、ずっと笑っているわよ。ほら、見て」


「わっ、本当だ。可愛いね」


「でしょ?」


 可奈子さんは微笑む。


「ねえ、冬馬く……」


 と言いかけて、


「……あなた」


「へっ? あ、はい」


「うふふ、呼んでみたかったの♡」


「じゃ、じゃあ、俺も……可奈子」


「あなた……」


 俺たちは見つめ合うと、キスをした。


「だぁ~!」


「っと……春奈に見られちゃったね」


「うふふ、そうね」


「ねえ、可奈子さん」


「あら、もう呼び捨てしてくれないの?」


「も、もうちょっと、慣れるまで」


「じゃあ、私も、冬馬くんって呼ぶね。隙を見て、また『あなた♡』って言うから」


「す、末恐ろしいお嫁さんだよ……あのさ、俺たち結婚式がまだだったでしょ?」


「うん、そうね。私の出産とかで、バタバタしたから」


「だからさ、もう少し可奈子さんの体調が落ち着いたら、結婚式をしようよ」


「ええ、そうね……でも、もう私はあなただけの……お嫁さんよ?」


「そ、そうだね。無事に籍も入れたし。もう、他の誰にも触れさせはしないよ」


「とか言って、また浮気はダメだからね?」


「って、だから、浮気なんて1度もしてないって。俺には可奈子さんだけだから!」


「冗談よ……あっ」


「んっ?」


「春奈ちゃんが、私のおっぱいを飲みたそうにしているわ」


「な、何と……」


「うらやましい?」


「いやいや、そんな……俺はまた、夜にいただきます」


「エロ冬馬くん♡」


「そ、その呼び方はやめて」


 俺は小さい頃に家族を失った。


 けど今こうして、自分の手で温かい家庭を築くことが出来た。


 だから、とても誇らしいし、幸せだ。


「ちゅぱ、ちゅぱ」


「んっ、あっ……も、もう~、春奈ちゃんってば、嫌らしい吸い方ね。パパに似たのかしら♡」


「か、可奈子さん、勘弁してよ~!」







 (完)







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家政婦の美人お姉さんが俺だけの専属家政婦になってくれた。それってもう嫁ですよね。 三葉 空 @mitsuba_sora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ