第42話 メイドさん遊び③

「メイドさん、メイドさん」


「何ですか、ご主人様?」


「そろそろ、3時のおやつの時間ですよ」


「あら、いつの間に。せっせと働いていたら、時間が経つのはあっという間ね」


 可奈子さんは微笑む。


「何が食べたい?」


「あまり時間がかからなそうな……ホットケーキ」


「かしこまりました」


「俺も手伝って良い?」


「ううん、大丈夫。それに、冬馬くんは手伝わないで、ずっとそばで私にエッチなことをしているでしょ?」


「そんなことはしないよ。せいぜい、匂いを嗅ぐ程度で」


「エロ冬馬♡」


「笑顔で言わないで」


 仕方なく、俺はリビングのソファーに座って、キッチンで鼻歌交じりに料理をする可奈子さんを見守っていた。


「それにしても、可奈子さん。もうすっかり、メイドさんが板についているね」


「冬馬くんがいっぱい、私をいじめるから」


「どういうこと!?」


「調教したから」


「それもどうなの!?」


「しつけられちゃって……」


「犬じゃないんだから」


「愛するあなたのために尽くしたいからです♡」


「200点満点」


 とか言っている内に、ホットケーキが出来上がったようだ。


 お皿の上で、ふわふわ、もちもちの存在をアピールして来る。


「生クリームいる?」


「うん」


「じゃあ、かけるね。あ、文字を書いた方が良いかな?」


「いや、これは良いんじゃないかな?」


「そっか。では、失礼して……」


 可奈子さんは丁寧にホイップクリームでホットケーキをデコレーションする。


「メイプルシロップもいかが?」


「お願いします」


「とろとろとろ~♪」


「可奈子さん、すっかり乗り気だね」


「ごめんね、おばさんなのに」


「きれいなお姉さん、最高です」


「て、照れちゃう」


 そして、シロップを注ぎ終えた。


「あーん、する?」


「ああ、そうだね……じゃあ、お願いします」


「これくらいで良い?」


 可奈子さんはホットケーキを切り分ける。


「うん」


「はい、あーん♡」


「あーん……うん、美味しい」


「うふふ。あ、冬馬くん。ほっぺにクリームが付いちゃった」


「えっ、本当に? 悪いけど、取ってもらえる? そこにティッシュがあるから」


「必要ないよ」


 可奈子さんは指先で俺のほっぺに触れてクリームを取った。


 そして、指先を舐めた。


「あ、こら。はしたないメイドさんだな」


 ちゅぱ、ちゅぱ、と。


 可奈子さんは指を舐めた後、俺を上目遣いに見た。


「……ごめんなさい」


「その表情は反則だなぁ」


 改めてそばで見ると、このお姉さんメイドの可愛さは反則級だ。


「ねえ、何かして遊ぼうよ」


「何して遊ぶの?」


「えっと……あ、そういえば。プッキーがあるよ」


「……エッチ」


「まだ何も言ってないじゃん」


 俺はそそくさと、キッチンの戸棚からそれを持って来た。


「前にうちで合コンした時、道三郎と涼香さん、すごかったもんね」


「涼香さんが道三郎くんを食べちゃっていたけどね」


「あいつ、今はどうなんだろう。この前は、自分がひぃひぃ言わせているとか、自慢して来たけど」


「うふふ、そうなの。私の方は……いつも冬馬くんに、やられっぱなしだよ。だって、こんなにカッコよくて、上手だから」


「別に普通だと思うけど……あっ、でも繭美が上手だって言ってくれたっけ……」


「繭美ちゃんとそんな話をしたの?」


「あ、いや……ごめんなさい」


「良いよ。ちゃんと、断ってくれたんでしょ?」


「うん。もう余裕で断ったから」


「本当に? ちょっとはグラついたでしょ?」


「……ギャルってすごいからさ」


「浮気トーマ」


「可奈子さんが誘導尋問するから」


「というか、そのプッキーちゃんはどうするの?」


「あっ……くわえて?」


 俺は一本取り出すと、可奈子さんに差し出す。


「んっ……」


 何か、餌付けしているみたいでドキドキした。


 ていうか、マジで可愛いな、このお姉さんメイド。


 見惚れていると、可奈子さんがジッと俺を見つめて来た。


 俺もプッキーの端を咥えた。


 そして、お互いにゆっくりと進んで行く。


 この焦れる感じが、余計にドキドキを煽る。


 段々と、可奈子さんの良い匂いが近付いて来た。


 普通なら、カップルだしこのままキスしちゃうけど。


 俺はあえて、へし折った。


「えっ……?」


 可奈子さんは目を丸くした。


「……どうしたの? そんな風に残念そうな顔をして」


 俺は少し挑発するように言った。


「……いじわる冬馬」


 可奈子さんは少し悔しそうに目元を歪める。


「俺、気付いちゃった。年上のお姉さんをいじめるのって、楽しいかも」


「冬馬くん、何か性格変わってない? 前はもっと優しかったのに」


「あ、ごめん。でも、可奈子さんが可愛すぎるから、ついおかしな方向にエンジンがかかっちゃって」


「嘘だよ。冬馬くんは、いつでも私に優しいよ」


「可奈子さん……メイドさんのお仕事、疲れたでしょ? 今度は、俺からご褒美をあげても良いかな?」


「何をくれるの?」


「スペシャルマッサージだよ」


「マッサージ……どうせ、嫌らしいことするんでしょ?」


「しない、しない。健全なマッサージだよ」


「本当かな~? まあ、良いけど」


 可奈子さんは俺にジト目を向けた。


「じゃあ、この長座布団の上に寝転がって」


「うつ伏せに?」


「そうそう」


「もしかして、スカートをめくるつもりかな? 嫌らしい冬馬くん」


「あはは、そこまでの変態じゃないって……ちっ、バレたか」


「こら、聞こえているぞ?」


「ごめんなさい」


 そして、俺は可奈子さんにスペシャルマッサージをしてあげた。







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