第32話 海にはないエロスが……ここにはある!

「んっ、あっ……ミ、ミッチー……気持ち……良いよっ」


「りょ、涼香さん……これくらいで大丈夫?」


「うん……でも、もう少し強くして……あっ、そう……そこそこそこぉ~……き、効くぅ~……」


 俺は自分の手で、愛しの彼女を満足させられて、嬉しかった。


「はぁ~、ミッチーのマッサージ気持ち良かったわ~」


 パラソルとマットをレンタルし、涼香さんに頼まれた腰痛マッサージを施していた。


「けど、あたしもすっかりおばちゃんね~」


「いや、そんなことないよ。涼香さんは最高に素敵なお姉さん彼女だから」


「あら、嬉しい。ミッチーも素敵よ」


 涼香さんはうつ伏せの体勢から、体を起こす。


 振り向きざまに、俺の唇にキスをした。


 少しだけ、濃厚に絡む。


 やっぱり、テクすげぇ~……


「あっ!」


「えっ?」


「こ、腰が……」


「りょ、涼香さん、ほら寝て」


「面目ない……」




      ◇




 市民プールといえど、その造りは決してショボくはない。


『冬馬はジャッジマンとして、下に居てちょうだい』


 繭美に言われて、俺は下のプールでスタンバっている。


 まずは、繭美から始めるようだ。


「いっくよ~!」


 元気な声が響き渡る。


 そして、滑り始めた。


「うっひゃ~!」


 ご機嫌な声が響き渡る。


 けど、こっちは気が気じゃない。


 だって、本当にポロリしたら……


 周りの人たちにとっても、目に毒だろ。


 色々な意味で。


「どいた、どいた~!」


 バシャッ!


 繭美はフィニッシュを決めた。


「……ぷはっ」


 そして、水面から上がる。


「あっ……ちょっとだけ、ズレちゃった♡」


 けど、大事な所は見えていなかった。


「もう少し緩めれば良かったなぁ。そうすれば、冬馬の目に焼き付けさせたのに♡」


「バ、バカなこと言ってんじゃないよ」


「まあ、安心してよ。そんな本気のバトルじゃないからさ。ちょっとした、ドキドキを味わうためのエッセンス。だから、可奈子ちゃんだって、そこら辺の加減は分かっているよ」


「そうかな……」


 俺は何だか、不安になって来た。


 繭美とは違って、可奈子さんは何だか緊張した様子だ。


 そして、とうとう滑り始める。


可奈子さんは特に大きな声を上げる訳でもなく。


ただ流れに身を任せている。


 その表情は、ずっと硬い。


 何か、ちょっと嫌な予感が……


 バシャッ!


 可奈子さんもフィニッシュを決めた。


「ぷはっ」


 水面から顔を上げる。


「可奈子ちゃん、おつかれ~」


 繭美が軽い調子で声を掛ける。


「で、おっぱいは無事……えっ?」


「へっ?」


 瞬間、俺の脳みそは高速でフル回転した。


 なぜなら、可奈子さんの特大のおっぱいを守るべき装甲は、剥がれ落ちていたから。


 やはり、あの程度の薄っぺらな防御では足りないのだ。


 いや、そんなことを言っている場合じゃない。


 ほんのちょっとだけ、網膜にその光景を焼き付け。


 俺はすかさず可奈子さんの下に駆け寄った。


 そして、とっさにおっぱいを掴む……のではなく、ギリギリ触れない程度で隠した。


「あっ、あっ……」


 ぷかぷかと、可奈子さんのバストを隠していた水着が浮かんでいる。


「繭美、タオル持って来て!」


「あ、う、うん」


 繭美は素直に頷いて、慌ててプールから上がった。


「可奈子さん、俺の背中にくっついて」


 俺は彼女に背中を向けつつ言う。


「う、うん……」


 可奈子さんは俺に抱き付く。


 不安なのだろう、体が震えていた。


 だが、それ以上に俺の心臓が震えそうだ。


 なぜなら……可奈子さんの生のおっぱいが背中に当たっているから。


 いや、もうエッチした仲だから、とっくにその感触は味わっているけど。


 このシチュにおいて、それはあまりにも背徳的で……って、言っている場合か!


 俺はなるべく心を無にする。


 可奈子さんの脱げた水着をしかと確保する。


 今の俺は盾だ。


 可奈子さんというお姫様を守る盾となれ!


 盾の勇者になるんだ!


 そして……


「可奈子さん、大丈夫」


「はぁ、はぁ……うん」


 なるべく人がいない所に彼女を連れて来た。


「お~い、タオル持って来たよ~!」


 繭美が駆けて来た。


「感謝したまえ」


「いや、そもそもお前のせいだろうが」


「だってさ~」


「冬馬くん、繭美ちゃんを怒らないであげて。ノッた私も悪いんだから」


「可奈子さん……は、はい、タオル」


「ありがとう」


 可奈子さんはタオルを上半身に巻く。


 その下で、ゴソゴソと動かし、水着を着直した。


「……ふぅ、もう大丈夫」


 パサッとタオルを落とす。


「あっ、か、可奈子さん」


「えっ?」


「その、まだちょっとズレてる……」


 俺は手で顔を隠しながら言う。


「ひゃッ!?」


「ま、繭美、直してあげて」


「イエッサー♪」


 繭美がササッと直す。


「は、恥ずかしい……」


「全くだよ、こんなに罪なおっぱいしちゃって。Jカップとか、オバケおっぱいだよ」


「うぅ……」


「おい、自分の方が小さいからって、嫉妬するなよ」


「あたしのHカップだって十分に大きいでしょうが!」


「ごめん、ごめん。怒るなって」


「フーフー!」


 俺は牙を剥く繭美をなだめる。


「おーい、みんなぁ~。何してんの?」


 涼香さんと道三郎がやって来た。


「いや~、ちょっと可奈子ちゃんがポロリを……」


「えっ、ポロリ!? 何それ、詳しく!」


「い、良いから! あっ、もうお昼の時間ですよ~!」


「じゃあ、食べながら詳しく聞きましょう」


「賛成で~す♪」


「繭美は当事者、というか元凶だろうが」


「え~ん、冬馬がイジめるよ~!」


「お前が可奈子さんをイジめたんだ。ちゃんと謝れ」


「分かったよ……ごめんね、可奈子ちゃん」


「ううん、良いのよ」


「でも、楽しかったっしょ?」


「も、もう、ウォータースライダーはこりごりかな」


 可奈子さんは苦笑する。


「じゃあ、午後はまったりしようよ」


 俺は可奈子さんの手に触れて言う。


「うん……そうしたい」


 そして、ニコッと優しく俺に微笑みかけてくれた。







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