第31話 夏と言えばやっぱり……水着!

「可奈子ちゃん、ごめんなさい」


 繭美は俺との一件を正直に話して詫びた。


 俺も一緒になって謝った。


 可奈子さんは笑顔で許してくれた。


「その代わり、条件があります」


「えっ、何かな?」


「夏はまだまだ続くでしょ? 楽しいイベントがいっぱいある訳だけど」


「あ、そうだね」


「まだ、大事なイベントをこなしていないでしょ?」


 可奈子さんはウィンクをする。


「大事な……あっ」


 俺はハッと思い出す。


「繭美ちゃん。明日、一緒に水着を買いに行きましょう」


「イエーイ!」


「もう、去年のサイズは小さくて……」


「か、可奈子さん……」



「あたしも、あたしも小さくなった~!」


「そうか、成長期だな」


「何よ、その温度差は~!」




      ◇




 夏と言えば、やっぱり海……だけど。


「ちぇ~、市民プールか~」


 その建物を前に、繭美が口を尖らせて言う。


「ごめんね、繭美ちゃん。涼香さんが腰の具合があまり良くなくて、遠出は出来ないから」


「いや~、面目ないね~」


 涼香さんは苦笑する。


「あたし、デスクワーカーだからさ」


「ライターのお仕事しているんですもんね」


「そうそう、そのせいでね。あとは……ねっ?」


 と、涼香さんは何やら意味ありげな視線を道三郎に向けていた。


「りょ、涼香さん、俺が腰のマッサージをしてあげるよ。マットか日焼けイスか何かレンタル出来るだろうし」


「ありがとう、ミッチー♡」


「へぇ~、こっちの歳の差カップルもラブラブだね~。いっそのこと、あたしもおじさんと付き合おうかな~」


「そんなこと言ったら、また親とケンカするぞ」


 俺は呆れて言う。


「うるさいよ。ていうか、道三郎くんと涼香さんは週何でパ◯ッてます? うちの冬馬と可奈子ちゃんなんて、もう毎日……むぐぐ!」


「「言うな!(わないで!)」


 俺と可奈子さんが同時に繭美の口を押さえた。


「ていうか、早く行こうよ~」


 そんなこんなで、入場する。


「じゃあ、また後でね~♪」


 一旦、女性陣と別れて着替えに向かう。


「冬馬も海が良かったか?」


 服を脱ぎながら道三郎が言う。


「いや、市民プールの方がむしろ安心だよ。海だと、変な輩に絡まれそうだし」


「確かにな~。俺たちの彼女、レベルが高いもんな~」


「そうそう。その点、市民プールは平和だから」


「たまに、地元のヤンキーとかいるけどな」


「いざとなったら、繭美にお願いするから良いよ」


「お前、ひどいな。繭美ちゃんを差し出すつもりかよ」


「違う、違う。あいつ、昔から腕力が強いんだよ。だから、男相手にもケンカで普通に勝つし。この前だって……」


 ふと言いかけて、俺は口をつぐむ。


 あいつに壁に押し付けられた時のことを……


「ん、どうした?」


「い、いや、何でも」


「まあ、いざとなったら、男の俺らが盾になろうや」


「道三郎……たまにはカッコイイな」


「まあな。涼香さんと付き合い始めてから、こう自信が付いたって言うかさ」


「で、さっき繭美が言ったことだけど……週何回?」


「涼香さんの仕事の調子にもよるけど……この前は泊まり込みで1日中したな」


「お前ら変態だな」


「うるせえよ、ムッツリカップル」


「誰がムッツリだよ」


 そんなこんなで、俺たちは着替えを済ませてプールスペースに出た。


「おっ、良い感じだな~」


 海だとヤカラがいたりするけど。


 ここには可愛らしい学生や親子連れの姿しかなかった。


 つまりは、平和な世界。


「おまた~♪」


 その声に振り向く。


 俺たちはハッと息を呑んだ。


「りょ、涼香さん……」


 相変わらず、ショートヘアがよく似合う美女な彼女。


 水着はビキニスタイルで、意外にも清楚な白。


 胸の大きさでは可奈子さんに劣るけど、その代わりクビレがすごい。


 脚もスラッとしていて、とてもデスクワーカーとは思えない抜群のスタイルだ。


「ミッチー、どうかな?」


「さ、最高っす……」


「ありがと♡」


 道三郎のやつ、すっかり骨抜きにされちゃって……


「と、冬馬くん」


 呼ばれて、俺はハッとする。


「か、可奈子さん……」


「ど、どうかな?」


 どうもこうも無かった。


 薄桃色のビキニを纏う可奈子さんは、最高にエロ可愛い。


 相変わらず、清楚で可憐でありながら、しっとりエロボディだ。


 この中で一番大きいおっぱいは、とても柔らかくて重量感がたっぷりで。


 何か、また成長したような……今にも水着からこぼれおちそうだ。


 お腹周りはスッキリしているけど、適度に肉付きも良くて、一番男好きする感じだ。


 涼香さんがシャープなボディだとすれば、可奈子さんは全体的にゆるふわボディと言うか。


 とにかく、今すぐ抱き締めたいレベルだ。


「……最高に可愛すぎます、結婚して下さい」


「へっ? あ、はい……」


「って、このバカップルが」


 ツッコむのは、繭美だ。


「そもそも、可奈子ちゃんの水着を選んであげたのはあたしなんだから、感謝しなさいよね」


 そう言う繭美は、黒のビキニがよく似合っていた。


 やはり、この中で一番若いためか、ボディのハリと艶が違う。


 涼香さんがシャープで、可奈子さんがゆるふわなら、こいつはムチムチだ。


 一見すると、ムキムキではないけど。


 柔らかそうな女の子の肉の内には、男も一撃でねじ伏せるような筋肉が眠っている。


 その証拠に、腹筋にラインが入っていた。


「逃した魚はでっかい?」


 繭美が挑発的な目付きと口調で言う。


「は、はぁ? 俺には可奈子さんがいるから、そんなこと思わねーし」


「あっそ。だったら、あたし適当に男でもひっかけて、パ◯ッちゃおうかな~」


「おい、やめろ。マジメそうな学生をお前のビッチパワーで汚すなよ?」


「だから、あたしは処女だっての」


「何か疑わしく思えて来たよ」


「だったら、試してみる?」


 繭美は指先を咥えて、艶っぽい目で俺を見つめて来た。


「いや、だから……ハッ!」


「む~……」


 可奈子さんがふくれっ面になり、少し涙目で俺を睨んでいた。


「か、可奈子さん?」


「あらあら、大変ね~。じゃあ、ちょっとカップルごとに別行動しましょう~。ミッチー、早くお腰のマッサージをして?」


「りょ、了解っす。冬馬たち、また後でな!」


 道三郎は意気揚々と駆け出す。


「え、えっと、じゃあ……せっかく来たんだし、楽しもうか」


「オッケー。可奈子ちゃん、せっかくだからちょっとバトっちゃう?」


「おい、繭美。あまり可奈子さんを挑発しないで……」


「受けて立ちます!」


「か、可奈子さん?」


 繭美は不敵に微笑み、可奈子さんは悔し涙を浮かべている。


 そして、俺はひたすらオロオロしていた。


「じゃあ、今からあのウォータースライダーに乗ろうよ」


 繭美が指を差して言う。


「で、ちょっと水着のヒモを緩めて滑ろう」


「えっ?」


「そんでもって、ポロリした方が負けね☆」


「おい、繭美。またムチャクチャな……」


「う、受けて立ちます!」


「か、可奈子さん? 落ち着いて!」


「だ、大丈夫よ、冬馬くん! あなたが私だけの物だって、証明してみせるから!」


「いや、何もこんなやり方じゃなくても……」


「こらこら、冬馬。女同士の戦いに口を出さないの」


 繭美が指先で俺の口を押える。


「さてと、可奈子ちゃんのJカップ爆乳をポロリさせるか~!」


「えっ、J!?」


 確か、前はIカップだったはず……やはり、成長していたのか。


「ちなみに、あたしはHカップに成長していました♡」


「良かったな」


「ちょっと、だからリアクションの差!」


「繭美ちゃん、早く行きましょう。私、絶対にポロリしないから」


「いや、ぶっちゃけもう半分くらい出そうだけど」


「へっ!?」


「冗談だよ。可愛いね~♡」


「むぅ~!」


「頼むから、仲良くしてくれ」


 俺は切実に願った。







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