第30話 いとこの巨乳ギャルJKと……

 優雅な音楽が流れている。


「う~ん、ここの料理おいしい~」


 涼香さんは頬に手を添えて、舌鼓を打つ。


「本当ですね。涼香さんチョイスのお店、さすがです」


 私も微笑んで言う。


「そうでしょ? 今度は、彼氏と2人きりで来ようよ。お互いにね♪」


「あ、はい……冬馬くん、今ごろどうしているかな?」


「そういえば、可愛いギャルJKのいとこちゃんと2人きりなんだっけ? 大丈夫?」


「えっ?」


「浮気されたりして~」


「りょ、涼香さん」


「あはは、ごめん、ごめん。意地悪なこと言っちゃったね」


「ううん、平気です。私は冬馬くんのこと、信じていますから」




      ◇




 部屋はしっかりとクーラーが効いているはずなのに、じっとりと汗が浮かぶ。


 繭美の褐色肌にも汗の玉が浮かんで、つつと垂れる。


 それがまた魅惑の谷間に吸い込まれて言って、エロい。


「冬馬……シよ?」


 見た目と普段の言動からして、経験豊富だと思っていた繭美。


 けど、実は処女で、しかも俺に対して好意を寄せている。


 こいつはいとこだけど、可愛らしいし、スタイルが抜群なことは認める。


 女の子として、魅力を感じてしまう。


 けど、俺は……


「……ごめん、繭美。やっぱり、それは出来ない」


「可奈子ちゃんがいるから?」


「うん。俺、可奈子さんのことを裏切りたくないから。だから……」


「そっか……そうだよね」


 繭美はスッと俺から離れる。


 どうやら、分かってくれたようだ。


「……だったら、あたしも捨て身の覚悟で行くよ」


「はっ?」


 途端に、繭美が俺にタックルを仕掛けて来た。


 こいつ、フィジカル強っ……


「ぐっ!」


 俺はそのまま、キッチンの壁に押し付けられた。


「ほらほら、繭美ちゃんのおっぱいホールドだよ!」


 グリグリと、ご自慢の豊満な胸を押し付けて来る。


「ま、繭美、いい加減にしろ!」


「だったら、さっさとあたしを抱いてよ! ここまでしておいて抱いてもらえないなんて、みじめじゃん!」


「良いから、落ち着けって!」


「やだ、だって……!」


 繭美の瞳に小さく涙が浮かぶ。


 分かっている。こいつには、こいつなりの想いがあってのことだって。


 たぶん、多くの男子はこの誘惑から逃れられないかもしれない。


 繭美は可愛くて胸も大きくて、性格も明るく楽しい。


 そんな素敵な女の子だから。


 けど、やっぱり……


「……繭美、ごめん」


「へっ?」


 パチン!


「あうっ!?」


 俺は繭美の豊満な胸を両サイドから強く叩いた。


 その痛みで奴がのけぞった隙に、さらにもう一発。


 パチン、と。


 今度は少し弱めに、彼女の頬を両手で挟んだ。


「と、冬馬……」


 火照った繭美の顔に見つめられる。


「頼むから、落ち着いてくれ、繭美」


 俺が息を切らせながら言うと、繭美の瞳がわずかに冷静さを取り戻した。


 俺は繭美を片手で抱えたまま、コップに水を注ぐ。


「ほら、飲め」


「んっ……」


 繭美はゴクゴクと飲んだ。


「どうだ、落ち着いたか?」


「……うん、ごめん」


「ちょっと、こっちに来て」


 コンロの火を止めると、リビングのソファーに繭美と座った。


「……最低だよね、あたし」


 繭美はうつむき加減で言う。


「勝手に押しかけて来て、それだけでも迷惑なのに……自分勝手な欲望で、冬馬と可奈子ちゃんの仲を引き裂こうとするなんて」


 俺は繭美の背中を撫でた。


「俺も悪かったよ。繭美がいるのに、配慮が足りなかった」


「でも、可奈子ちゃんとエッチしたかったんでしょ?」


「うっ、まあ……俺も男だから」


「けど、あたしとはエッチしてくれないんだ」


「だから、俺には可奈子さんという恋人がいて、お前はいとこで……」


「嘘だよ、ごめん」


 顔を上げた繭美は少しだけ笑っていた。


「あたしさ、将来はキャバ嬢になりたいんだ」


「はっ? いきなりどうした?」


「ほら、あたしって可愛くておっぱい大きいし、トークもイケるから。天職だと思うんだよね」


「ま、まあ、そうかもしれないけど」


「そこで、いっぱいお金を稼いで、自分で会社を起こして、またいっぱい稼いで……家族に恩返しをしたいんだ」


「繭美……」


「だから、大学には進学しない……って話をしたら、お父さんたちに猛反対されちゃって」


「まあ、だろうね。おじさん、繭美のこと大切にしているし」


「うん。でも、あたしも意地になっちゃって……それで家を出ちゃったの」


「なるほどな……」


 俺は頷く。


「よし、繭美」


「へっ?」


「夏休みの間は、この家にいて良いよ」


「えっ、本当に? こんなことしたのに……置いてくれるの?」


「まあ、それはもう水に流すよ。ただし、次したら追い出すからな」


「わ、分かった」


「あと、おじさんには俺から連絡しておくから。お互い、まだ素直にはなれないだろ?」


「うん……あっ、今回のこと、可奈子ちゃんに話して、ちゃんと謝った方が良いかな?」


「そうだなぁ……繭美の思う通りにしなよ」


「分かった」


 繭美はニカッと笑顔を浮かべた。


「カレー作りがまだ途中だったな。お前も、早くサラダ仕上げろよ」


「うん。あっ、そうだ」


 繭美が何か閃いたように言う。


「ドレッシングはシーザーって言ったっけ?」


「うん、そうだね」


「シーザーって、チーズの匂いがすごいよね?」


「あ、苦手か? だったら、別のでも……」


「冬馬に食してもらえなかった分、あたしのそれを……」


「おい、繭美」


 俺は奴の口を掴んだ。


「もしや、反省してないな?」


「ひ、ひへるほん!(し、してるもん!)」


「だったら、そばからド下ネタかましてんじゃねえよ。お前、やっぱり出て行け。俺はともかく、可奈子さんが汚れるのは嫌だ」


「いーやーだー! 冬馬のバカ! もう童貞じゃないんだから、これくらいのジョークは受け流しなさいよ!」


「我が家の風紀を乱すな。お前はそうやって、学校でも風紀を乱しているんだろ? ギャルだからな」


「あー、また偏見! あたし、廊下に落ちているゴミとか拾っているし」


「ほう?」


「で、その時、前かがみになって、おっぱいの谷間をオタクっぽい男子に見られてさ~。エロマンガだったら、もうそのままヤッちゃうよね~!」


「お前、やっぱり反省してないだろ!」


 俺はもうしばらく、おの元気いっぱいなギャル女に振り回されそうだ。







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