第28話 ごめんね、冬馬……

 俺はまた悶々としていた。


 今度はベッドの中で。


「……はぁ~」


 分かっている、ムキになっている俺の方がダサいってことは。


 繭美は生意気なギャル子だけど、性格は悪くない。


 むしろさっぱりして良い方だ。


 素直で可愛らしいし。


 だから、可奈子さんも笑顔で迎えてくれた。


 それに引き換え俺は……


 カチャッ、とドアが開く。


「えっ?」


「冬馬くん、もう寝たかな?」


「か、可奈子さん?」


 俺は半ば動揺した。


 繭美がいる間は、一緒に寝ないと思っていたから。


「あの、繭美は……?」


「繭美ちゃんは下の空き部屋にお布団を敷いて寝るって」


「あ、そうなんだ」


「だから……私も一緒に良いかな?」


 可奈子さんは枕をぎゅっと抱えて言う。


「……ど、どうぞ」


 俺は布団を上げた。


 可奈子さんはニコッとして入り込む。


「そういえば、新しい大きなベッド、まだ買ってなかったね」


「あ、うん。何だかんだ、置くスペースとか予算のことを考えていたら……ね」


「うふふ。でも、こうして狭いベッドで冬馬くんとくっついている方が、幸せかも」


「……俺も」


 お互いに見つめ合っていた。


「ごめん、可奈子さん。繭美のことで、カリカリしちゃって」


「良いのよ、気にしないで。何だかんだ仲の良い兄妹を見ているみたいだから」


「はは……まあ、悪い奴じゃないからね」


「うん、すごく良い子よ。でも……」


「えっ?」


「ううん、何でもない」


 可奈子さんはニコッとする。


「可奈子さん、疲れてない? ほら、繭美が増えた分、家事の負担も増したでしょ?」


「大した負担にはならないから、平気よ。むしろ、賑やかで楽しいわ」


「そっか……俺としては、可奈子さんと2人きりになれる機会が減って悲しいけど。まあ、温泉デートで散々イチャついたから良いけどさ……」


「……ねえ、冬馬くん」


 呼ばれてふっと顔を向けると、おでこにキスをされた。


「か、可奈子さん?」


「ごめんね。ちょっとイジける冬馬くんが可愛かったから」


「そ、そうかな?」


 見つめ合うと、またキスをした。


 今度は唇同士で。


「……これ以上は……繭美にバレちゃうから」


「……うん、そうだね」


 とか言いながら、お互いの体に触れ合っていた。


「……さっき、繭美ちゃんにマッサージをしてもらったせいかな。何か興奮が収まらなくて」


「え、何それ? ちょっとムカつくんだけど」


「ごめんなさい。でも、この体を慰められるのは……冬馬くんだけよ」


 その一言で、プツンと切れた。


 俺は可奈子さんを抱き締めた。




      ◇




 やっぱり、いきなりお邪魔して迷惑だったかな?


 あたしは布団の上でタオルケットに包まりながら、そんなことを考える。


 冬馬とは、小さい頃から姉弟みたいな関係だけど。


 何だかんだ、お互いに成長したからなぁ。


 あたしはこんなに可愛くおっぱいも大きく育って。


 冬馬も、しばらく見ない間にかっこよく……って、バカ。


 あいつにはもう、可奈子ちゃんっていう素晴らしい彼女がいるんだから。


 邪魔をしないようにしないと。


 ていうか、今の段階でもう既に邪魔をしちゃっているけど。


 でも、仕方ないんだ。


 あたしだって、色々と切羽詰まっているから。


 そんな時に、冬馬の顔が浮かんで、助けてもらいたくて……


 ダメダメ、こんなネガティブな思考をしていたら。


 今日の所はもう疲れたし、寝よう。


 あたしは目を閉じる。


 その時、上の方でかすかに声が聞えた。


 ギシ、と音もした。


「えっ?」


 思わず、パチリと目を開く。


「……まさかね」


 冬馬はマジメだし、可奈子ちゃんは奥ゆかしいし。


 だから、そんな2人が、あたしという客人がいる状態でそんなことをするはずが……


 布団から起き上がった。


 そっと部屋から出る。


 階段を踏み締める度に、ドキドキが増す。


 そして、声と軋む音も増して来た。


 その部屋の前に立つと、そっとドアを開けた。


 これ以上、あたしの口からは語れない。


 けど、すごく驚いた。


 小さい頃、あたしの弟みたいだったあいつが(まあ、あいつはあたしの方が妹みたいだったって言い張るだろうけど)。


 いつの間にか、あんな風に彼女と……もう、すっかり大人じゃん。


 そういった経験はまだないあたしだけど。


 あいつが上手なことは分かった。


 だって、可奈子ちゃんすごく気持ち良さそうだし。


 さっき、あたしがしてあげたマッサージの時よりも、本気で気持ち良くなっている。


 冬馬、あいつ知らない間にいつの間にこんな……大きくなって。


 男として、成長したんだね。


 ちょっと、涙が出て来ちゃうよ。


 何でだろうね?


 けど、やっぱり嬉しいよ。


 あんたはいとこで、姉弟みたいな存在だから。


 こんな風に成長してくれて。


 あ、もうすぐかな?


 分かるよ、経験が無いけど。


 隠れてエッチな本とか動画を見ていたから。


 ギャル友はみんな大人で経験者ばかりだから、その話も聞いたりして。


 知識だけは一丁前にあるんだ。


 あたしはこんなに可愛い巨乳ギャルだから、男からアプローチもたくさんされたけど。


 みんな断って来たんだ。


 何でだろうね?


 冬馬、気持ち良い?


 ごめんね、これきりにするから。


 ちょっとだけ、おすそ分けもらうね?


 あたしは床を濡らさないように注意しながら、歯を食いしばった。


 けど、自然と溢れた涙のせいで、濡れてしまったかもしれない。


 この後、階段を下りられるかな?


 そんな心配をしてしまうくらい、足腰がガクガクになってしまった。


「……冬馬、すごいよ」


 ほんの少しだけ、声が漏れた。







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