第26話 愛の巣に紛れ込んだギャル
帰り道も快晴のドライブだった。
「温泉デート、楽しかったね」
「うん。可奈子さんと一緒に来られて、本当に良かったよ」
「私も、冬馬くんと一緒に過ごせて嬉しかったわ」
「可奈子さん……」
「昨日の夜……すごかったもんね」
「ご、ごめん、俺ってば……けど、可奈子さんがエロ美人すぎて……」
「ふふ、何よそれ」
そんな風に楽しい会話をしながら、家に帰って来た。
「じゃあ、荷物を下ろそうか」
「玄関のカギ開けるね」
「ありがとう、可奈子さん」
俺は車のトランクを開けた。
「さてと……」
「……と、冬馬くん」
「んっ? どうしたの、可奈子さん?」
振り向くと、可奈子さんは何やら少し顔が青ざめていた。
「出かける時、ちゃんとカギを閉めたはずなのに……開いていた」
「えっ」
「しかも、ちょっと覗いたら……知らない人の靴が」
「マジで?」
俺はトランクを閉めると、
「可奈子さんはここで待っていて」
「ううん、私も行く」
「じゃあ、俺の後ろに隠れて」
そして、2人でそーっと玄関に入る。
「――キャハハ!」
ビクッとした。
「えっ? えっ? 誰かいるの?」
「可奈子さん、落ち着いて」
俺は彼女をなだめつつ、慎重な足取りでリビングに向かう。
ガチャッと開けた。
「あ~、ポテチおいち~。ジュースもおいちい~。テレビもおもち~。キャハハ!」
我が家のリビングのソファーで寝転がって食ってテレビを見て爆笑するギャルがいた。
「……お前、何してんの?」
俺が声をかけると、
「およっ?」
奴はとぼけた声で振り向く。
「あっ、冬馬だ! おかえり~!」
ぴょんと跳ね起きた。
「だから、何でお前がいるんだ?」
「そんな怖い顔しないでよ~! イケメンが台無しだぞ♪」
「相変わらずウザいな~」
俺はため息を漏らす。
「えっと、この子は……?」
可奈子さんが言う。
「ああ、こいつは俺のいとこで、
「いとこ?」
可奈子さんは小首をかしげる。
「どうも~、可愛いピッチピチのJKギャル、まゆたんで~す☆」
ちょい焼けた肌に金髪のツインテ。
確かに、こいつは立派なギャルである。
「おい、ソファーの上に立つな」
「良いじゃん、別に」
「だって、お前の足くさそーだし」
「はぁ~!? 冬馬、マジでサイテーなんだけど、死ね!」
繭美はべーっとする。
「で、何でお前がここにいるんだ?」
「うん。パパが持っていたこの家の合カギを盗んで来たの♡」
「ちょっと待ってろ。警察に電話するから」
「やだ~! 身内を売るつもり~?」
「とりあえず、静かにしてくれないか?」
「ていうか、ていうか。その人こそ誰? 冬馬の彼女?」
繭美の視線が可奈子さんに向けられる。
「あ、初めまして。私は桜田可奈子です。冬馬くんの彼女で……ゆくゆくは、お嫁さんになりたいと思っています」
可奈子さんは照れながら言った。
「うん、よろしくね、可奈子ちゃん」
「おい、可奈子さんは年上だぞ。ちゃんと敬語を使え」
「冬馬はタメ口じゃん。あたしとあんたは同じ歳だから、イコールあたしも可奈子ちゃんとタメ口でいーじゃん」
「俺は彼氏だからいーの」
「うわ~、彼氏面してるし~」
「お前なぁ~」
「まあまあ、私は気にしないから。むしろ、タメ口の方が親近感が湧いて嬉しいわ」
「イエーイ、可奈子ちゃん優しい~。ていうか、メッチャ美人だね~。しかもおっぱいデカいし。それ何カップ?」
「へっ? え、えっと、Iカップだけど……また、ちょっとキツくなって来たから」
「マジで? ちょっと揉ませて」
「えっ?」
可奈子さんは戸惑う間、繭美はサッと近寄り、清楚で豊満な乳を持ち上げた。
「うわ~、おっき~、やわらか~、おっも~!」
「ちょっ、繭美ちゃん!?」
「あたしもGカップで同学年だとかなり巨乳のレベルなんだけどさ~。やっぱり、大人のお姉さんには敵わないね~」
モミモミ♡
「んっ、やっ……」
「ねえ、あたしと冬馬の乳揉み、どっちが上手で気持ち良い?」
「そ、それは……冬馬くん」
「むっ。じゃあ、こんなのはどう?」
「ひゃッ!?」
「いい加減にしろ、ドスケベ」
「あいたッ!?」
俺は繭美に手刀を落とした。
「痛い~! 冬馬のバカ! DV彼氏!」
「人聞きの悪いことを言うな!」
「2人ともケンカはやめて」
俺と繭美は睨み合う。
その間で可奈子さんがあたふたしていた。
「繭美、もう帰れよ。ていうか、合カギを置いて行け」
「やだ、帰らない」
「はぁ?」
「あたし、夏休みの間ここにいるから」
「お前、何を勝手なこと言ってんだよ。だいたい、おじさん達は何て言っているんだよ?」
「知らないよ」
「ああ、そっか。お前は勝手にカギを盗んで……もしかして、家出か?」
俺が言うと、繭美はピクリとした。
唇を小さく噛んでうつむく。
「はぁ~、全く……」
俺はスマホを取り出し、おじさんに電話を掛けようとした。
けど、その手にそっと可奈子さんが触れる。
「えっ?」
可奈子さんは微笑んだまま何も言わず、小さく首を横に振った。
「繭美ちゃん、今日の夕ごはんは何が食べたい?」
「えっ、可奈子ちゃんが作ってくれるの?」
「任せて」
「じゃあね……オムライス!」
「ふふ、可愛いわね」
「だって、食べたいんだもん」
「良いわよ。冬馬くんもそれで良いかな?」
「あ、うん」
「じゃあ、荷物下ろしましょうか」
「あっ、あたしも手伝うよ~」
「ありがとう」
何か、もう繭美が懐いているし。
さすが、可奈子さんだな。
「こら、冬馬ぁ~! 男のくせにボサっとしてんな、働け!」
「うるさいよ、バカ!」
「ふふ、ケンカはめっ、だよ?」
こうして、まさかの同居生活が始まってしまった。
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