第18話 やりすぎラブい

 歳の差合コン(?)はまだまだ続いている。


「ねえねえ、可奈子ちゃんってスリーサイズはいくつなの?」


 ふいに聞かれて、可奈子さんは飲みかけのお酒を噴き出しそうになる。


「ゲホッ、ゴホッ……」


「可奈子さん、大丈夫?」


 俺は彼女の背中を優しくさすった。


「ありがとう、冬馬くん……もう~、涼香さん?」


「あはは、ごめん、ごめん。代わりにあたしのスリーサイズを教えよっか? って、誰も興味ないかな?」


「いえ、俺はあります」


「おい、道三郎」


「え~、ミッチーってば、こんなおばさんのことを好いてくれるの?」


「そんな、涼香さんは十分若くてきれいなお姉さんっすよ。可奈子さんにも負けません」


「あら、嬉しい。じゃあ、お姉さんとプッキーゲームする?」


「マ、マジっすか!?」


「ていうか、どうせならチーム対抗戦にしようよ」


「「チーム対抗戦?」」


 俺と可奈子さんは一緒に首をかしげる。


「どっちが早くゴール出来るか、競争しましょ?」


「えっ……涼香さん、本気ですか?」


「何よ、可奈子ちゃん。実際にカップル同士のあなた達のほうが有利でしょ?」


「そ、それは……」


 可奈子さんは頬を赤らめながら、俺の方をチラ見する。


「せっかく、こうして楽しい会を開いているんだから。ねっ?」


 涼香さんはウィンクをして言う。


「お、俺はやりたいです」


 少し鼻息を荒くして道三郎が言う。


「あら、ミッチー。お姉さんとやる気?」


「も、もちろんです。よろしくお願いします」


「って、もうプッキー咥えているし……可愛い」


 涼香さんは自分のショートヘアをさらりと撫でてから、道三郎の頭も撫でた。


「ほら、あんた達バカップルも早くしなさいよ」


「「誰がバカップルだ」」


「ふふ、息ピッタリじゃない」


 不敵に微笑む涼香さん。


 一方、俺と可奈子さんは少し悔しくて言葉に詰まりながらも。


 お互いに見つめ合った。


 あ、キスする距離だ……


「こら、プッキーを咥えなさい。普通にキスしようとするな」


「「ハッ……!」」


「ふふ、やっぱりバカップルね」


「あ、あまりバカにしないで……」


 可奈子さんが頬を紅潮させたまま抗議する。


「ほらほら、早くするわよ。負けた方は罰ゲームね」


「わ、分かりました」


「じゃあ、レディ……」


 俺たちはプッキーを咥える。


「ゴー♪」


 カリッ、カリッ、と音がする。


 道三郎と涼香さんのペアは、涼香さんが早々とプッキーをかじって行く。


 一方、俺と可奈子さんペアは、お互いに照れ臭くてジリジリとしか進めない。


 クソ、これ普通にキスするよりも緊張するぞ……


「……んっ、んっ」


 何か、可奈子さんもちょっと嫌らしい声が出ちゃっているし……


 いや、本人にそのつもりは無いんだろうけど……


 チラッととなりを見ると、向こうのペアは俺たちよりも数歩リードしていた。


 主に涼香さんのおかげで。


 道三郎は意気込みとは裏腹に、ガチガチに固まってほとんど動けていない。


 対する俺たちも、少しずつだけど、お互いに歩み寄って行く。


 カリカリと、進んで行く。お互いに距離が縮まって行く。


 可奈子さんの息遣いを間近に感じた。


 プッキーのせいか、いつも以上に甘い香りがした。


 あと少しで、お互いに唇が重なる。


 俺たちはドキドキしたように視線をかわしながら、ちゅっとゴールをした。


「か、勝ったかな?」


「ど、どうだろう。涼香たちは……えっ」


「どうしたの?……あっ」


 俺と可奈子さんは同時に硬直した。


「……んっ、あっ、はっ……ミッチー」


 となりもしっかりとゴールしていた。


 本当にもう、俺たち以上にしっかりと、唇を重ねて。


 道三郎が半分くらい食われている感じだった。


 あいつは顔を真っ赤にして、半ば気を失っている。


 けど、顔はどこまでも幸せそうにのぼせていた。


「りょ、涼香さん? 何をしているの?」


 我に返った可奈子さんが言うと、涼香さんはちゅぱっ、と唇を離す。


「……ベ◯チュー」


 ちろっと舌なめずりをして言った。


「ハ、ハレンチよ! 道三郎くん、気を失っています!」


「あら、ホント。幸せそうな顔しちゃって。このまま、童貞もいただこうかしら?」


「ちゃんと本人の許可をもらってからにして下さい」


「え~、ここまでしてお預けなんて嫌よ~」


 すると、道三郎がハッと息を吹き返す。


「あっ、起きた。ねえねえ、ミッチー、このままお姉さんと童貞を卒業しちゃう?」


「へっ? いや、その……」


 起き上がった道三郎は、


「……今はやめておきます」


「ガーン! やっぱり、年増なあたしじゃ嫌なの?」


「そうじゃなくて……まずはちゃんと、付き合いたいって言うか……」


 道三郎が照れながら言うと、涼香さんは最初、目をパチクリとさせる。


「……やばっ」


「あ、ごめんなさい。俺、ガキだから……」


「ううん、そうじゃなくて……ステキよ」


 涼香さんは道三郎のほっぺに優しくキスをした。


「良いよ、ミッチー。あたしら、付き合おっか」


「ほ、本当っすか?」


「もちろん、君が良ければだけど」


「こ、断る理由がありません」


「ふふふ、よろしくね。あ、お酒飲む?」


「いただきます」


「こら、ダメです」


「え~、可奈子ちゃんのケチ~。彼氏くんには甘々のくせに~」


「そ、それは……でも、お酒は飲ませませんから」


「とか言って、本当はこっそり飲ませて酔わせて嫌らしいことしているんでしょ?」


「えっ、可奈子さん?」


「ちょっ、冬馬くん、私を疑うの!?」


「いや、冗談だよ」


「もう、バカ!」


 ポカッ、と肩を叩かれる。


「じゃあ、楽しい宴はまだまだ続くってことで」


「そうっすね」


「はぁ~、もう顔が熱い……」


「可奈子さん、水でも飲む?」


「ううん、大丈夫。その代わり……」


 可奈子さんがこちらに倒れて来た。


 そのまま、俺の肩に頭を乗せる。


「……しばらく、こうさせて?」


「う、うん……分かった」


「あらあら、まあまあ。もうバンバンとエッチしまくりなのに、初々しいわね~」


「お、俺も涼香さんとあれくらい仲良くなるぞ」


「じゃあ、あたしもミッチーに甘えちゃおっと♪」


「よ、喜んで~!」


 こうして、楽しい宴は続いて行った。







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