第17話 歳の差合コン

 休日。


 俺と可奈子さんはいつもより早起きして、念入りに家の掃除をしていた。


「よし、おもてなしの準備はこれくらいで良いかな」


「うん、そうだね」


 すると、ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴る。


「あ、俺が出るよ」


 玄関に来てドアを開ける。


「よっ、冬馬」


「道三郎、いらっしゃい」


「いやー、それにしても、久しぶりに冬馬の家に来たなぁ」


 道三郎はキョロキョロと見渡して言う。


「こんにちは」


「えっ?」


 可奈子さんがやって来ると、道三郎は硬直した。


「初めまして、冬馬くんの……か、彼女の桜田可奈子です」


 可奈子さんも少しだけぎこちない。


「は、初めまして……羽鳥道三郎です」


「冬馬くんの親友なんだよね? よろしくね」


「あ、はい……」


 呆けたように言った後、


「おい、冬馬。お前、本当にこんな超美人で巨乳のお姉さんと同居しているのか? しかも、彼女なのか? ていうか、すでに嫁なのか!?」


「お、落ち着け、道三郎」


「うふふ、仲良しね」


 そんな風に会話していた時、またチャイムが鳴った。


「あ、はいはい」


 ドアを開けると、美人さんがいた。


「こんにちは。可奈子ちゃんのお友達の鏑木涼香です」


「あ、どうも。月城冬馬です」


「君が冬馬くんか。確かに、可愛い子ね。可奈子ちゃんがゾッコンなのも頷けるわ」


「あ、ありがとうございます。あっ、こいつは俺の親友で道三郎です」


「んっ? へぇ~、この子も可愛いじゃない」


「び、美人のお姉さんが立て続けに……悪い、冬馬。俺、何だか頭がクラクラして来た」


「そんなこと言わないで。これから楽しい合コンでしょ?」


 涼香さんが言う。


「は、はい……よろしくお願いします」


「うふふ、みんな上がって」




      ◇




 リビングのテーブルには豪華な料理が並んでいる。


「えー、昼間なのにお酒飲んでも良いの~?」


 涼香さんは嬉しそうに言う。


「どうぞ、飲んで下さい」


「あっ、俺がつぎますよ」


 道三郎が言う。


「あら、気が利くじゃない。ミッチー」


「えっ」


「あっ、ダメだった?」


「涼香さん、こいつ今まで誰にもその愛称で呼んでもらえなかったんで。多分いま、感激しています」


 俺が小さく笑って言う。


「そうなの?」


「お、俺もう、今日で死んでも構いません。こんな美人のお姉さんたちとお喋りが出来て」


「こら、まだ若いのにそんなこと言わないの。ミッチーもお酒飲む?」


「はい、いただきます」


「こら、ダメです」


 可奈子さんが軽く叱る。


「冗談よ」


「道三郎くん、何が良い?」


「あ、えっと……お茶で」


「はい、どうぞ」


「あ、ありがとうございます」


「可奈子ちゃん、いま前かがみになった時、ちょっと巨乳が見え隠れしていたわよ」


「きゃっ。み、道三郎くんも見た?」


「へっ? お、俺は……ぶ、ぶっちゃけ、ちょっとだけ見えたっす」


「は、恥ずかしい……」


 赤く染まった頬を両手で押さえて可奈子さんは言う。


「「たまらんな」」


 道三郎と涼香さんがハモった。


「って、何で涼香さんが言うんすか」


「良いじゃんか、ミッチー。カンパーイ!」


 二人はチンとグラスを合わせる。


「じゃあ、私たちもカンパーイ」


 可奈子さんが俺にグラスを差し出す。


「うん、カンパイ」


 チン、と。


「じゃあ、合コンという名の飲み会スタートだ~!」


「涼香さん、あまりハメを外し過ぎないようにね」


「可奈子ちゃんはマジメなんだから。早く冬馬くんとイチャつけよ~」


「そ、そんな……」


「じゃあ、あたしはミッチーとイチャラブるから」


 そう言って、涼香さんは道三郎に抱き付く。


「うほっ!?」


「ねえ、可奈子ちゃんには少し負けるけど、あたしも結構おっぱい大きいっしょ」


「じゅ、十分すぎます……」


 道三郎はすっかり鼻息が荒くなっていた。


「うふふ、かーわいい。年下って、良いね」


「それは同感です」


 可奈子さんは両手でお酒の入ったグラスを持って、小さく飲みながら俺を見た。


「冬馬くんたちは、年上のお姉さんはどうかな?」


 聞かれたので、


「「最高です」」


 今度は俺と道三郎がハモった。


 やっぱり、年上は最高だぜ。







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