第14話 甘ったるいディナータイム

「ただいまー」


「おかえり、可奈子さん」


「あら?」


 リビングに入って来た彼女は目を丸くした。


「へへへ、今日は久しぶりに俺が夕飯を作ってみたんだ」


「え~、本当に~?」


「可奈子さんほど上手じゃないけどさ」


「ううん、そんなことないよ。これって、私のお疲れさま会ってこと?」


「そうだよ。可奈子さん、家政婦の仕事おつかれさまでした」


「冬馬くん……抱き締めても良い?」


「あ、はい」


 頷くと、笑顔の可奈子さんがそばにやって来た。


「えいっ」


 そして、俺に抱き付く。


 可奈子さんの体はとても柔らかい。


 特に、胸が大きくて柔らかい。


 改めて感じるそのボリュームがすごかった。


「ありがとう、冬馬くん」


「ど、どういたしまして」


「ねえ……キスしても良い?」


「えっ? いや、ごはん前だし……」


「関係ないよ」


 可奈子さんは両手で俺の頬に触れると、きれいな唇を寄せて来た。


 そして、柔らかく重なる。


「んっ……冬馬くん……好き……冬馬っ……ちゅっ、あっ……」


 普段は清楚で可憐な可奈子さんが、少し大胆に攻めて来る。


 けど、正直それがたまらないと思ってしまった。




      ◇




「えっ、私たちのこと知られちゃったの?」


「うん、道三郎がしつこくて……あっ、一応俺の親友なんだけど」


「そっか……実は、私も仲の良い常連のお姉さんに冬馬くんという年下の彼氏ができたことがバレちゃって」


「それって、今日のお客さん?」


「うん」


「そうなんだ……」


 お互いに何だか気恥ずかしくなってしまう。


「その人、恋愛系のエッセイを書くライターさんなんだ」


「へぇ~、すごいね」


「だから、今度インタビューさせてもらうかもって」


「マジで? 俺、大した経験もないけど」


「私もだよ……じゃあさ」


「ん?」


「今晩とか……経験してみる?」


 一瞬、スプーンを落としかけた。


「け、経験というのは……」


「……初体験」


 可奈子さんは少しうつむき加減で言う。


「いや、それは……少し待って下さい」


「少しって、どれくらい?」


「えっと、キスが1週間だったから……1ヶ月とか?」


「待てない」


「えっ」


「だって、さっき冬馬くんとキスした時も……子宮がキュンキュン疼いちゃって、切なかった」


「か、可奈子さん……食事中だよ?」


「ごめんなさい。でも……それが私の本当の気持ちだから」


 お互いに見つめ合って、ドキドキしてしまう。


「か、可奈子さんがどうしてもって言うなら……俺は……がんばるけど」


「と、冬馬くん……」


「あっ、でも……アレが無いよ」


「アレって?」


「ほら、アレです」


「あっ……アレか……コンビニ行く?」


 と言って、可奈子さんは直後に赤面した。


「……ごめんなさい。私、とてもエッチな女みたいね」


「いや、その……最高だと思います」


「バ、バカ……」


「だって、正直な話……俺だって可奈子さんとエッチするの想像して、たまらないですから……その巨乳とか」


「もう、こら」


「ご、ごめんなさい」


「ふふ……夜道は危ないから、また今度買いに行きましょう」


「う、うん。あ、でも車なら……」


「えっ? 何々、冬馬くん。何だかんだ私と……」


「あっ……そりゃ、可奈子さんみたいな巨乳美女とエッチしたいでしょ、男なら」


「そ、そっか……私も冬馬くんみたいな年下のイケメン彼氏と早くしたいよ」


「可奈子さん、そろそろやめておこうか」


「そ、そうね。ていうか、もうお酒飲んじゃっているから。どの道、車は使えないわ」


「じゃあ、今日の所はやめておこうか」


「うん。でも……その代わりに、キスはたくさんしても良い?」


「えっ?」


「今度はベッドの上で……さっきよりも深く……」


 艶っぽい目で俺を見つめる可奈子さん。


 ゴクリ、と息を呑む。


「で、でも、そんなことをしたら……止まれないかもよ?」


「その時は……覚悟できています」


 ジッと俺を見つめて言う。


「か、可奈子さん……もうダメだ」


「何が?」


「可奈子さんがが……魅力的すぎて。頭がおかしくなりそうだよ」


「私だって……とっくにおかしくなっているよ? 冬馬くんのせいで」


「……ごめんなさい」


「ダーメ、許さない♡」


「えぇ~?」


「ねえ、あーんしてあげる」


「このタイミングで!?」


「はい、あーん」


「あ、あーん……」


「どう、美味しい?」


「じ、自分で作った料理だからさ」


「あ、そっか。じゃあ、今度は私が作った料理をあーんしてあげる」


「俺、大丈夫かな?」


「ん?」


「何でもないよ」


 デザートタイムでもないのに、何だか甘ったるい時間だった。







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