第4話 グランツェの知り合いの店にて
3歳を過ぎてから以前よりも身体が動かしやすくなった。そのため俺はちょくちょく一人で訓練をやっている。
平凡に生きたい俺がなぜ訓練をしているかって?それは緊急事態のためさ。よくあるだろ?主人公のあのトラブル気質な感じ。
別に俺が主人公だとは思わないよ。だけど、もしかしたらの可能性もあるし、俺の近くにそういった奴が現れるかもしれない。そんな時にトラブってGAME OVER
とかしたら、せっかくの異世界転生なのに楽しめないじゃん?だから念のためにちょくちょく訓練しているわけだ。
その後も訓練をしていて気づいたことがある。それは、訓練をしていたら「下級魔法」が「中級魔法」になったこと。
それと、「魔力操作E」が発現したこと。
最後に、能力補正値は上がるが、レベルと能力値が上がらないことだ。どうやらこの世界では個人で訓練すると、スキルは上がってもレベルが上がらないらしい。おそらく、魔物などの討伐、もしくは対人戦をしないと上がらないみたいだ。
「ステータス」
ステータス lv.1 ローラン
体力 9+なし
持久力 10+E
敏捷 9+なし
耐久 8+なし
魔力 27+C lv .up⤴︎ D→C
状態耐性 50+C
知能 100+C
スキル「闘争S」「隠密A」「習得速度上昇E」「中級魔法」「亜空間魔法E」「魔力操作E」new
俺には考えなければならないことがあった。
それは「闘争S」についてだ。「隠密A」はまだ魔法との相性がいいから問題はない。むしろ使いやすいくらいだ。
それに転生前の俺の予想通り知能を上げたおかげでスキルの「習得速度上昇E」もゲットできた。
だが、スキルポイントを手に入れた時、このまま知能極振りだと、せっかくの最強スキルと言っていい「闘争S」が無駄になる。
だからといって、体力や持久力ばかりに振ると初期ステータスとスキルポイントが無駄になる。しくじったか?
最強になりたいわけではないが、念のために効率のいいステータスにしたいな。
どれだけ考え込んでも、俺は答えが今のところ出そうになかったのであとでじっくり考えることにした。
扉が開かれる音がしたのでそっちを向くとグランツェがいた。
「ローラン。私とお出かけに行かない?」
「どこまで?」
「この町のいろんなお店を見に行くのよ。ローランはあまり家から出ることがなかったじゃない?だから、たまにはね!」
グランツェの言う通り俺は小さい頃(今も小さいけど)に少し町をグランツェとアレクスにおぶられながら何回か出たくらいしか外にまともに出ていない。
最近は魔法の訓練で外に出ているが、とはいえ、それは家の庭であるので外にカウントしていいのかどうかということである。
まぁ、普通はノーカンだろうね。
「わかった。行く。」
俺がそう言うと、すぐにグランツェは支度して一緒に家を出た。
少し町を歩くと俺は「どこいくの?」と話を切り出した。すると、「私の知り合いの店よ。」とだけ言った。
それからほんの1〜2分くらいで着いたみたいだ。
店に入るとすぐ店員が話しかけてきた。
「おお!グランじゃねーか。今日は坊主と一緒なのか。」
「坊主じゃないわよ。ローランって名前なの。」
そうだよ。坊主じゃない。俺髪長いし。
「おばさん誰ですか?」
そう子供っぽく挑発気味に言うと少しキレ気味で自己紹介してくれた。
「おい、坊主。私はおばさんじゃない。お姉さんだ。それと、名前はルナだ。」
「そうよ。おばさんじゃないわ。ローラン、失礼なことは言ってはいけませんよ。」
少し怒られてしまったみたいだ。完全にこっちに非があるから謝るけど。
「ごめんなさい。ルナお姉ちゃん。」
あざとく、そう読んでみたらまんざらでもない表情を見せていた。
、、て言うか、どうでもいいけど、この世界の女の人って名前なんかミスマッチじゃね?
まだ2人しか知らないけど、グランツェはお淑やかな方だし、ルナはオラオラしてるし。名前交換したら?
そんな失礼なことを考えていると、少しだけ話が進んでいた。
「今日は坊主のアクセサリーを買いに来たんだな。」
「そうなの。この子とっても優秀なのよ。」
、、、やめろ!ハードルを上げるな!
「へぇ、そうなのか、坊主?それじゃあちょっとだけ鑑定でステータスを見せてもらうぜ。」
悪意のある満面の笑みでルナはこちらを見ていた。やり返さんとばかりに。まぁ、俺が悪いんだけどね。
「わかった。見ていいよ。」
「言われなくとも」
言われてからやってください。その行為、前世でいう"のぞき"ですからね。
「鑑定。」
そう言うとルナの方に俺のステータスが表示されたみたいだ。相手の任意がないとやられてる側は見えないけど。
そうしてステータスを見たあと最初は驚きもしたが、ルナは少し困った表情を見せた。理由はなんとなくわかる。俺もそれで困ってる。
「グラン。これはちょっと面倒だな。」
「そうなのよ。体力や持久力の方にスキルポイントを回せば魔法使いとしてはあまり伸びなくなるかもしれないし、魔力や知能に振ってばかりいるとアレクスから引き継いだ「闘争S」が無駄死するのよね。」
、、そうなんだよ。そこが難しい。そう思っていたら予想外の言葉が飛んできた。
「あまり考え過ぎなくていいんじゃないか?」
「どういうこと?」
「体力や持久力は多少身をこなせる程度まで上げておけばいいんじゃないか?最悪の場合でも「闘争S」を使えばなんとか乗り切れるだろうよ。」
「それはそうだけど、、、」
「まぁ、坊主。気にすることはない。魔法使いの一族として魔法を頑張ればいいんだよ。」
たしかに、ルナの話を聞いて納得した。俺は平凡なステータスで始まったんだからどうせ行き着く先は微妙なステータスだ。なぜ、あんなに考え込んでしまったのだろうか。
ルナのおかげでステ振りの目処が立った。ありがたい。
「そういや、坊主。まだレベル1なんだな。」
「なんで?」
、、え? この歳は普通まだレベル1なんじゃないの?
「グラン、それとアレクスも坊主と魔法戦とか対人戦とか一緒にしてないのか?」
「そんなの怖くてできないわ。」
「ハァー、、、マジかよ、、」
え?なに?ドユコト?と困った表情をしているとそれを察したルナが説明してくれた。
「坊主みたいに才能があるやつは、小さい頃から両親に鍛えられたり家庭教師をつけてもらえたらするのが一般だ。だが、この親バカ両親はそれをしていないらしい。」
なるほどね。そう言うことか。
「と言うことで、あたしと一戦やろうか坊主。手加減はしてやる。」
マジかよ。まだ4歳にもなってない子供にそんなことを求めんの?と不満と不安を募らせているとこっちの意思関係なく裏庭に連れて行かれた。
「あたしに勝ったら坊主の欲しいアクセサリーをプレゼントしようじゃないか。」
マジっすか。俄然やる気出てきました。
「僕が負けたら?」
「その時は私になぜ「下級魔法」が中級になっているのかということと「魔力操作E」が発現していることについて説明して頂戴ね。」
俺の後ろから心臓を抉るような冷気とほんの少しの怒気が感じられた。
まずい。俺が一人でこっそり家を抜けて庭で訓練をしていたことがバレる。そうなったらこの親バカ両親は、、、
あまり後のことを考えたくなくて思考をストップさせた。
「それじゃあ始めるぞ。グラン。合図を頼む。」
「それでは、よーいスタート。」
始まってしまった。最悪だ。勝ったら目立つ可能性がある。負けたら説教コースまでもつれ込むかもしれない。始まる前から勝負は決まっている。
俺の負けだ。もうやだよー。
「坊主。かかってこい。」
そう言いながら走ってくるルナをめがけて、下級魔法である火球を使おうとした。そういえば魔法はイメージって本に書いてあったっけ?
そんな曖昧な知識を信じて俺は前世で培った知識の化学反応のイメージを頭の中に思い浮かべた。もちろん酸素である。
酸素を多く含めた火球を放った。まだ負けるより勝つ方が良いと考えたので少しばかり本気を出した。
ところが火球を放ったあと急に「止め」の合図が入った。
「おいおい坊主。今のはなんだ?火球が青かったぞ。」
「そうよ、ローラン。説明してもらえるわよね。」
ちょっとちょっと。こわい。こわい。その圧やめて、圧を。
というかここで本当のことを言っても信じてもらえないだろうし、変に疑われても面倒なので、俺は誤魔化すことにした。
「こ、こ、これは、本に書いてあったんだよ。」
「何が?」
「火に空気を混ぜ込むと青い火になるって。」
「本当に?」
だから怖いって、、ちょっと落ち着こうよ。
「うん。本当だからやってみてよ。」
だが、科学の進んでいない世界で化学反応も理解されてないこの世界の人では当然無理があった。
、、絶対怪しまれる。と思っていたがその予想は大きく外れた。
「ローラン。あなたすごいわ。こんなの他の人には真似できないもの。」
「そうだぞ、坊主。おまえはスゲー才能があるな!」
「あっ、あ、ありがとう。」
あっぶねー。焦り過ぎて動揺が収まんねー。コイツらバカで助かったー。
そんなことを思いながら、勝負について聞くと、「あんなもん見せられたら、流石にあたしの負けだよ。」と言ってくれたので有り難くアクセサリーをいただいた。
アクセサリーはもともと目星は付けていた。「レベルアップ速度上昇E」というものが付与されているそうだ。流石に高級なものは手が付けづらかった。だからやめておいた。
ちなみに付与は魔法のスキルレベルを上げるのと「魔力操作」を上げることでできるそうだ。だから一応俺もスキル的には簡単なものならできるそうだ。今度やってみよう。
その後も少しだけルナとグランツェは雑談をした後、俺たちは家に帰ることにした。
「ねぇ、ローラン。「中級魔法」と「魔力操作E」ってなに?」
、、え?俺勝負に勝ったのにそれ聞くの?それルール違反じゃ?
「さ、さぁ、なんなんでしょうね。」
「しらばっくれても無駄よ。家に帰ったらじっくりと聞かせてもらうわ。」
そう言って、グランツェは俺の腕をしっかり掴んできた。
やばい。逃げられない。
その後、家に着いてから居間に不穏な空気がドバドバと流れながら、説教と事情聴取をされた。
もちろん俺は秘密裏にしていた訓練のことを言った。
だって、怖かったんだもん。仕方ないじゃん。
そして、とてつもなく長く感じられた事情聴取もようやく終わりを告げた。
そんなこんなで今日一日が終わった。
過去一で疲れた。死の恐怖すらあったよ?
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