第2話 俺誕生
送還された後、俺は真っ黒な空間にいた。周りは何も見えず、自分の体さえあるのかわからない感覚に陥っていた。だけど、とても遠くに白く小さな光が見えた。
(とりあえず、そこに向かってみるか)
ちゃんとそこに向かえているかはわからないけど、少しずつ光が大きくなっていくようにも見えた。そしてその光はとてつもない大きさになってとても眩しかった。そのため俺は目を閉じていた。
目を開けると知らない場所に知らない人に囲まれている小さな体があった。(俺だけど)
「あなた、私たちの子ですよ。」
「あぁ、俺たちの大切なローランだ。」
ローラン?俺の名前はローランらしい。
「ローラン。私の名前はミリル・グランツェよ」
、、ハハッ、、赤子相手にまでフルネームで自己紹介するなんて。なんて律儀な人だ。
「こっちは私の夫のミリル・アレクスよ」
「おい、グラン!なんで俺の名前まで言ってしまうんだ。俺だって自分で言いたかったぞ!」
「あら、ごめんなさい。じゃあ、もう一度言ってあげましょう。」
「そうだな。俺はアレクスだ。よく覚えておくんだぞ。ハッハッハ!」
父親はどうやら母親と違って豪快そうな人みたいだな
「まぁ、まずはローランの誕生を祝ってご飯にしようじゃないか。」
いきなりご飯ね、、
「それはあなたが食べたいだけでしょう。まぁ、いいわ。今日は特別な日になったのだから。ローランもいいわよねー。」
と、相槌を求めてきた。
「ん。」
それに俺は無意識に返事していた。
「あなた!今聞いた?この子私の言葉に返事したのよ」
「ああ!とてもすごい子になりそうだな!」
「この子の将来がとても気になるわ」
「絶対、優秀な子になるぞ!」
なんて、俺の相槌一つでどれだけ愉快な夫婦なんだよ。と思いながらもとてもアットホームな家庭でとても安心した。
その後、晩ご飯を食べて(もちろん俺はミルク)
とても楽しい時間を過ごした。アレクスに限っては、俺にいきなり肉を食べさせようとしてきた。それをグランツェが止めてちょっとばかり説教タイムが始まったりもしたが、本当に楽しかった。
そして、ひと段落ついたところでグランツェから言葉が発された。
「そういえば、まだこの子のステータスを見ていなかったわよね」
「見てなかったな。とても気になるよ」
「ステータスを見てみましょうか」
そう言ってグランツェはオレのステータスを見たときにとても驚いた表情を見せた。
「ちょっと、あなた!この子何者なの!」
「落ち着いてグラン。びっくりしすぎたよ。ってええぇぇぇ!!」
(アレクスの方がびっくりしすぎだ。)
そう思わずにはいられなかった。
ステータス lv.1 ローラン
体力 9+なし
持久力 10+E
敏捷 9+なし
耐久 8+なし
魔力 27+D
状態耐性 50+C
知能 100+C
スキル 「闘争S」「隠密A」「習得速度上昇E」「下級魔法」「亜空間魔法」
俺のステータスを見た後、二人はわちゃわちゃしていた。状態耐性と知能の高さと「闘争S」はどうやら父と母の遺伝によるものらしいが、知能を上げたため少しばかり高すぎたらしい。
いや、それでも「闘争S」を持っていたこの親も相当の実力者だな。なぜこのスキルを持っていたのかは後から聞いた話だが、どうやらアレクスは元王国騎士団長だったらしい。合点がいく。
話を戻すが、知能が高いだけでも驚きなのに、「亜空間魔法」まで持っていたことも驚かれる要因の一つだったらしい。魔法使いの中でもとても稀なスキルらしく、大体は「亜空間魔法」を持つ魔法使いが作ったアクセサリーで持ち物を収納するのが普通なのだが、このアクセサリーが破格なのだと。
そりゃ、こんなスキル持ってたら驚くわな。
「それにしても、この「隠密A」ってのが不思議だな」
「そうね。私たちの両方がこのスキルを持ってないのに発現しているからね。謎だわ。」
だろーな。それは俺が前世で培ったものだからな。言わないけど。
「そんなことは置いておいて、この子にいっぱい勉強を教えて差し上げましょう。絶対にすぐにいろんなことを飲み込んでくれるわ。」
「そうだな。ローランならやってくれる。」
ちょっと、そこの二人。俺は平凡に生きていきたいんだけど?
そんな俺の意思はほっておかれ、毎日字の練習や本の読み聞かせなどが始まった。まぁ、知識は一番の力だと思ってる俺は全く嫌ではなかったが。
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