第32話 ヒロインは英雄祭を企画する
英雄祭は毎年恒例の学園イベントだ。ただし、こういうのは前年踏襲なのに時間がかかって手間というのまでが恒例だ。
「うーん……コンテストのポイント割が難しいよ」
「昨年のは明らかに偏ってるからなぁ」
「聞き取り調査で改善して欲しいって言われたもんね」
「試合も、ただ普通にやるだけなら騎士団ので良いと言われちゃったらそれまでだよね」
フランシス様の前で、私たちはあーでもないこーでもないと言い合っているが、フランシス様の決定もなく、私たち的にもこれ!という案がでなくて行き詰まっていた。
「よし!一旦休憩にしよう!フランシス様、ラポールの入ったクッキーはいかがでしょう?カレンが考えた新商品で、まだ売り出してない貴重なものですよ」
「ありがとう。いただこうかな」
フランシス様はローワンからの提案に軽く頷いて、紅茶のカップを取りに行こうとして、気がついたようにローワンに話しかけた。
「私に毒味とかは気にしなくて構わないよ」
「毒味……」
「耐性あるから、むしろ私が毒味をした方が良いぐらい」
思わず復唱してしまった。
「私は生まれつき毒は効かないが、さすがに入っていればわかるから。私と一緒に活動することで、君らも危険に晒されるかもしれない。気をつけて欲しい」
この人はお菓子にまで含まれる悪意に晒されて、どれだけ摩耗してきたのだろう。
そんな人をこのまま、自分の価値を吊り上げて焦らすためだけに利用したら本当の悪女みたいじゃない。私はそんなみんなに顔向けできないような女にはなりたくない。
みんな、特にご令嬢たちはフランシス様のことを憧れて、とても素敵だと思っているのに、教会から睨まれたくないために遠巻きにしている。
どうにかして匿名で、あなたは素敵と表明する方法があれば……ってある!!
「思いつきました!!英雄祭に特別賞を設置しましょう!」
「お?なんか面白そうなことを言い出したね」
「試合にも、コンテストにも、投票制の特別賞を用意しましょう!それぞれが一番カッコイイ!とか、面白い!と思った人に投票して、みんなで英雄祭を作るんです!」
そうすれば、フランシス様に投票する人も出て、その票を集計するフランシス様も自分が認められていることを知れる。自分に自信を持ってくれるようになるはずだ!
「いいんじゃないか?それで、特別賞の商品はどうする?」
「お金は予算がつかないし……。そうだ!指名した学生誰とでも学内デートができるなんて、どう?学内なら殿下やエリオット様が指定されてもなんとかなるでしょう?」
「ローワン、お前、怖いもの知らずだな」
「禁忌を作ったら儲けが出るものもでなくなりますー」
やいやいいつものような流れになりかけて、フランシス様を見やる。
「良いと思うよ。ジョシュア様に上申してみよう」
フランシス様のその言葉を聞いて、ハイタッチで企画の決定を喜んだ。
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