第33話 ヒロインは定番に飽きる
英雄祭に向けてフランシス様と、いつものようにアニーとローワンとつるんでいたのだが、ご令嬢たちにはアニーとローワンは見えなかったらしい。
デジャブを感じながら、中庭でたべかけていたサンドイッチをダメにされないように一息で食べてしまう。
「フランシス様はお優しいから仰らないでしょうけど……」
「身分の低い平民が夢を見るには高過ぎるのではなくて?」
どうやら私がフランシス様から装飾品を受け取ったのが噂になっているらしい。
先日の女子会は学内のカフェ、といっても使ったのはロイヤルまたはノーブル仕様の個室だが、出入りは見られている。
そのお茶会以外では、ローワンから押し付けられた従業員リボンをつけている。このリボンさえあれば、ローワンが口出しできるからと聞いた。
王家とか、名家とかでなければ、なんとかなると笑ってくれた、が……、それはそれ、これはこれのようだ。
「ちょっとちゃんと聞いているの?!」
「どうしてこんなにマナーのなってない貧民が良いのかしら?」
そして、大体こういう系の子たちはさほど身分が高くない。
それに君らが教会とか色々を気にせずに、仲良くしよう!とフランシス様に寄っていったらあっという間にヒロインに成り代われただろうチョロさだったけど。行動しない君らが悪い。
「私に、何かわかるなんて烏滸がましいことは言わないけど……。
でも!あなたたちはずっとフランシス様に何もしなかったじゃない!フランシス様の存在を否定しながら、こうやって陰でコソコソしているんだもの、振り向いて貰えなくて当然だわ!」
「何を偉そうに!」
言われっぱなしは癪だ。何より余り長引くと、当人のフランシス様が来てしまう。
教会からの当たりを和らげるために、教会が信仰する精霊と話ができそうな私を取り込まないといけないほどに追い詰められているのだから。
フランシス様と結婚するのは良い、でも私は第二夫人以降が良いの!しっかりご令嬢なんだから頑張りなさいよ!
「好きなら好きってちゃんと伝えてよ!フランシス様は、どれだけ、どれだけ傷ついてきたことか!
教会の目を怖がらずに近づく人をこうやって蹴落としているあなたたちがいたから、フランシス様はずっと孤独だったのよ!
好きな人の本当の望みの成就を祈れないあなたたちなんかに私は負けない!」
フランシス様を傷つけているのはお前らだ!
それを突きつけると、以前と同じように激昂した令嬢たちの顔が一気に上気する。
「神よ!我の願いを聞き届け、力をわけ与えたまえ!望むは火の力、
前と違って、手ではなくて、魔法が飛んできた。
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