第21話 ヒロインは騎士と仲を深める

その後、色とりどりなキャンドルの光を褒めてくれたマリアローザ様のおかげで、私にとっては円満に終わった。


斜めになって、赤く染まる陽射しが夜の訪れを告げる。夜の学校って何だか妖しい雰囲気ね。フランシス様と手を繋いで、人気のない廊下を歩く。



「カレン嬢……!私のために申し訳なかった」

「余計なことをしてしまって、すみません。でも、フランシス様はこんなに綺麗な方なのに、失礼しちゃいますね!」

「カレン嬢は、私が気味悪くないのか?」

「なにを仰っているのかわかりません」



間近で目線を合わせると、フランシス様の美しいかんばせを余すことなく楽しめる。

窓からの光を反射して、瞳は魔力量を表すように深紅に輝いていて、肌には毛穴一つ見当たらないし、長いまつ毛が切れ長の目を縁どっている。


下手なご令嬢より麗しいのは間違いない。



「黒髪は邪神の使いの悪魔の色、赤い瞳は神の使いの天使を欺いた者の瞳。教会で、最も悪いとされている色だ」

「あの、私、教会行ったことないんです。村に教会がなかったから、学園に来てからは外出してないですし……。でも、私が保証します!フランシス様は悪魔の子なんかじゃありませんよ!」



私を見据えるフランシス様の瞳が揺らぐ。



「だって、自分の怪我を恐れずに私を助けてくれたフランシス様が悪かったら、この世界のほとんどの人が悪魔です!でも、そう思わないでしょう?それなら、フランシス様も悪魔の子なんかじゃありません!」



そう言い切ると、フランシス様に抱きしめられた。背中に回された筋肉のついた腕も、厚い胸板も頼もしい騎士なのに、どこか幼い子どもが縋るような危うさがある。


ちゃんとお友だちで、留まれるだろうか。貴族の、それもワケあり貴族の正妻は人生ハードモードだ。大出世でも、それは御遠慮申し上げたい。


肩口が濡れるのに気が付かないふりをして、そっとフランシス様の背中に手を回した。

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