第20話 ヒロインは天然と相場は決まっている
マリアローザ様が
でも、どうしてシャーロット様はこちらに憎悪を向けてきているのだろう。警戒なんて生易しいものじゃない、完全に呪ってやろうレベルの禍々しさを感じる。
「どうして悪魔の子がいるのかしら。キャンドルの魔法が解けてしまうわ」
お茶会開始早々に、シャーロット様がほおっとため息をつく。その様子はいたいけなご令嬢だが、言ってることは辛辣だ。悪魔の子とは言ってくれる。
「まあ、魔法の相性が悪かったのね。相性が良い子を呼び戻してみせます!」
売られた喧嘩は買う。でも、傍から見て喧嘩を買っていたら心情が良くない。とても残念そうにしているご令嬢のために頑張る庶民の姿を見せつけてあげよう。
今日の私のペアであるフランシス様は火の魔力が強いから、小さな火の精霊は気圧されたり、吸収されないように距離を取ってしまう。
だから私とフランシス様の近くに置かれたキャンドルの火が逃げてしまったのだけど、キャンドルなら光ってれば良いよね。
はじめからキャンドルに光の精霊を呼べば良いのに、気が利かないのはあなたたちよ!というのを親切を装って教えてあげよう。
「キャンドルの光になってくれないかしら?私たちがここにいる間だけで良いのよ。そうね、私のクッキーをあげるわ」
「まあ、悪魔の子が連れているのも、神の理を知らぬものなのね」
「カレン嬢、私は慣れているから」
シャーロット様の追撃を無視して……というよりも、悪魔の子は私じゃなくてフランシス様に向けて言っていたのね。一応誰の魔力が強いのかは理解できていたんだと感心する。
それすらわかってないのかと思ってた。そもそも、自分の婚約者の同僚を悪魔の子と呼ぶ神経が理解ができない。
その辺をふわふわ飛んでいた光の精霊のうちの1匹が嬉しそうに私のお皿からクッキーを持って行って、火の精霊が逃げ出していたキャンドルに収まった。
クッキーが欲しかった精霊はそれだけじゃなかったらしく、あちこちで火の精霊と光の精霊が交代していく。
淡い赤の光から、黄色や青、色とりどりの光がキャンドルに灯されていく。
「まあ、シャーロット様がご用意して下さったお菓子が精霊たちにとっても人気だったみたいで、みんな競ってキャンドルの光になってくれました!シャーロット様のセンスはステキですね」
そう言ってシャーロット様に笑いかけるが、もちろんシャーロット様は笑ってない。
でも、ヒロインは無知で天然と相場は決まっている。私の膝の上の手を握るフランシス様の震えた手に気がついて、何も知らない無垢な少女をイメージして、フランシス様にも笑いかけた。
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